市民を繋げる「音まちピアノ」

田久保 由

市民を繋げる「音まちピアノ」

はじめに
埼玉県所沢市に設置されているストリートピアノ「音まちピアノ」について、地域の文化資産として評価し、また日本で初めて常設されたストリートピアノである鹿児島市一番街商店街の「ラッキーピアノ」と比較し今後の展望について考察する。

ストリートピアノとは、公共の場所に置かれ誰もが自由に弾くことのできるピアノである。2008年、イギリスでルーク・ジェラム氏が行ったアートプロジェクト「Play Me,I’m Your’s」が始まり(1)。日本では2011年2月に鹿児島の商店街に設置されたものが始まり(2)で、鹿児島県内から徐々に広まり、2017年から楽器メーカーヤマハの「Love Piano」プロジェクト(3)やNHKで「空港ピアノ」(4)の放送が始まり広く知られるようになる。2018年には東京の国立で「Play Me,I’m Your’s」の日本版が開催され成功を収め(5)、徐々に国内でストリートピアノの設置箇所が増加し、2023年現在は日本全国で600台以上のストリートピアノが設置されている(6)。

1.基本データ

1-1.埼玉県所沢市「音まちピアノ」
名称:音まちピアノ
場所:グランエミオ所沢2階吹き抜け(所沢駅南改札すぐ)
ピアノ:KAWAI アップライト(市内企業より寄贈)
設置年月日:2021年9月4日
管理者:所沢市
演奏可能時間:10時〜18時半
一回の演奏制限:5分
利用者数:平日延べ70人、休日延べ90人

2013年から市で取り組んでいる「音楽のあるまちづくり推進事業(音まち事業)」の一環として設置された。当初1ヶ月ほどの期間限定の予定であったが、好評につき12月まで延長、さらにその後無期限で当面の間常設されることとなった。常連客が多く特に休日は演奏がほとんど途切れない(資料1)。

1−2.鹿児島県鹿児島市「ラッキーピアノ」
名称:ラッキーピアノ
場所:鹿児島一番街商店街(鹿児島中央駅すぐ)
ピアノ:ディアパソン アップライト(市民より寄贈)
設置年月日:2011年2月26日
管理者:商店街
演奏可能時間:10時〜17時
一回の演奏制限:30分
利用者数:10人程度

商店街のイベントで行われた手回しオルガンのパレードが好評であったことから、海外で盛り上がり始めていたストリートピアノの存在を知り商店街への設置が決まる。
市内のデザイン専門学校の生徒による明るいペイントが特徴的で、週に何度か来て練習をしているという女性もいれば、毎日帰り道に少し触っていく親子、ここで弾くことを目標に70歳からピアノを始めたという女性もいた(資料2)。

2.事例のどんな点について積極的に評価しているのか
ストリートピアノ自体の魅力として、誰もが演奏、鑑賞し音楽に触れることができること、見知らぬ者同士音楽を通じて交流ができること、演奏する側はそこで弾くことをモチベーションに自己研鑽に励むことができる、などがある。
「音まちピアノ」は設置場所がターミナル駅の改札外、商業施設の吹き抜けの中にあり音の響きもよく、人の流れの中に自然に溶け込んでいる。待ち合わせや休憩用のベンチも多数あり演奏をゆったり聴くことができる。奏者は初心者から上級者まで様々だが演奏後は平等に拍手が贈られ気持ちよく演奏することができる。常連客同士の交流も盛んで、曲のリクエストをしあったり、近隣のレンタルスペースで自主演奏会を開くなどの活動にも発展している。2022年秋に所沢市が実施したアンケート(資料3)では6割以上がこの場所は居心地が良い、ピアノを通じて交流があったと答えており、その感想も概ね好意的であった。2023年5月に筆者が演奏者、鑑賞者を対象に実施したアンケート(資料4、5)では共に半数近くがピアノを目的にこの場所を訪れており、演奏者では月2回以上訪れるものが半数以上と常連客の多さも窺えた。利用者は10歳未満から80代以上までと幅広いが、演奏者は2割、鑑賞者は6割近くが60代以上と全体的に年齢層はやや高めである。現代の高齢化社会においてはいかに健康寿命を伸ばすかが課題となるが、楽器の演奏や新たな友人との出会い、交流はその一助となる(7)。
毎日ただ通り過ぎていた駅、すれ違っていた人々。本来知り合うことのなかった者たちがそこに設置されたピアノを通じて会話を交わし、交流が生まれる場所となったことを高く評価する。

