映画音楽の巨匠「佐藤勝」が愛した国産ピアノ「Castle」の可能性 -再び響く希望の音色のために-

橋場 麻智子

はじめに
留萌市「海のふるさと館」には、黒澤明監督の作品、「鞍馬天狗」「ゴジラの逆襲」などの映画音楽、「若者たち」の作曲で知られる同市出身の佐藤勝(1928-1999)の資料があり、愛用したグランドピアノが展示されている。しかしこのピアノは現在、その音色を響かせることなく佇んでいる。手入れ次第では生き返る楽器であり、このピアノを活かし、地域を活性化することができるか、その価値を探るとともに今後の可能性を考察し、報告する。

1 基本情報と背景
留萌市は北海道北西部に位置し(資1)、かつては炭鉱や鰊の群来で栄えた地である。「海のふるさと館」(資2)は留萌市が1989年に開館した博物館で*1、常設展示室には留萌の歴史、特別展示室では佐藤勝の資料とともに六郷ピアノ製作所のグランドピアノ「Castle」が展示されている。
佐藤は308本もの映画音楽を担当した地域が誇る作曲家である。またこのピアノは現在存在しない「六郷ピアノ製作所」のもので、国産ピアノの歴史を体現する貴重な資料であるとも考えられる。

2 現時点での評価
このピアノの状態、特徴や詳細、価値を知るために実地調査、情報収集*2、インタビューを行った。いくつかの観点から考察、評価する。

2-1「佐藤勝」が愛用していたという価値
大判の譜面台は、佐藤がオーケストラのスコア譜を書くために特注したもので、このピアノから数々の作品(資3)が生まれたと考えるに、映画音楽の巨匠の発想の源として貴重な資料であるといえる。

2-2国産ピアノとしての価値
このピアノには製造番号がなく、六郷ピアノ製作所「Castle」(以下Castleピアノと略す)についても詳細は不明で*3、いくつかの博物館や音楽大学に問い合わせたが、文献*4から僅かな情報が得られるのみであった(資4)。しかし情報収集の中で*5、ピアニスト・ピアノ研究家の松原聡氏が、30年ほど前にCastleピアノの創業者のご子息である星野氏から伝え聞いたお話を伺うことができ*6、貴重な資料もご提供いただいた(資4)。インタビューから、六郷ピアノ製作所の系譜がわかり、星野氏がその製作への情熱と姿勢、特徴を語られていたことも、国産ピアノの歴史の記録として有意義なものであったと考える。
(1)実際のピアノの調査
現在稀に残っているCastleピアノは、今は存在しないメーカーであるが故に忘れられ、その価値を精査されずに廃棄されているものもある。しかしピアノそのものの価値を探るため、水野調律師*7に同行いただき、調査をおこなった*8。
それにより、不具合はあるが*9響きが良く、手入れ次第で今後充分活用できることがわかった。
外観の特徴として、当時海外のピアノにみられた角張ったフレームと特注譜面台、象牙鍵盤は割れもなく良好であり、弦は現代には見られない巻があった(資5)。
(2)Castleピアノをコンサートで演奏したピアニストの感想
このピアノを演奏されたことのある(資4)真保響氏は、「現代ピアノにはない音の広がり、奥深い魅力ある音色をもったピアノだと記憶にあります」と話されていた*10。
(3)楽器修復の技術者の立場から
過去にCastleグランドピアノを修復した経験のある渡辺順一氏*11は、「修復したCastleグランドピアノは音が抜群に良く、なんとしても直したいと思うほどだった。おそらくは受注生産であり、国内の量産されたピアノとは一線を画す特別なピアノだったと思う。佐藤勝さんほどの音楽家が、説得されて購入するとは思えない。実際にサンプルを試弾して、その音に納得したからこそ六郷ピアノを選んだはずで、相当の拘りを持って発注したのではないか」と話されていた*12。

2-3古いピアノの復活活動をするジャズピアニスト「河野康弘」さんの見解
「被爆ピアノ」「冬眠ピアノ」の活動で知られる河野康弘さん*13にSNSを通じてピアノを見ていただいたところ、まだまだ響かせる価値があり、古いピアノを粗末にせず使うことは、森林や地球環境を守り、平和な未来を子ども達に残すことにも繋がると語られていた。

