海ほたるパーキングエリアと東京湾アクアラインの文化資産評価報告書
デザインでの海ほたるパーキングエリアと現代の文化的生活に貢献している東京湾アクアライン
はじめに
東京湾を横断する海底トンネルにフォーカスするか、海底トンネルから地上への出口もしくは入口となる海ほたるパーキングエリアのどちらか一方のみを取り上げるべきか悩んだ末、どちらも東京湾を車で横断するには切っても切れないので一つの組み合わせとして捉え、その構造物の広義としてのデザインおよびこれら2つが及ぼす文化的生活への影響を取り上げる。実際に私が平日は東京住まいで、週末に千葉で過ごす生活をアクアライン開業により毎週海ほたるに寄る楽しみと、便利さを体感しているの対象とした。
1:基本データ
●「海ほたるパーキングエリア」は、360°を海に囲まれた全長650mの島(木更津人工島)に建設された、世界でも珍しいパーキングエリア。5階建てで構成されており、1階から3階までが駐車場、4階・5階が営業施設となっている。東京湾の360°パノラマビューと、売店、レストラン、リフレッシュ施設などを備えた、海に浮かぶショッピングモールともいえる。
●東京湾アクアラインは、東京湾の中央部を横断する全長15.1kmの自動車専用の有料道路で、木更津と対岸の川崎を15分で結ぶ。
(1)道路名
東京湾横断道路(名称:東京湾アクアライン)
(2)路線名
一般国道409号
(3)区間
川崎市川崎区浮島町地先から木更津市中島
(4)延長
15.1km
(5)道路規格
第1種第2級・自動車専用道路
(6)車線数
4車線(将来構想6車線)
(7)開通
平成9年12月18日
2:存在意義からの評価
先ずは東京湾アクアライン、生活様式の変化及び老後社会への貢献から存在意義を認めることと今後への期待から評価。
海ほたるバーキングは東京近郊で楽しめる場としてのスポットとデザイン性から評価。
3:歴史的背景
昭和41年4月:建設省が調査開始
昭和61年4月:東京湾の周辺の地域における交通の円滑化に資することを目的東京湾横断道路の建設に関する特別措置法が成立。
平成元年5月:東京湾横断道路起工式
平成9年2月:公募により道路の名称を「東京湾アクアライン」、木更津人工島の名称を「海ほたる」に決定
平成9年12月:開通式
調査開始(構想)から完成まで約30年、こんなに長いとは驚きで、今現在何らかの構想を持った場合、30年後はどうなっているかと考えたら、本当に月旅行が可能だったり、自動運転の車、飛行機、タクシ-は当たり前で、世の中がどうなっているか楽しみになると、30年が考えさせてくれる。
4:評価
東京湾アクアライン:
(1). 通勤時間の短縮に大きく貢献。木更津側から川崎の工業地帯への通勤者が多く、開通前は、東京湾対岸へはフェリーで70分掛かっていたが、開通後は車利用で15分。これは既に通勤していた方の変化であるが、通行料金が社会実験として3,000円が800円となっていることにより、高速バスが23路線に増え、東京でのマンション生活から、木更津の土地の広い一戸建て生活へシフトし、バスで東京、品川、川崎、横浜、新宿へ通勤のスタイルがすっかり定着している。
(2). 東京から介護を受けなければならない方々の受け入れ増加及び介護施設の増加が起きている。家内が介護施設で働いているため、今日は品川からの方が入所されたとか良く話を聞く。私が勤める会社の近くの病院からの受け入れが偶然にも多いので変化を目の当たりにしていル。週末になると、施設の駐車場には東京のナンバープレートの車が多く駐車しているのを良く見かける。また、木更津のみならず、さらに南下して海が見える立地条件の場所に、介護施設が増えている。これは見舞いの方の移動時間、手段に貢献していることの証である。
(3). アウトレットモールの開業
話を聞いたときに、まさかと思いましたが、実際に2012年4月に開業し、その開業から劇的にその周辺が開発された。アウトレットモールは海よりに有り、市街までの道は整備され、その周辺には新しい家が立ち並び、その辺りは太陽の光を浴び白く輝いている。また、ホームセンター、大型家具店、飲食店なども立ち並び、地元の人も楽しめる場所が出来たと実感している。もちろん経済的効果は大きい。
