日本最大級LGBT特化地区「新宿二丁目」の評価報告書

都雄介

日本最大級LGBT特化地区「新宿二丁目」の評価報告書

私は卒業研究にあたり評価報告書として今までの授業の集大成的なものとして時折取り上げて来た「新宿二丁目」を対象とすることとした。
その理由は世界でも珍しい規模が大きいLGBT特化地区として「新宿二丁目」が評判であるためだ。LGBTとは、女性として女性が好きであるレズビアン(Lesbian)、男性として男性が好きなゲイ(Gay)、どちらの性も好きになれるバイセクシュアル(Bisexual)、そして性転換者・異性装同性愛者などのトランスジェンダー(Transgender)の人々を意味する頭字語である。
また、同性婚が認められている国々のLGBT当事者の知り合いの多くは日本に興味がなくとも「新宿二丁目」の存在を知っている人が多い。

彼らにとって日本に来た観光に来た際には立ち寄りたい箇所の上位に位置づけられ案内を頼まれる事もある。そんな「新宿二丁目」を課題条件とし、4つの点と今後の展望を含めてまとめていくことにする。

1: 基本データ(所在地、構造、規模など)

所在地は東京都新宿区新宿二丁目。
新宿二丁目の構造は多くのスナックが入居する商業ビル街。いわば歓楽街である。
規模は新宿通りから靖国通りに抜け、およそ240m弱の「仲通り(なかどおり)」という通りを中心にゲイバーなどのビルが立ち並ぶ。その数は450店ほどと言われ、その中には、LGBT当事者が経営するカフェや、同性同士で利用可能なホテルなども存在する。

2: 事例の何について積極的に評価しようとしているのか。

・「新宿二丁目」が60年という歴史で世界で他に見ることができないLGBT特化地区として成り立って来た点。
・「新宿二丁目」というLGBT特化地区を築き上げていく中で当時から東京都新宿区新宿二丁目に住んでいた住民とうまく共存しLGBT達が受け入れられた背景。
・「新宿二丁目」が時代と共に変化を遂げる姿。
・「新宿二丁目」の灯火を絶やさぬように「新宿二丁目」の存在をより多くの人々に伝え多くの人々を呼びこもうとする「新宿二丁目」で働くLGBTの人々の活動。

この4点を評価の対象とした。

3: 歴史的背景は何か(いつどのように成立したのか)

(「消える新宿二丁目-異端文化の花園の命脈を断つのは誰だ?/彩流社」)によると
「新宿二丁目」の前身は、江戸の昔からつづく遊郭(色街=性フーゾク街)であった。誕生は元禄11年(1698)。江戸時代は「内藤新宿」と呼ばれるエリアであった。(新宿1,2,4,5内藤町全域、新宿三丁目、四谷四丁目の一部。および西新宿一丁目と歌舞伎町1丁目のごく一部)その後、1921年(大正12年)に移設で「新宿二丁目遊郭」ができた。そして、新宿二丁目は1958年(昭和33年)4月の売春防止法施行によって「遊郭の街」としての長い歴史をおろした。長い歴史の後、1960年代〜1970年代あたりからゲイの店が増えてきたとされている。上記文献ではゲイの店とあるが、ゲイの店より数は少ないがレズビアンのお店やトランスジェンダーのお店も存在する。

4: 国内外の他の同様の事例に比べて何が特筆(特にとりたてて書くこと。)されるのか。

新宿二丁目」の規模ほど、LGBTのお店が多く混在している地域は世界中探しても唯一の存在であると言えるだろう。WEB上での記事ではあるが、1986年にロンドンで誕生したメディア「TimeOut」の企画でジェイムズ・ハッドフィールド 氏が『東京が世界一だと述べる50reason』という記事の中で以下のように記している。

「いまや『nichome』という言葉が世界語になるほど、国内外で認知されるようになった世界屈指のゲイタウン、新宿2丁目。東西南北数ブロックのエリアに、数百のゲイバーやレズバーがひしめく不夜城である。閉店(開店ではなくて)が昼過ぎ、なんて店がざらにある、歌舞伎町と並んで日本でいちばん『眠らない街』でもある。そしてまた新宿2丁目は、ニューヨークのクリストファー・ストリート、サンフランシスコのカストロ・ストリートなど、世界に数あるゲイタウンのなかでも、きわだって安全に(健全に、ではない)遊べる街でもある。(TIME OUT「#17 | 50 REASONS TOKYO IS THE GREATEST CITY IN THE WORLD」より引用)」