2-4 100年を繋ぐ夢として-「オホーツクおとの森」の設置に関する協定から-
北海道ではグランドピアノの響板が作られている。作る原木はオホーツク産アカエゾマツが良く、過去には天然林材から作られたが、現在は輸入材に頼っている。
再び地元の木で作ろうと*14、遠軽町、北海道、北見木材株式会社は、2016年「ピアノの森」(現在「オホーツクおとの森」*15を設置、協定を締結して木育活動*16、植樹会などを行なっている(資6)*17。
植樹した木がピアノにできるまで約80-100年。100年先を見据えたこの協定は、世代を越えて夢を繋ぐものであり、この佐藤勝のピアノが、その活躍された時期を鑑みるに100年が近くあるとするならば、このピアノは、その100年を待つ間の、楽器の「いきた証」になると考える。楽器の100年は手が入っていれば単に「古い」と認識されず*18、歴史や思いを刻みつつ当時の音楽を再現することも、現代を表現することもできるメディアとも言える。日本の技術者が残した遺産が、風土にマッチした良い音を奏で続け、100年という時間軸に、かわらない存在感と価値を刻み、貴重な技術を継承しながら、その先の希望へと繋ぐ架け橋となることができると考える。

2-5「地域の連帯と誇り」としての価値
地域の人々が、ふるさとを愛し、佐藤勝の感性を育てた留萌の魅力を再発見し、このピアノを大切に利用することで「地域の連帯と誇り」として成り立つものと考える。

3 同様の事例との比較と特筆される点
東京都新宿区にある『四谷ひろば』は、「区立四谷第四小学校跡地を利用した地域で自主運営を行うひろば事業」を実現したものであり、2008年より運営が開始されている*19。
「メモリアルホール」には1935年製のドイツの「ブリュトナー」*20があり、あと十数年で100年に届くこのピアノは、現在もコンサートで使用され*21、貴重な楽器であることからピアノ愛好者からの支持も厚い。
インタビューに答えて下さった田谷氏*22は、「自分の子供も含め、自由に触っていた」と語られ、前校長が残そうと判断し、実現したことからも、地域の人々に大切にされていることが伺われる。
一方で佐藤勝のピアノは、日本の楽器メーカーが製作し、前項で述べた音へのこだわり、国産の日本の技術者が残した遺産としての価値は特筆するものであると考える(資7)。

4 今後の展望・可能性
映画作品に資することを第一としながら「俺は劇の伴奏なんか一度たりとも作曲したことはない」と自らの音楽に誇りを持ち、「映画音楽で大切なのは音色である」*23と音に拘り、アメリカのアカデミー音楽賞に日本人作曲家として初めてノミネートされた*24佐藤が、当時海外のピアノが優勢であった時代に*25「六郷ピアノ製作所」に発注したのは、日本の技術者の腕と心意気をかったものに違いない*26。そして、そのこだわりに応えたこのピアノの音色からインスピレーションを得たとすると、「音」としても佐藤の感性のありかを再現し、作曲活動の一端をうかがえる貴重な資料であり、また、国産ピアノの記録としても、修復される価値が充分にあると考えられる。
紫牟田伸子がその著書「編集学」*27中で編集のポイントとして「切り口・構造・語り口」をあげているが、前項にあげた5つの価値を再認識して切り口とし、構造化してイベントの企画、コミュニティのデザイン、文化観光*28など地域独自な語り口をもって地域活性化を図っていくことが可能であると考える。それにあわせて修理・修復のための費用をクラウドファンディングなどで募ることも一考に値する(資8)。

5 まとめ
ピアノは奏でられてこそ価値がある。佐藤勝が愛したピアノが、このまま朽ち果てるのはしのびない。音楽は第二義的なものとされることもあるが、多様な社会において、感性を共通項に人々と豊かな時間を共有できるものである。人々とピアノのストーリーを引き受けてなお、そこに一つとして存在するこのピアノは、地域の資産として据えるにたるものである。
留萌の黄金岬には、「若者たち」の歌碑がある。
その歌詞に「君の行く道は希望へと続く 空にまた 陽がのぼるとき 若者はまた歩きはじめる」*29とある。このピアノが復活し、人々の希望を育み、留萌の海からみえる輝く陽のように未来を照らす存在となることを切に願う。