3.国内外の他の同様の事例と比較して何が特筆されるのか
日本で最初に設置された鹿児島の「ラッキーピアノ」は行政主体ではなく商店街の有志で運営しており、1日の利用者数は10人程である。ピアノの周辺にテーブルと椅子二脚のセットが三点置かれているが順番待ちはほとんど発生しない。設置の二週間後に東日本大震災が起きたことから、被災地にピアノを寄贈したり、2012年から毎年3月11日に被災地の復興を願う「ストリートピアノでつなぐ祈りのハーモニー」というイベントを行っており、2023年には12道府県21ヶ所で行われるなど全国に影響を与えている(8)。
設置当初から通っている女性はこの場所で交流があり、演奏中に花束をもらったこともあると話してくれた。しかし半年前に夫の転勤で越してきたという女性は筆者が話しかけるとこうして声をかけられたのは初めてだと語った。演奏が途切れる時間帯もあり「音まちピアノ」のような濃い交流は生まれにくいようだったが、毎日通う未就学児や少しだけ鳴らして帰る男子小学生など、地域に根付き愛されているピアノであることは間違いない。
「音まちピアノ」において特筆すべきことは、アクセスや人通りなどの設置環境の良さ、演奏者、鑑賞者ともに常連客の多さ、稼働率の高さである。ターミナル駅の改札外で人の行き来があり、ベンチも複数あり休憩を兼ねてピアノの音に耳を傾けることができる。所沢市が2013年から取り組んでいる「音まち事業」では市内出身のアーティストや学生によるまちなかコンサートやエキナカコンサートを行い音楽に親しむ機会を創出してきたが、コンサートは多くの市民にとっては受動的なものである。そこへ市民の誰もが主役になれるストリートピアノが誕生した。2019年に設置された東京都庁のピアノ(9)やYouTubeなどでのブームもあり設置を望んでいた市民も多く、設置当初は延べ120人ほどが演奏する日もあり大変盛況となった。2023年現在の利用者数は平日述べ70〜80人、休日述べ90〜100人(10)ほどであり特に昼過ぎから夕方にかけては演奏がほとんど途切れず、さながら市民演奏会のようである。また他のストリートピアノに比べ調律の回数も多く、準備や片付けに市の職員も入ることでいつでも弾きやすい状態に保たれている(11)(資料6、7)。

4.今後の展望について
2019年以降ストリートピアノの設置が急速に増加しており、現在は過渡期にあると言える。騒音やマナーの問題で撤去されたピアノもある中(12)、一過性のブームで終わらせないためにマナーやモラルを守り利用することが重要である。
12年続く鹿児島の「ラッキーピアノ」も開放時間や演奏時間の制限など、たびたび運用ルールを変更しながら現在に至っている(13)。
前述の筆者が実施したアンケートでは「音まちピアノ」のマナーに対するコメントも見受けられたが、顔見知りも多く利用者同士注意し合ったりという姿も見られる。演奏時間については5分では短すぎるという意見がある。利用者名簿を見ると特に平日は同じ名前が並んでいることも多々あり、実際の利用者数は徐々に落ち着いてきているため10分程度に延ばしてもいいのではないか。また所沢の「音まちピアノ」は周りに囲いがあり、基本的に演奏者以外は立ち入れないようになっているが、「ラッキーピアノ」は囲いもなく誰もを歓迎している雰囲気が魅力である。1階づくりの専門家田中元子は良いグランドレベルをつくる基本は「禁止」主導のルールではなく「自由」主導のルールであると述べている(14)。将来的には利用時間内は囲いや名簿をなくし、連弾も可能になるとストリートピアノの醍醐味である「即興性」「出会い」をより楽しめるのではないだろうか。

5.まとめ
前述の市が実施したアンケートでは8割以上のものが存続を望んでおり、今後も市民の生活に彩りを与える存在であり続けることを願う。
またピアニストの菊池亮太氏(15)も「音まちピアノ」を月1〜2回訪れるというほど気に入っており(資料1)、氏のYouTubeチャンネルにも「音まちピアノ」での動画が多数投稿されている。菊池氏は体感としてストリートピアノを入口にクラシックの若手演奏家のファンになるものも多く、ストリートピアノはピアノ業界にも多大な影響を与えていると述べている(16)。「音まちピアノ」をきっかけに音楽やクラシックに興味を持ち今後の音楽文化、ストリートピアノ文化向上に貢献する人材が現れることを期待したい。

