水の郷 日野・水路景観の価値継承への道を探る
はじめに
かつて多摩の米蔵といわれた日野市は、昭和30年代後半から東京への人口集中で、宅地開発が押し寄せて水田や用水路の減少は大きい。しかし、水を活かしたまちづくりに優れた成果を上げているため、「国土交通省の水の郷百選」(1)に認定されている。本稿では、この用水による水路景観の価値を評価し、次世代への継承を考察する。
1.基本データと歴史的背景(資料1、資料2)
日野市は都心から西に35 km、東京都のほぼ中心部に位置し、北部を流れる多摩川(一級河川)と中央部を流れる浅川(多摩川の支流)が流れ、河川・台地・沖積地・丘陵地の自然風土がある。多摩川と浅川によって形成された沖積低地の3つの段差を巧みに利用して、灌漑用の用水路が13本(主幹線)あり、そこから支線が出て市内に張り巡らされている(総延長116 km)。
佐藤家(江戸時代・日野の名主)に伝わる元禄16年(1703)3月の挨拶目録に、「永禄10年(1567)、庄屋の佐藤勇人が小田原北条の一族陸奥守氏照から罪人をもらい受けて、日野用水を開削した」(2)と記されているが、本格的な開発は17世紀からである。
昭和45年の広報には、「高度経済成長で、川はよごれ、大腸菌もウヨウヨ」(3)の記事があり、用水や河川に蓋をする自治体が多くあったが、日野市は用水に蓋をせず清流保全条例(昭和51年制定)によって、用水路に年間を通じて、水を流す年間通水の実施や家庭レベルの意識改革で水質汚濁を解消した。平成18年清流保全条例は、時代に即した内容に全面改正(4)され、新たに「用水守制度」(5)を制定し、市民ボランティアによる水環境の維持・清掃活動の官民一体の協力体制ができた。
2.積極的に評価する点
用水路は、歴史の中で人々の暮らしのなかに溶け込み、つくられ、守ってきた先人たちの知恵と努力が土台となり、いまの水路景観がある(資料3- a)。この景観の環境における本来機能は水田(稲作)農業であるが、その価値を多角的な視点で評価する。
2-1.水路景観デザインの特質
クラウス・クリッペンドルフは、「デザインとはモノに意味を与えることである」(6)と述べているが、有機的につながった水のネットワークの水路景観は、社会文化的な価値創造がある環境としての意味がある。本稿では水路景観を、①観る景観デザイン(観光や水と緑の癒しのある空間)、②構えの景観デザイン(自然と形態化した水門・堰など)、③教育・営為の景観デザイン(環境教育の体験空間・営農など)の3つに分類して定義する(資料4)。
以下に、この景観デザイン事例の優れている点を述べる。
①観る景観デザイン(視点が動くシークエンス景観による)
日野用水(上堰)の日野宿の町並みエリアの用水路(7)、(資料5・図1-a)は、変化点から、上下二重構造の用水路と連続性のある擬木柵の構成で奥行空間がある。また、複数の昔の用水風景写真パネルの展示があり、日野宿(江戸時代)の歴史・文化遺産エリアとマッチングした空間デザインだ。樋口忠彦は、『景観の構造』のなかで「人間の視覚は俯角30°が視野の下限」(8)と示しており、この用水路は深さ1.8m、柵の高さ80㎝なので、柵より覗き込んで水流を観る意識的な行動がともない、水への関心が高まる。
向島用水親水路(9)、(資料5・図1-b)は、変化点から多くの樹木や遊歩道、空玉石積みと素掘りの護岸、木杭、トンボ池(ワンド)や復元された水車小屋があり、水と緑(秋は紅葉)の自然環境がある親水空間だ。それゆえに、ここでの景観体験は癒し感がある。またトンボ池は環境学習ができる教育の景観デザインもあり、「水辺の楽校」(10)のアイデアが生まれた誕生の地である。
②構えの景観デザイン(シーン景観による)(11)、(資料5・図2)
川添善行は、構えの概念を「複数の要素の関係性を形態に落とし込もうという姿勢」(12)と言っており、河川から取水する機能がある堰や水門をみると、自然(水流)に対して寝そべる構え(伏臥)は水を溜める堰、自然(水流)から立ち上がろうとする構え(屹立)は、水面から観た水門といえる。また、堰や水門は治水としての機能がある。
③教育・営為の景観デザイン
営為の水田(稲作)農業のほか、市内には学校という学びの空間の中に、用水を利用した田んぼやビオトープがある小学校が多くあり(13)、食の大切さや農の学び、生きものを観察する環境学習の空間デザインがある。
2-2.水路景観の多面的価値
水路景観の環境では、社会・環境教育や地域文化活動、地域コミュニティーなど、様々な活動が行われており、多面的価値を創出している(資料6)。これは、早川克美が述べているコンセプトデザイン(人とコトをつなぐ)とコミュニティデザイン(人と人がつながる)の「人間とモノ・コトの関係性による有機的な活動体」(14)であると考える。
また、筆者が参加した田植え祭や稲刈り祭のイベントは、農と環境をテーマとして参加・体験・協働があり、ミハイ・チクセントミハイが指摘した「フロー状態」(15)がある非日常の時間のデザインといえよう。
3.特筆点