このように「新宿二丁目」は世界屈指の場所として認識されており、他の数あるLGBT地区の中でも安全に遊べる場所なのである。私はその1つサンフランシスコのカストロ・ストリートに行ったのだが、「新宿二丁目」とは違いカストロ・ストリートと呼ばれる地区でもガラの悪い人が集まっているのが目に入り身を守りながら遊んだ記憶がある。

世界で初めて一般に同性婚と呼ばれる異性同士の結婚とまったく同じ婚姻制度を採用し、海外養子も可能であるオランダの首都、アムステルダムに足を運んだ事があるのだが「新宿二丁目」のように特定の地域に行けばLGBTのお店が数多く集まっている場所というのがなく、小規模なLGBTのお店が集まる地域が点在しており、宝探しのようにレインボー・フラッグ(LGBTの社会運動を象徴する旗)を掲げている店を探すという事になった。

そんな同性婚が世界で初めて認められた国の首都でもLGBT特化地区についてはこのような状況なのである。

5: 今後の展望について

私は現代の日本において多くの日本人に世界規模で有名なLGBT特化地区「新宿二丁目」を知ってもらい同性愛文化についてもLGBT当事者ではない日本人の人々に理解してもらうことが今後の最も重要な展望として考えている。理解を得られた上で国が一体となって世界に唯一とされる「新宿二丁目」を盛り上げて行くことを所望する。宗教的問題など様々な弊害はあるとは思うが実際に権利などが認められている世界の国々があるので日本でもそれに続く事を願うばかりである。
そのため、理解を得るためには「新宿二丁目」に足を運んでもらうことが重要である。しかしながらLGBT当事者ではない人は気軽に足を運びにくいという声もある。それは歴史的背景から踏み入れることができない空間としてとられがちな「新宿二丁目」の雰囲気があるからだ。その雰囲気を変えていく活動が活発になるべきであると考える。例として同じアジアである台湾の台北市の「西門紅樓」では紅樓というシンボルの裏側の地域で多くのレインボーフラッグが堂々と飾ってあるオープンカフェが広がり、そこを様々な人が行き交っている。そこはレインボーフラッグがなかったら普通なオシャレなオープンカフェスポットと思う人も多いだろう。このような空間を「新宿二丁目」も作り上げ誰でも気軽に足を踏み入れることができるようにするのだ。
しかし、足を気軽に運べることになるとLGBTではない人々によるLGBTの人たちへのマナー違反やトラブルを生み出すきっかけも増えるだろう。「新宿二丁目」が人知れずLGBTということを公にできない人々が安心して集える場所というメリットも減ってしまう。そこで、白川郷のような世界遺産をいつまでも美しく後世に伝えるためのルールのような「新宿二丁目」でLGBT当事者と共に楽しく過ごせるためのルールを提示する事もセットで提案する。
最後に、そんな「新宿二丁目」の素晴らしさをルールを含めて伝えるための手段として雑誌を発行することを提案する。すでに様々な雑誌がある。その中の1冊に「飲み街MAP 新宿二丁目」という本が1冊すべて「新宿二丁目」の特集であった。しかし、タイトルの時点でお酒を飲む場所を印象づけてしまい気軽に足を運びにくくなるではと感じた。私としてはここの授業でも課題の参考雑誌の1つとして取り上げられた『Pen』に「特集1 世界誇れる場所。新宿二丁目」「特集2 知らないとトラブルの元!? 新宿二丁目で遊ぶときのルール」と言った内容で「新宿二丁目」が紹介される号を発行し『Pen』も目玉特集にもなり、「新宿二丁目」への再評価につながるのではないか。

  • <webには掲出せず>
    【pen仮想号表紙】レポート内新宿二丁目紹介雑誌として提案資料作成
  • 987383_147393e2f12d4658a22ce80e15f5f369 【pen仮想号特集1】レポート内新宿二丁目紹介雑誌として提案資料作成
  • 987383_9e72dbec078247e6907b5722fe679646 【pen仮想号特集2】レポート内新宿二丁目紹介雑誌として提案資料作成

参考文献

・竜超著『消える「新宿二丁目」―異端文化の花園の命脈を断つのは誰だ?』彩流社
・TIME OUT『#17 | 50 REASONS TOKYO IS THE GREATEST CITY IN THE WORLD』 http://www.timeout.jp/mag/50reasons/ja/readmore/column17.html