  • %e8%b3%87%e6%96%991_page-0001 ①国土地理院の地図に著者が留萌市の場所を丸囲みしたもの
    ②⑩国土地理院の地図より
    ⑦歌碑の「除幕式」写真は、留萌百年物語「佐藤勝物語」福士廣志著(平成31年 留萌市教育委員会発行より
    ⑧「私の旅日記~お気に入り写真館」高野様より許可を受け引用掲載
    ③④⑤⑥⑨は、著者撮影
  • 2_page-0001 「海のふるさと館」の館内図はパンフレットを参考に著者が作図。写真はすべて著者撮影
  • %e8%b3%87%e6%96%993_page-0001 ・年表は、『留萌百年物語「佐藤勝物語」』福士廣志著(平成31年 留萌市教育委員会発行)・『日本映画音楽の巨星たち 小林 淳 (著)〈1〉早坂文雄・佐藤勝・武満徹・古関裕而 』ワイズ出版( 2001/6/1)を参考に筆者作成。
    ・資料・ポスターは『留萌百年物語「佐藤勝物語」』福士廣志著(平成31年 留萌市教育委員会発行)より引用。
  • %e8%b3%87%e6%96%9944_page-0001 『日本のピアノメーカーとブランド』著者:三浦啓市発行:株式会社 按可社 該当ページ:p.100,113,
    ・松原氏よりCastleピアノの創業者のご子息 星野氏が、顧客向けに書いていた手書きの新聞を資料として提供していただいた。
    ・日刊留萌2011/11/3掲載記事、留萌新聞社
  • 5 留萌市「海のふるさと館」にて、許可をいただきピアノの調査をした際の画像。
    (すべて著者撮影2022.11.14)
  • %e8%b3%87%e6%96%996_page-0001 ①から④
    「オホーツクおとの森」設置に関する協定- オホーツク総合振興局森林室東部森林室 (hokkaido.lg.jp)
    ⑤「オホーツクおとの森」設置に関する協定の取り組みを紹介するフライヤー
    ⑥2023/1/21-22 札幌駅前通地下歩行空間で行われたイベント(筆者撮影)
  • %e8%b3%87%e6%96%997_page-0001 新宿区立四谷第四小学校跡地 四谷ひろば「ブリュトナー」の写真は、
    四谷ひろばホームページより引用(yotsuya-hiroba.jp)
  • %e8%b3%87%e6%96%998_page-0001 筆者作図。
    画像は ・河野康弘ホームページへようこそ! - yasuhiro-kono ページ! https://yasuhiro-kono.jimdofree.com/ 2023.1.14閲覧
    ・音楽合宿誘致事業|一般社団法人留萌青年会議所|JC|日本北海道留萌市|Rumoijc https://rumoijc.wixsite.com/2020/blank-4 2023.1.14閲覧
    ・「ピアピット」HPより「Castleの修復作業  
    http://www.piapit.com/kurin9/caslegpoka/newpage1.html 2023.1.12閲覧
    ・私の旅日記~お気に入り写真館~
    http://urawa0328.babymilk.jp/index.html 2023.1.11閲覧
    ・日刊留萌2011/11/3掲載記事、留萌新聞社
    より引用。写真掲載について、関係者に許可を頂いている。

参考文献

【註・引用出典】
*1. 「海のふるさと館」は、現在は、指定管理者制度の導入により特定非営利活動法人の留萌観光協会が一部運営している。

*2.2022/11/14の実際の調査時のピアノをSNSでも発信し、情報収集を行った。
https://www.youtube.com/shorts/YxGfKIwZBrs
2023/1/20最終閲覧
情報収集については関係者の方より許可を得ている。

*3. 前間孝則著,岩野裕一著『日本のピアノ100年:ピアノづくりに賭けた人々 』草思社文庫2019年 該当ページp.391
「小メーカーの活動については、ほとんどまとまった形での資料がない」とあるが、情報収集中いくつかの情報が寄せられ、現在精査中である。