(4)木更津市の人口増加
平成14年から連続で人口が増加しており、平成26年には33年ぶりに小学校開校。開校した真舟小の学区に含まれている請西南と真舟の両地区は新興住宅街で、アクアラインの通行料金を普通車800円に値下げする社会実験が始まった5年前ごろから人口が急増。請西南地区の児童らが昨年度まで通学していた請西小は、グラウンドにプレハブ校舎を建てるなどしていたが対応が追いつかず、平成23年10月に新設校の開校が決定していた。請西小の昨年度の児童数は1千人を超えていたという。(註1)
海ほたる:
(1)20年使用していて、今回レポートのために調べて分かったことがある。
海ほたるというネーミングは公募で名称が付けられたが、夜の海に光るパーキングを発光するウミホタルに由来して付けられたようだが、製作者の意図は添付写真のように、豪華客船をイメージした駐車場ということを知って新たな発見に驚いた。毎週最上階の5階を歩いていたが客船などと思ったこともなかったが、確かの船の真ん中にレストラン街があり、その周りを甲板上で歩いている感じで、船の外周に沿ってぐるっと一回りすることによって、360度海から周りを見渡せる。横浜ベイブリッジ、東京タワ-、新宿の超高層ビル群、幕張メッセ等が見え、冬で空気が澄んでいると富士山がこんなにも大きく見えると驚ける。今ではアウトレットモールもできたことで、海ほたるに寄って、さらに下って、木更津で降りてアウトレットでお買い物となりますが、以前は、海ほたるへ360度ビューを楽しむためにだけドライブも多かったので、当初から対岸に渡らず、片道料金で海ほたるでUターンができる様になっていました。ETCが使えるようになって、800円で24時間海を見に行けるのです。日の出も夜景も楽しめる。
(2) 情緒、アクアライン開通前はフェリーで対岸へ渡っており、時間は掛かるが、帰宅時間の川崎からのフェリーはまるで納涼船のように夏は線上のビアガーデンを楽しむという情緒があり、考え方によっては普通では味わえない贅沢さがあった。少しオーバーだが、それを受け継いだのが海ほたると言えるだろう。海を見ながら食事でもと、気軽に行ける場所になっている。(場、機会の提供)
評価という点は両社とも上記からマイナス点は無い、ただし、近年、時間帯によるが、道路の渋滞および駐車場の混雑が問題化しつつある。
5:特筆
トンネルや橋など、島と本州を結ぶようなものを探したところ、青森と北海道を結ぶ「青函トンネル」と四国と本州を結ぶ「本州四国連絡橋」を見つけ比較してみた。
青函トンネルは鉄道のみ、本州四国連絡橋は3つのル-トからなっており、1つのル-トは鉄道と道路の並走になっている。
東京湾アクアラインは自動車専用となっていて、なぜ電車が無いのか、有れば東京湾を横断する大きな環状線ができるから良いかと勝手に思っていたが、そもそもの目的は東京湾の周辺の地域における交通の円滑化ということで物流を意識すれば自動車優先で、計画当時の千葉県だと鉄道というより、地域密着は自動車で有ったこと、また、鉄道と言う固定資産の設置、維持、修繕、管理のコストを考えたら、移動式の高速バスの方がコストは安いし、数社がビジネスに参加できるのと、目的地までのル-トを状況により変更できるなど、メリットが大きいことが分かりました。また、青函トンネルは50kmを超える距離なので、事故時の救済を考えると、事故の確率の低い鉄道は理にかなっている。
6.今度の展望
物流、千葉県側の人口増加、観光収入増加に貢献しているが、その分、渋滞が増えているが、時間帯によっては空いているので、ピ-ク時にどうすれば海ほたるを多くの人がスム-ズにこことよく楽しめるかの工夫が必要と認識する。
ふらっと寄る楽しみもあるが、ネットの時代なので、完全予約制も良いかもしれない。
参考文献
註1:産経ニュース 2014.4.7 22:53