卒業研究レポートの公開にあたって

 京都造形芸術大学 通信教育部 芸術教養学科は2013年4月から開学した新しい学科です。インターネットでの学びを中心としたカリキュラムを構築し、1700人を越す学生(2017年3月時点)が在学しています。
 毎年、4月と10月に入学生を迎え、3月と9月に卒業生を送り出しています。

 この芸術教養学科では、学生ひとりひとりが日本をはじめ世界の様々な芸術史、東アジアを源流とする日本の伝統的な文化、そして今日のデザインの考え方を学び、日々の生活をより豊かにするべく思索しています。
 芸術教養をFineArtではなく、LiberalArtsとして捉え、実践的に考える行為、それが卒業に際して課している卒業研究「文化資産評価報告書」の作成です。

 文化資産評価報告書とは、それぞれが本学科に在籍し学ぶ中で培った興味関心に基づき、地域の芸術的な遺産や萌芽的な芸術活動、またデザインの事例を取り上げ考察したものです。
 文化とは社会生活の結晶であり、地域や風土、そしてそこに生きる人々によって培われ形成されるものです。報告書では自身が接したまたは見いだした文化資産について、デザインとしてどのように優れているか真摯に考察されています。

 2015年は3月に76名の卒業生を送り出し、うち文化資産評価報告書の公表同意のあった24件について公開し、同年9月には8名の卒業生を送り出し、うち1件の文化資産評価報告書の公表同意を得て、加えて公開してきました。
 2016年3月は67名の卒業生がおり、公表同意のあった文化資産評価報告書27件を新たに加えて公開し、同年9月には21名の卒業生を送り出し、うち2件の文化資産評価報告書の公表同意を得て、公開致しました。
 2017年3月は96名の卒業生がおり、公表同意のあった文化資産評価報告書36件を新たに加えて公開しました。

 この文化資産評価報告書は、レポートとして考察されたものですが、同時にアートリソースのガイドブックにもなっています。全国各地の文化遺産がどれほど多種多様で豊かなものなのかを知る機会にもなります。ぜひご覧下さい。

2017年3月10日
野村朋弘(芸術教養学科主任:准教授)

科目の概要

地域の特色ある文化資産をプレゼンテーションするレポートを作成、発表します。

皆さんのこれまでの学習の集積の上で、それぞれの関心や生活環境に応じて芸術的な遺産や萌芽的な芸術活動、あるいは重要と思われるデザイン事例を【文化資産評価報告書】(同時にアートリソースのガイドブックともなるもの)としてまとめ、レポートとします。
研究に取り組む皆さんが各自で作成したレポートは、教員の指導講評を受けるとともに、必要に応じて教員の指示する関連事例や芸術資産レポートの参考作例との比較対照を行い、自分の調査結果の特質を確認します。

授業目標

本科目では各地で実践されている芸術・デザイン活動に関する研究報告書の作成を通じて、その活動の長短を歴史的かつ批判的に評価する能力を身につけます。また可能な場合には自らの携わる制作活動や教育普及活動なども客観的な評価対象として取り上げることが可能です。

評価基準

・文章の表記の正確さと構成の明瞭性
・授業の趣旨および課題内容の理解
・受講生自身の見解の明示
・着眼点の独自性 以上の評価観点を総合的に満たしていることを合格の基準とします。

課題の概要

課題内容

【文化資産評価報告書の作成】
特定地域での芸術・デザイン活動の評価報告書を作ります。
評価対象は地域の文化遺産に関わるもの、今日的な制作、上演活動のいずれを選んでも良いです。
ジャンルも造形物、食文化、出版文化、景観、イベントなど、制作的な契機があれば何でも結構です(棚田や並木も自然の風景というだけではなく、人工的な制作物でもあります)。自分自身の関わる芸術的な活動をとりあげることもできます。
「芸術教養研究1~4」や「芸術教養演習1~2」で取り上げた事例でも構いません。

報告に際しては必ず次の4点を明記してください。
1: 基本データ(所在地、構造、規模など)
2: 事例の何について積極的に評価しようとしているのか。
3: 歴史的背景は何か(いつどのように成立したのか)。
4: 国内外の他の同様の事例に比べて何が特筆されるのか。

以上の4点の順序は問いません。可能であればさらに今後の展望を付記してください。

課題の取り組み方

1)受講の順序
本科目は、122単位(1年次入学生の場合)あるいは60単位(3年次入学生の場合)相当の科目に合格済みであれば履修できます。ただし、なるべく「芸術教養研究1~4」「芸術教養演習1~2」の履修を経たのちに受講することを勧めます。
いわゆる卒業論文ほどのボリュームのある文章を作成することはありませんが、さまざまな芸術活動について、自分の考えを根拠に基づいて表明するためには、特に「芸術教養演習1~2」での発表とディスカッションが有効です。

2)調査対象
特定の地域での芸術、デザインに関する活動であれば、絵画や彫刻のような美術、商業デザインにかぎらず、地域の景観、食文化、行事、コレクション、芸能、地場産業など、制作的な契機が含まれていれば何でも結構です。
ただし「特定の地域」とありますように、取り上げる対象は漠然としたジャンルではなく、できるだけ限定された範囲での具体的な活動を取り上げてください。たとえば「イタリア美術」とか「沖縄の芸能」というよりも、「ホイアンの街並み」「大宜味村の芭蕉布」などのほうがより精確な議論ができます。

3)書式
報告書には取り上げた事例が明示されたタイトルをつけてください。
また画像とそのキャプションも添えてください。なるべくなら自分で撮影した写真、自分で作成した図表が望ましいですが、書籍等から転載する場合は(文章の場合と同じく)、出典を明記してください。
3200字の本文の章立ては、シラバス「課題」に記してある項目をそのまま用いても結構ですし、より適切な章立てが考えられる場合には、必ずしもその通りにしなくても結構です。

4)airUコミュニティ
「芸術教養演習1~2」と異なり、「卒業研究」では科目のコミュニティサイトでのディスカッションは必須ではありませんが、ぜひ各自の研究報告について互いに紹介しあい、考察を深める機会とすることをお勧めします。