*4.『日本のピアノメーカーとブランド』 著者:三浦啓市 発行:株式会社 按可社 2018年該当ページ:p.100,113,日本のピアノメーカー
文献から、六郷ピアノ製作所は、大田区六郷で、そののち茨城県土浦でピアノを生産しており、設立者は「田中貞三」とあり、「松本ピアノ、福山ピアノ、小野ピアノにて修業した」とあることから、何らかのかたちで、日本のピアノ制作に貢献したドイツ人技師「シュレーゲル」の指導を受けた高弟たちの流れがあるものと思われる。
(『日本のピアノ100年』 著者:前野孝則・岩野裕一 発行 草思社文庫 2019年)。

*5.東京ピアノ調律 神戸君仁氏のHPより神戸氏が六郷ピアノ製作所「キャッスル」のピアノを所有しておられることを知り、取材させていただいたところ、その縁からピアニスト、ピアノ研究家の松原 聡氏を紹介いただいた。

*6.松原氏が30年ほど前にCastleピアノの創業者のご子息から伝え聞いたお話をうかがうことができた。
以下は、松原氏にインタビューさせていただいた内容。
「先に送った資料(筆者註、資料4中①『日本のピアノメーカーとブランド』著者:三浦啓市発行:株式会社 按可社該当ページ:p.100,113,)には、創業者は田中貞三と書かれていますが、恐らく、この田中氏と一緒に立ち上げて、製造と技術を担当したと思われるのが、Castleピアノの創業者のご子息「星野正直氏(旧姓松本)」の父、松本金吾氏だったそうです。」
「この松本金吾氏は、日本の明治の黎明期を支えた最初期のピアノメーカー、マツモトピアノの創業者一族と血縁だったようです。昭和20〜30年代に隆盛を極めたのですが、折しも日本は戦後の復興期から高度経済成長に向かうところ。ヤマハ、カワイに代表される大メーカーと共に、雨後の筍のように中小メーカーが沢山ありました。その中には、大変な職人気質で、高品質なピアノを、完全手作りで少数生産しているメーカーが存在しました。田中貞三氏、松本金吾氏がキャッスルを生み出した六郷ピアノもそんなメーカーの一つです。」
「その頃、少年時代だった星野氏は、それこそ六郷ピアノの最盛期に工場で徒弟のような事を手伝っていたそうで、工員さん(技術者)たちは、操業時間が終わっても、ピアノ造りの情熱に取り憑かれたように、みんな集まって夜な夜な、良いピアノを造るにはどうすれば良いのか、議論に明け暮れていたそうです。キャッスルのロゴは、人間の耳の形をモティーフとしたものだそうです。外装の木目の化粧板を薄い突板として本体に貼り合わせて木目のピアノを製作していくのですが、サペリ材のピアノを製作する際、突板の貼り合わせで、なかなかくっ付かず、難儀した、という話を覚えています。確かアップライトだったと記憶しています」
文献(筆者註・同上)には「外装に厚い材料を使用したので湿度に弱かった」とあるが、このことについて星野氏はそうではないとしていたようで、通常、ピアノ本体の木材には合板を使うが、キャッスルは厚く頑丈な一枚板を使用していたため(アップライトの情報を見ると、必ずしも一枚板ではないものあるが)、そのように書かれたと推察している、とのことであった。
以上、星野氏からの伝聞としてお話し下さった。
 また、ドイツ•ライプツィヒの名器「ブリュートナー」を模してつくられ、内部のアクションには世界一流メーカーに多数使用されている、ドイツ•レンナー社製のアクションを使用し、輸入一流メーカーに挑むように、非常に高品質なピアノ製造を志していた事を示していたと思われる、とも伺った。
 この星野氏が、顧客向けに書いていた手書きの新聞も提供していただいた。大変貴重な資料である(資料4)。

*7.水野靖久調律師は、旭川を舞台にピアノ調律師の成長を描き、2016年第13回本屋大賞を受賞した宮下奈都の小説「羊と鋼の森」を、山崎賢人の主演で映画化した際の調律指導を担当した方で、著者のピアノの調律をしている縁から、調査に同行していただいた。

