卒業研究レポートの公開にあたって

京都芸術大学通信教育課程 芸術教養学科は2013年4月から開学した新しい学科です。インターネットでの学びを中心としたカリキュラムを構築し、3,400人を越す学生(2022年4月時点)が在学しています。
毎年、4月と10月に入学生を迎え、3月と9月に卒業生を送り出しています。
この芸術教養学科では、学生ひとりひとりが日本をはじめ世界の様々な芸術史、東アジアを源流とする日本の伝統的な文化、そして今日のデザインの考え方を学び、日々の生活をより豊かにするべく思索しています。
芸術教養をFineArtではなく、LiberalArtsとして捉え、実践的に考える行為、それが卒業に際して課している卒業研究「文化資産評価報告書」の作成です。
文化資産評価報告書とは、それぞれが本学科に在籍し学ぶ中で培った興味関心に基づき、地域の芸術的な遺産や萌芽的な芸術活動、またデザインの事例を取り上げ考察したものです。
文化とは社会生活の結晶であり、地域や風土、そしてそこに生きる人々によって培われ形成されるものです。報告書では自身が接したまたは見いだした文化資産について、デザインとしてどのように優れているか真摯に考察されています。
2015年は3月に76名の卒業生を送り出し、うち文化資産評価報告書の公表同意のあった24件について公開し、同年9月には8名の卒業生を送り出し、うち1件の文化資産評価報告書の公表同意を得て、加えて公開してきました。
2016年3月は67名の卒業生がおり、公表同意のあった文化資産評価報告書27件を新たに加えて公開し、同年9月には21名の卒業生を送り出し、うち2件の文化資産評価報告書の公表同意を得て、公開致しました。
2017年3月は96名の卒業生がおり、公表同意のあった文化資産評価報告書36件を新たに加えて公開し、同年9月には21名の卒業生を送り出し、うち9件の文化資産評価報告書の公表同意を得て、公開致しました。
2018年3月は103名の卒業生がおり、公表同意のあった文化資産評価報告書44件を新たに加えて公開し、同年9月には36名の卒業生を送り出し、うち19件の文化資産評価報告書の公表同意を得て、公開致しました。
2019年3月は129名の卒業生がおり、公表同意のあった文化資産評価報告書47件を新たに加えて公開し、同年9月には29名の卒業生を送り出し、うち10件の文化資産評価報告書の公表同意を得て、公開致しました。
2020年3月は133名の卒業生がおり、公表同意のあった文化資産評価報告書49件を新たに加えて公開し、同年9月には43名の卒業生を送り出し、うち11件の文化資産評価報告書の公表同意を得て、公開致しました。
2021年3月は174名の卒業生がおり、公表同意のあった文化資産評価報告書57件を新たに加えて公開し、同年9月には55名の卒業生を送り出し、うち19件の文化資産評価報告書の公表同意を得て、公開致しました。
2022年3月は190名の卒業生がおり、公表同意のあった文化資産評価報告書71件を新たに加えて公開し、同年9月には83名の卒業生を送り出し、うち37件の文化資産評価報告書の公表同意を得て、公開致しました。
2023年3月は252名の卒業生がおり、公表同意のあった文化資産評価報告書103件を新たに加えて公開致しました。
この文化資産評価報告書は、レポートとして考察されたものですが、同時にアートリソースのガイドブックにもなっています。全国各地の文化遺産がどれほど多種多様で豊かなものなのかを知る機会にもなります。ぜひご覧下さい。
2023年3月3日
野村朋弘(芸術教養学科主任:准教授)
科目の概要
地域の特色ある文化資産をプレゼンテーションするレポートを作成、発表します。
皆さんのこれまでの学習の集積の上で、それぞれの関心や生活環境に応じて芸術的な遺産や萌芽的な芸術活動、あるいは重要と思われるデザイン事例を【文化資産評価報告書】(同時にアートリソースのガイドブックともなるもの)としてまとめ、レポートとします。
研究に取り組む皆さんが各自で作成したレポートは、教員の指導講評を受けるとともに、必要に応じて教員の指示する関連事例や芸術資産レポートの参考作例との比較対照を行い、自分の調査結果の特質を確認します。
授業目標
本科目では、さまざまな場で実践されているデザイン・芸術活動に関して情報収集を行い分析・考察して報告書を作成します。作成を通じて、その活動の長短を歴史的かつ批判的に評価する能力を身につけます。また可能な場合には自らの携わる制作活動や教育普及活動なども客観的な評価対象として取り上げることが可能です。
評価基準
・文章の表記の正確さと構成の明瞭性
・授業の趣旨および課題内容の理解
・受講生自身の見解の明示
・着眼点の独自性 以上の評価観点を総合的に満たしていることを合格の基準とします。
課題の概要
課題内容
【文化資産評価報告書の作成】
自身の問題関心に沿ったデザイン・芸術活動の評価報告書を作成します。
評価対象は地域の文化遺産に関わるもの、今日的な制作、上演活動のいずれを選んでも良いです。
ジャンルも造形物、食文化、出版文化、景観、インターネットを活かしたソーシャル・デザインの取り組みなど、制作的な契機があれば何でも結構です(棚田や並木も自然の風景というだけではなく、人工的な制作物でもあります)。自分自身の関わる芸術的な活動をとりあげることもできます。特に評価対象に関して、どのような点がデザインとして優れているかも考察して下さい。
「芸術教養演習1・2」で取り上げた事例でも結構です。
報告に際しては必ず次の5点を明記してください。
1: 基本データと歴史的背景
2: 事例のどんな点について積極的に評価しているのか
3: 国内外の他の同様の事例と比較して何が特筆されるのか
4: 今後の展望について
5: まとめ
以上の5点の順序は問いません。
課題の取り組み方
1)受講の順序
本科目は、122単位(1年次入学生の場合)あるいは60単位(3年次入学生の場合)相当の科目に合格済みであれば履修できます。ただし、なるべく「芸術教養研究1~4」「芸術教養演習1~2」の履修を経たのちに受講することを勧めます。
いわゆる卒業論文ほどのボリュームのある文章を作成することはありませんが、さまざまな芸術活動について、自分の考えを根拠に基づいて表明するためには、特に「芸術教養演習1~2」での発表とディスカッションが有効です。
2)調査対象
芸術、デザインに関する活動であれば、絵画や彫刻のような美術、商業デザインにかぎらず、地域の景観、食文化、行事、コレクション、芸能、地場産業など、制作的な契機が含まれていれば何でも結構です。
取り上げる対象は漠然としたジャンルではなく、できるだけ限定された範囲での具体的な活動を取り上げてください。たとえば「イタリア美術」とか「沖縄の芸能」というよりも、「ホイアンの街並み」「大宜味村の芭蕉布」「出町座におけるクラウドファンディングの活用」などのほうがより精確な議論ができます。
3)書式
報告書には取り上げた事例が明示されたタイトルをつけてください。
また画像とそのキャプションも添えてください。なるべくなら自分で撮影した写真、自分で作成した図表が望ましいですが、書籍等から転載する場合は(文章の場合と同じく)、出典を明記してください。
3200字の本文の章立ては、シラバス「課題の内容」に記してある項目をそのまま用いても結構ですし、より適切な章立てが考えられる場合には、必ずしもその通りにしなくても結構です。