  • %c2%8e%c2%86 【表紙】所沢駅の「音まちピアノ」。所沢市のご当地キャラクター「トコろん」のぬいぐるみが飾られている(2023年4月16日筆者撮影。一部加工)。
  • 81191_011_32186096_1_2_%e8%b3%87%e6%96%991%ef%bc%9a%e6%89%80%e6%b2%a2%e3%83%94%e3%82%a2%e3%83%8e_page-0001 【資料1】「音まちピアノ」全体図。筆者作成。ピアノは中央の写真下部。開始直後のため人通りは少なめだが演奏者と利用者名簿に記入するものが見える。中央の写真の左下に案内看板①、右下に案内看板②が設置されている。写真は全て筆者撮影。撮影日:左上、左下2023年5月27日、中央2023年4月30日、右上2023年2月19日、右下2023年6月24日。
  • 81191_011_32186096_1_3_%e8%b3%87%e6%96%992%ef%bc%9a%e9%b9%bf%e5%85%90%e5%b3%b6%e3%83%94%e3%82%a2%e3%83%8e_page-0001 【資料2】「ラッキーピアノ」全体図と演奏者取材の記録(写真は全て2023年5月20日筆者撮影)。筆者作成。
  • 81191_011_32186096_1_4_%e8%b3%87%e6%96%993%ef%bc%9a%e6%89%80%e6%b2%a2%e5%b8%82%e3%82%a2%e3%83%b3%e3%82%b1%e3%83%bc%e3%83%88_page-0001 【資料3】所沢市が実施したアンケート。市から提供していただいたものを元に筆者作成。概ね肯定的な意見であるが、常連客の演奏を「占有」と受け取るものもいるようだ。
  • %e8%b3%87%e6%96%994%e3%80%815%ef%bc%9a%e6%bc%94%e5%a5%8f%e8%80%85%e3%80%81%e9%91%91%e8%b3%9e%e8%80%85%e3%82%a2%e3%83%b3%e3%82%b1%e3%83%bc%e3%83%88-_page-0001
  • %e8%b3%87%e6%96%994%e3%80%815%ef%bc%9a%e6%bc%94%e5%a5%8f%e8%80%85%e3%80%81%e9%91%91%e8%b3%9e%e8%80%85%e3%82%a2%e3%83%b3%e3%82%b1%e3%83%bc%e3%83%88-_page-0002 【資料4】「音まちピアノ」演奏者アンケート。筆者作成。6割以上が市内や隣接市から来ておりリピーターも多い。
    【資料5】「音まちピアノ」鑑賞者アンケート。筆者作成。6割以上が所沢市民と地域に愛されたピアノであることがわかる。
  • %e8%b3%87%e6%96%996%ef%bc%9a%e5%b8%82%e5%bd%b9%e6%89%80%e5%8f%96%e6%9d%90_page-0001 【資料6】所沢市文化芸術振興課取材記録。筆者作成。非常に多くの事例を参考にしており音まち事業への熱意が窺える。
  • %e8%b3%87%e6%96%997%ef%bc%9a%e5%90%84%e6%89%80%e6%af%94%e8%bc%83%e8%a1%a8_page-0001 【資料7】所沢及び鹿児島、その他首都圏の主なストリートピアノ比較表。①~⑥の番号は資料8の地図内に関連。筆者作成。電話またはメールにて筆者聞き取り。それぞれ工夫をしながら運営している。行政主体で運営する所沢は非常に恵まれた環境である。

    写真は全て筆者撮影。撮影日:上から2023年4月16日、2023年5月20日、2021年5月23日、2023年4月29日、2023年5月5日、2023年7月29日、2023年6月3日、2023年4月16日
  • %e8%b3%87%e6%96%998%ef%bc%9a%e9%a6%96%e9%83%bd%e5%9c%8f%e3%82%b9%e3%83%88%e3%83%92_map_page-0001 【資料8】首都圏(一都三県)のストリートピアノ設置箇所。国土地理院の地図を元に筆者作成。多くの個性豊かなピアノがそれぞれのまちに彩りを与えている。

    写真は全て筆者撮影。撮影日:⑦2023年3月16日⑧2023年7月2日⑨2023年3月18日⑩2023年4月8日⑪2023年5月16日⑫2023年4月23日⑬2023年7月21日⑭2023年6月11日⑮2023年6月25日⑯2023年5月21日⑰2023年4月19日⑱2023年4月29日◆銀座NISSAN CROSSING 2023年5月21日◆ストリートエレクトーン 2022年6月5日

参考文献

(1)Play Me, I’m Yours | Street Pianos
http://www.streetpianos.com/(2023年7月22日閲覧)
Streetpianos 'Play Me, I'm Yours: London2009'
https://www.youtube.com/watch?v=6z2eEHORhXI(2023年7月22日閲覧)
ストリートピアノ・プロジェクトinロンドン ~30台のピアノが街中に!?
https://www.piano.or.jp/report/02soc/london/2009/08/26_9937.html(2023年7月22日閲覧)

(2)街にピアノ♪日本初!ストリートピアノのある商店街|一番街商店街振興組合(鹿児島市中央町)
https://www.c-itibangai-iddo.jp/street_piano/index.html(2023年7月22日閲覧)
ストリートピアノJAPAN
http://streetpiano-jp.com/(2023年7月22日閲覧)