*8.許可をいただき、立合いのもと、水野調律師とともに調査を行った。

*9.ダンパーの戻りが遅く、音がのびたままになる場所がいくつかあった。譜面台には亀裂が入っている。

*10.筆者は、このコンサートの際、関わりの中から演奏者の紹介を行い、当時の調律時にも立ち会っている。その当時も、調律段階から数音がのびてしまい、響きがとまらないなどの不具合があった。

*11.このピアノの詳細を得るために、著者のSNSで情報提供を呼びかける中、六郷ピアノの修理を行った千葉県印西市の「ピアピット」代表の渡辺順一さんに連絡を取ることができ、お話を聞かせていただいた。

*12.「ピアピット」代表の渡辺さんが、過去に実際に「キャッスル」のグランドピアノを修理した様子。
http://www.piapit.com/kurin9/caslegpoka/newpage1.html
2023/1/20最終閲覧

*13.ジャズピアニスト河野康弘さんは、古いピアノを修復しての「冬眠ピアノお目覚めコンサート」や、広島で「被爆ピアノ」を使用しての平和コンサートをされた方で、91年湾岸戦争をきっかけに、平和と環境をテーマに活動をはじめ、山の木でつくられたピアノが約450万台眠っていることを知り、自然保護運動の一環として全国でコンサートを開催されている。また、アジア・アフリカなど各国の子供達にピアノを寄贈し、音楽の素晴らしさを伝えている。
このたび、河野氏に古いピアノを活かす意義についてお話を伺うことができ、「粗末にすることなく使うことは、自然との共生に繋がる。ピアノは、誰でも弾ける心の栄養。お母さんから子どもへと譲りつなげることもできる」と語って下さった。
https://youtu.be/l4HODOX3TNI
2023/1/14最終閲覧

*14.人工林のアカエゾマツが響板に適するかの試験がされている。
林産試だより2010年3月号 ●特集「若松のアカエゾマツ人工林 76年生大径材の利用試験」 (hro.or.jp)
https://www.hro.or.jp/list/forest/research/fpri/dayori/1003/5.htm
2023/1/18最終閲覧
アカエゾマツ人工林材でピアノ響板を作る -楽器材としての利用可能性と資源量- 道総研森林研究本部企画調整部真田康弘
https://www.hro.or.jp/list/forest/research/fpri/dayori/1405/1405-6.pdf2023/1/18最終閲覧
イベントの際に北見木材株式会社の方からお伺いしたところ、樹木が育つまで長い年月があることから、現段階ではまだ実験中であるが、「アップライトピアノに人工林に植樹したアカエゾマツを使うことは可能」とのことであった。

*15.この協定は道産木材の様々な楽器への活用をめざして2022年1月11日に『「オホーツクおとの森」の設置に関する協定』と名称を変更。

*16.「木育(もくいく)」とは、「豊かな森林と木材に恵まれた北海道生まれの言葉で、すべての人が、木を身近に使っていくことを通じて、人と、木や森とのかかわりを主体的に考えられる豊かな心を育むこと(北海道水産林務部森林環境局森林活用課「木育」パンフレットより)」で、北海道認定「木育マイスター」育成研修をはじめ、さまざまな活動がなされている。

*17.2023.1.21-22に、札幌駅前通地下歩行空間にて、「オホーツクおとの森」設置に関する協定の啓発イベントが開催され、オホーツク総合振興局、北見木材の方にインタビューを行った。木育やピアノの響板の響きの実験、カスタネット作りなどが行われていた。イベントの様子は資料6にて紹介。

*18. 300年前のストラディヴァリウスが話題になることもあるように(「ストラディヴァリウス 300年目のキセキ展」2018年10月9日(火)~に開催された「STRADIVARIUS ‘f’enomenonストラディヴァリウス 300年目のキセキ展 | 森アーツセンターギャラリー - MORI ARTS CENTER GALLERY」
https://macg.roppongihills.com/jp/exhibitions/stradivarius/
2023/1/23最終閲覧、楽器の年数は手が入っていたならば、演奏するにあたって問題になることはなく、それどころか深みを増し充分に響くものである。

*19.『四谷ひろば』は新宿区からの提案により、「区立四谷第四小学校跡地を利用した地域で自主運営を行うひろば事業」を実現したものであり、平成20年(2008)より運営が開始されている。
ドイツの楽器メーカー「ブリュートナー」(『四谷ひろば』では、事務局長 田谷様から「ブリュトナー」とされているとのことを伺い、本文及び資料7では、「ブリュトナー」と表記しているが、『ピアノの名器と名曲』中では「ブリュートナー」となっていることから、注釈上ではそれに従う。)1853年、ユーリウス・ブリュートナーがライプツィヒで創業した。共鳴弦を1本加えることで響きを豊かにする「アリコート・スケーリング」で1872年に特許を取得し、響板の特殊加工技術も相まって、演奏者たちに支持されている。

*20.『ピアノの名器と名曲』 編集者:仲道郁代 発行者:田村正隆 発行所:株式会社ナツメ出版2009年 該当ページ:p.25,ブリュートナー

*21.コロナ禍の以前

*22.四谷ひろば』事務局長 田谷様にメールインタビューをさせていただき、「このピアノは、廃棄されるところを元の校長先生の意見で残すことになった。四谷第四小学校の子供達は、それまでこのピアノに自由に触れていた。基金を募らず、修理は最低限に必要なことをし、弦を取り替えたら、いまの弦の音になってしまうことから、弦は必要最低限に取替えることとし、足を修理するにとどめたため、修復料金は10万円ほどで済んでいる。「四谷ひろば」一周年事業イベントで弾かれて以来、年に2回、縁のある方が演奏してピアノコンサートが行われ、貴重な楽器として活用されている(注:コロナ禍の以前)。」とのお話しをうかがった。

*23.2010年キネ旬ムック『オールタイム・ベスト映画遺産・映画音楽篇』(キネマ旬報社)より佐藤勝の言葉。
『日本映画音楽の巨星たち 小林 淳 (著)〈1〉早坂文雄・佐藤勝・武満徹・古関裕而 』ワイズ出版( 2001/6/1)、該当ページp.67には、「ゲキバン」という言葉を忌み嫌ったとあり、「キネマ旬報 2000年7月上旬 夏の特別号 No.1311」では、久石譲氏が、劇伴に対する佐藤氏の姿勢に触れている。

*24.佐藤勝は、黒澤明監督「用心棒」1961年にて1962年アメリカのアカデミー音楽賞に日本作曲家として初めてノミネートされた『日本映画音楽の巨星たち 小林 淳 (著)〈1〉早坂文雄・佐藤勝・武満徹・古関裕而 』ワイズ出版(2001/6/1)、該当ページp.118。

*25.前間 孝則 (著), 岩野 裕一 (著)『 日本のピアノ100年: ピアノづくりに賭けた人々 』草思社文庫(2019/12/5)該当ページp173では、音楽教師たちの国産ピアノに対する批判について「音色が劣る、調子が狂いやすい、最初は良くても耐久性が劣る」という点をあげているが、「これは外国製が国産ピアノより販売斡旋料が多かったことや舶来信仰が根強くあったからだ」と、日本楽器第三代社長 川上嘉市が強調したとある。

*26.日本のピアノメーカーの黎明期に、歴史あるドイツのピアノメーカー「べヒシュタイン社」よりドイツ人技師シュレーゲルを招いて指導を受け、日々研究が行われていた。
「シュレーゲル氏報告書より」
「日本に産する木材は、大陸に産する木材に対して、樹脂多く、かつその生育の状態及び性質、組成を異にするが故に、これを響盤(著者注・響板)に使用し、標準的絃(弦)の長さを与うるも、予期せる如き、充分なる共鳴を得る能わず、音が響盤に固着して、所謂、尻消えとなる傾向あり、よって種々の機会に、響盤と絃との関係を研究したる結果、日本産木材を使用せる響盤には、大陸において定める絃の長さより、やや長き絃を与うるの好結果なる事を、実際の試作物について、確認することを得たり。しかして、試験の結果、次表の如き、絃の長さと、打絃点とを求むる事を得たり。なお絃の長さ、及び打絃点に関連して、響棒の厚さ、高さ、及び響棒と響棒との間隔、駒の高さ、及び駒の響盤に加わる圧力、駒釘の上下間隔等を研究して、次の如く定めたり」
前間 孝則 (著), 岩野 裕一 (著)『 日本のピアノ100年: ピアノづくりに賭けた人々 』草思社文庫( 2019/12/5)より引用。該当ページp183
とあり、日本独自のピアノが作られていたと考えられる。