(3)期間限定で、ペイントしたヤマハのピアノを商業施設などに貸し出し自由に弾いてもらうプロジェクト。
ヤマハ | ストリートピアノ「LovePiano」
https://jp.yamaha.com/products/contents/pianos/lovepiano/index.html(2023年7月22日閲覧)

(4)ストリートピアノに定点カメラを設置し演奏者の想いとともに紹介する番組。初めは海外の空港や駅のピアノのみの放送であったが2020年1月に初めて国内(神戸)のピアノが放送されコロナ禍以降は国内のピアノが中心となっている。
駅ピアノ・空港ピアノ・街角ピアノ - NHK
https://www.nhk.jp/p/ts/9981L8QX2N/(2023年7月22日閲覧)

(5)国立市内に10台のピアノが置かれ、2週間で延べ6万人が訪れた。
Play Me, I’m Yours Kunitachi 2018
https://streetpianoskunitachi.tokyo/(2023年7月22日閲覧)

(6)だれでもピアノ【日本最大のストリートピアノ専門サイト】
https://pianomitsuketa.com/(2023年7月22日閲覧)

(7)アメリカのブリガム・ヤング大学の研究では「社会的孤立」は死亡リスクを29%上げ、「孤独感」では26%、「一人暮らし」は32%リスクが高まると発表された。
Loneliness and Social Isolation as Risk Factors for Mortality: A Meta-Analytic Review - Julianne Holt-Lunstad, Timothy B. Smith, Mark Baker, Tyler Harris, David Stephenson, 2015
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/1745691614568352(2023年7月22日閲覧)

(8)鹿児島から全国に広がった追悼セレモニー 祈りの歌とピアノ響く 発生時刻の午後2時46分に黙とう【東日本大震災12年】 | 鹿児島のニュース | 南日本新聞 | 373news.com
https://373news.com/_news/storyid/172010/(2023年7月22日閲覧)

(9)草間弥生さんデザインのピアノ公開 東京都庁の展望室 - 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43270220T00C19A4CC0000/(2023年7月22日閲覧)

(10、11)所沢市文化芸術振興課への聞き取り及び利用者名簿より。

(12)ルールやマナー、守らないから… JR加古川駅のストリートピアノ、4月末に運用休止・撤去へ(2023/4/24神戸新聞)
https://www.kobe-np.co.jp/news/touban/202304/0016277557.shtml(2023年7月22日閲覧)

(13)鹿児島一番街商店街へメールにて聞き取り。当初は無制限で設置していたが2階に学習塾が入り苦情が入ったため10時〜17時までとなった。演奏時間も1時間までとしていたが順番が回ってこないとの苦情が来たため30分に変更。都度解決しており最近は苦情は出ていないとのことであった。

(14)田中元子『マイパブリックとグランドレベル』晶文社、2017年、p148-151
「音まちピアノ」の設置場所は1階ではないが、駅の改札付近、人々が行き交う玄関口という意味でグランドレベルと同等であると言える。

(15)4歳からピアノを始める。国立音楽大学附属中学、高等学校卒業。日本大学芸術学部音楽学科および同大学院修了。音楽大学在学時よりアーティストのサポートや楽曲制作にて音楽活動を始める。(菊池亮太公式サイトProfileより)
菊池亮太公式サイト
https://tskiku8.wixsite.com/kikuchi(2023年7月27日閲覧)
菊池亮太公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UC49Kaj6V3vBLsAZnAlDDVSw(2023年7月27日閲覧)
菊池氏は前述の「 Play Me,I’m Your’s Kunitachi 2018」のキックオフイベントにてゲスト奏者も務めている。

(16)菊池亮太(2023)「菊池亮太のぶらり音楽さんぽ」、『ショパン』2023年3月号、p61、ハンナ

参考文献・URL
古賀弥生『芸術文化と地域づくり』九州大学出版社、2020年
田中元子『マイパブリックとグランドレベル』晶文社、2017年
田中元子『1階革命 施設公民館「喫茶ランドリー」とまちづくり』晶文社、2022年
重野知央編『「音楽する」は脳に効く』Gakken、2022年
居心地が良く歩きたくなるグランドレベルデザイン 国土交通省都市局まちづくり推進課 令和3年
https://www.mlit.go.jp/toshi/file/useful/g-level2.pdf(2023年7月30日閲覧)
所沢市ホームページ 音まちピアノ(ストリートピアノin所沢)
https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/iitokoro/enjoy/otomachi/streetpiano_202109.html(2023年7月27日閲覧)
所沢市ホームページ 音楽のあるまちづくり
https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/iitokoro/enjoy/otomachi/otomachi.html(2023年7月27日閲覧)

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