*27.紫牟田伸子著、早川克美編『編集学―つなげる思考・発見の技法』、藝術学舎、2014年、該当ページp.76-82

*28.『博物館法の一部を改正する法律(令和5年4月1日施行)』の中で、「地域の多様な主体との連携・協力による文化観光その他の活 動を図り地域の活力の向上に取り組むことを努力義務とする」【第3条】、また『博物館の設置及び運営上の望ましい基準(平成23年12月20日文部科学省告示第165号):文部科学省』第1条の2において「博物館は、この基準に基づき、博物館の水準の維持及び向上を図り、もって教育、学術及び文化の発展並びに地域の活性化に貢献するよう努めるものとする。」と明記されている。
・博物館法の一部を改正する法律(令和4年法律第24号)について | 文化庁
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bijutsukan_hakubutsukan/shinko/kankei_horei/93697301.html
https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/1292940/r0401shiryou10.pdf
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/hakubutsukan/hakubutsukan04/03/pdf/93747001_05.pdf
・博物館の設置及び運営上の望ましい基準(平成23年12月20日文部科学省告示第165号):文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/01_l/08052911/1282457.htm

*29.「若者たち」作詞:藤田敏雄、作曲:佐藤勝

*30.留萌市一般社団法人留萌青年会議所では「音楽合宿のまち るもい」として活動している。
音楽合宿誘致事業|一般社団法人留萌青年会議所|JC|日本北海道留萌市|Rumoijc
https://rumoijc.wixsite.com/2020/blank-4

*31.画像は ・河野康弘ホームページへようこそ! - yasuhiro-kono ページ! https://yasuhiro-kono.jimdofree.com/
・音楽合宿誘致事業|一般社団法人留萌青年会議所|JC|日本北海道留萌市|Rumoijc https://rumoijc.wixsite.com/2020/blank-4
・「ピアピット」HPより「Castleの修復作業
http://www.piapit.com/kurin9/caslegpoka/newpage1.html
・私の旅日記~お気に入り写真館~
http://urawa0328.babymilk.jp/index.html
・日刊留萌2011/11/3掲載記事、留萌新聞社
より引用。写真掲載について、関係者に許可を頂いている。

【参考文献】
・青木健太郎著,編集,植木達人著,編集「地域林業のすすめ―林業先進国オーストリアに学ぶ地域資源活用のしくみ」築地書館2020年

・川添善行著、早川克美編『空間にこめられた意思をたどる』、藝術学舎、2014年

・河野康弘著,河野明佳著「お目覚めピアノでワッハッハ!」、リサイクル文化社、2006年

・五藤 利弘著、「おかあさんの被爆ピアノ」、講談社、2020年

・小林淳著『日本映画音楽の巨星たち〈1〉早坂文雄・佐藤勝・武満徹・古関裕而 』ワイズ出版2001年

・ジェイムズ バロン著,忠平 美幸翻訳『スタインウェイができるまで―あるピアノの伝記』、青土社、2009年

・紫牟田伸子著、早川克美編『編集学―つなげる思考・発見の技法』、藝術学舎、2014年

・長井進之介著、幻の国産ピアノ『オオハシ"を求めて OHHASHI いい音をいつまでも』、創英社/三省堂書店、2019年

・中西紹一・早川克美編『時間のデザイン―経験に埋め込まれた構造を読み解く』、藝術学舎、2014年

・仲正昌樹著『ハイデガー哲学入門─『存在と時間』を読む』講談社現代新書、2015年

・仲道郁代:編集者、田村正隆:発行者『ピアノの名器と名曲』、株式会社ナツメ出版、2009年

・早川克美著『デザインへのまなざし―豊かに生きるための思考術』、藝術学舎、2014年

・福士廣志著『留萌百年物語「佐藤勝物語」』留萌市教育委員会発行、2019年

・前間孝則著,岩野裕一著『日本のピアノ100年:ピアノづくりに賭けた人々 』草思社文庫2019年

・三浦啓市著,嶋和彦著,川口円子著『浜松ピアノ物語』しずおかの文化新書18 シリーズ知の産業、公益財団法人 静岡県文化財団;初版、2015年

・留萌市『新留萌市史』第一法規出版株式会社、2003年

・橋場麻智子著、「映画音楽の巨匠「佐藤勝」が愛した国産ピアノの復活」、京都芸術大学「芸術教養演習2」、2022年

・2010年キネ旬ムック『オールタイム・ベスト映画遺産・映画音楽篇』(キネマ旬報社)より

・キネマ旬報 2000年7月上旬 夏の特別号 No.1311

【参照WEBページ】
_・四谷ひろばHP
http://www.yotsuya-hiroba.jp/  2023/1/11最終閲覧

・河野康弘氏HP 
河野康弘ホームページへようこそ! - yasuhiro-kono ページ!
https://yasuhiro-kono.jimdofree.com/
2023/1/17最終閲覧

・被爆ピアノ~平和を奏でる
https://youtu.be/l4HODOX3TNI  2023/1/17最終閲覧


・林産試だより2010年3月号 ●特集「若松のアカエゾマツ人工林 76年生大径材の利用試験」 (hro.or.jp)
https://www.hro.or.jp/list/forest/research/fpri/dayori/1003/5.htm
2023/1/18最終閲覧

・アカエゾマツ人工林材でピアノ響板を作る -楽器材としての利用可能性と資源量- 道総研森林研究本部企画調整部真田康弘
https://www.hro.or.jp/list/forest/research/fpri/dayori/1405/1405-6.pdf 2023/1/18最終閲覧

・「ストラディヴァリウス 300年目のキセキ展」2018年10月9日(火)~に開催された「STRADIVARIUS ‘f’enomenonストラディヴァリウス 300年目のキセキ展 | 森アーツセンターギャラリー - MORI ARTS CENTER GALLERY」
https://macg.roppongihills.com/jp/exhibitions/stradivarius/
2023/1/23最終閲覧

・「ピアピット」HPより「Castleの修復作業
http://www.piapit.com/kurin9/caslegpoka/newpage1.html 2023.1.14閲覧

・博物館法の一部を改正する法律(令和4年法律第24号)について | 文化庁
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bijutsukan_hakubutsukan/shinko/kankei_horei/93697301.html
https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/1292940/r0401shiryou10.pdf
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/hakubutsukan/hakubutsukan04/03/pdf/93747001_05.pdf
2023/1/20最終閲覧

・博物館の設置及び運営上の望ましい基準(平成23年12月20日文部科学省告示第165号):文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/01_l/08052911/1282457.htm
2023/1/20最終閲覧

・ブリュートナー公式ページ
https://www.bluethnerworld.com/en/
2023/1/26最終閲覧

・東京ピアノ調律
https://tokyopiano.com/
2023/1/20最終閲覧

・音楽合宿誘致事業|一般社団法人留萌青年会議所|JC|日本北海道留萌市|Rumoijc
https://rumoijc.wixsite.com/2020/blank-4

・取組例 音楽合宿のまち「るもい」 業による交流・関係人口の拡大 (留萌市)
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/4/2/1/8/9/0/1/_/R3-jirei_21.pdf
2023/1/20最終閲覧

・留萌観光協会公式サイト「留萌で…」北海道留萌市 
https://www.rumoi-rasisa.jp/web/  2023.1.14閲覧

・私の旅日記~お気に入り写真館~
http://urawa0328.babymilk.jp/index.html
2023/1/20最終閲覧

・情報収集のために作成した動画
https://www.youtube.com/shorts/YxGfKIwZBrs 2023/1/5最終閲覧

本稿の執筆にあたり、多くの方々にご支援いただきました。
調査にご協力いただいたみなさまに心から感謝いたします。

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