日野用水と同じ多摩川水系から取水し、江戸時代に開削された灌漑用の用水路である府中用水(国立市域・府中市域)(資料7、資料8)の、現地踏査を行ない比較して述べる。
府中用水は、多摩川から取水する期間が水田で利用する春から秋までに限られ、それ以外は段丘崖からの湧水が多少流れているが、日野市内の用水路は水田に必要がない期間にも一定の水を取水する年間通水である。そのため、水量が年間を通して確保され、水質が良好になり、生き物たちの棲息する自然環境が保たれている。
また、府中用水の府中市域(資料8・図2)は、灌漑用の機能を持たなくなった多くの用水路が、暗渠になっていたので水への認識が薄れ、水路環境にたいする市民意識が低下する恐れがある。しかし、日野市内の用水路は、ほとんど開渠して年間通水しているため、用水が身近な存在となり、水路景観・環境への市民意識が高いと考えられる。
4.今後の展望
水路景観を農業の視点でみると、今後、水田(稲作)農業の衰退で田んぼが無くなると、国土交通省の管轄下にある多摩川や浅川からの水利権が無くなり、水路景観の存続が危ぶまれる。それゆえに、その課題を挙げて考察する。
4-1.田んぼの減少から存続・復元へ
田んぼの減少の大きな要因には、農家の高齢化による後継者不足がある。平成17年と平成27年の日野市の統計データ(16)で比較すると、田のある経営体数が97から44、田の面積(単位・アール)が2034から969になり約半分に減少した。また、公的機関の稲作経営意識調査(2021年)によると、稲作農家は60歳以上が70%占めており高齢化率が高い(17)。
この対策として市民の援農活動「農の学校」(18)の支援活動があり、農作業の対症療法としてよい面がある。しかし、稲作経営意識調査のアンケート結果(19)によれば、逆に農家に負担がかかる場合もあり、稲作農家の大半が期待していないという厳しい結果である。そのため、今後はさらに農家の声を聞いて進めていくことが大切であると考える。
田んぼの復元では、今後の行政の区画整理事業で、公園内に田んぼの復元計画が4ヶ所(20)あり、公園内は恒久的でよい計画である。将来的には休耕地を公有地化にして、田んぼトラスト(21)の仕組みで、復元することも考えられるのではないか。
4-2.農業従事者拡大に向けて
現地踏査を行なった府中用水の国立市域(資料8・図1)では、農の学びを推進する農の情報発信拠点(国立市・城山さとの家)があり、複数の体験農園で市民の農体験が見受けられた。日野市のまちづくりマスタープラン(22)では、市内の5ヶ所が農の拠点になるコンセプトがデザインされている。農の拠点では、市民と農業が一体となる農の情報発信拠点の構築・充実によって、将来を担う子どもたちへ農の学び・農の理解を広げていくことに期待したい。
5.まとめ
優れた景観デザインがある水路景観の価値を継承するためには、田んぼの存続・復元がもっとも重要であり、多くの課題があることがわかった。それゆえに、暮らしのなかに水のある水路景観・環境を多様な地域の人々が享受し、水への恩恵を忘れず、積極的な人とコト、人と人のつながりがある有機的な活動の進展が、価値継承への道につながると考える。
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資料1 基本データ
・図:筆者作成、作成日(最終修正日)2023年1月10日、筆者撮影。
図1.東京都日野市の位置・市内沖積地と沖積地断面図
・東京都日野市の位置
出典(左上:地形図)/国土地理院WEBサイト/https://maps.gsi.go.jp/help/intro/general/tetuduki.html/2022年8月3日閲覧。
・市内沖積地、沖積地断面図
図:筆者作成(以下の書籍参考)、作成日2023年1月24日。筆者撮影、撮影日2023年1月24日。
参考書籍:日野市郷土資料館編『日野用水開削450周年記念特別展~日野人が守り育てた緑と清流~』、日野市教育委員会、2018年、4頁。
図2.市内の用水路
出典(用水路図):日野用水450周年記念事業推進委員会編『日野用水開削450周年記念誌・日野の用水』、日野市環境共生部緑と清流課、2017年、59頁。筆者加筆。
資料2 用水の歴史的背景
・図:筆者作成、作成日(最終修正日)2023年1月24日、筆者撮影。
・出典(写真):日野市郷土資料館編『日野用水開削450周年記念特別展~日野人が守り育てた緑と清流~』、日野市教育委員会、2018年。古代(6頁)、中世(10頁)、現代・広報ひの(41頁、44頁)
・出典(写真):日野市郷土資料館の所蔵写真の提供による、近代(昭和5年田植え風景)、現代(昭和30年代第一小学校南側から宝泉寺方面)。
・参考文献:日野市郷土資料館編『日野用水開削450周年記念特別展~日野人が守り育てた緑と清流~』、日野市教育委員会、2018年、6頁、10頁、15頁、20頁、33頁、34頁、41頁、44頁、45頁。 -
資料3 絵画から日野の風景・用水をさぐる(村絵図・風景絵画)
・図:筆者作成、作成日(最終修正日)2023年1月26日。
・-a. 村絵図
出典(写真)、撮影日2023年1月26日、筆者撮影、筆者加筆。
日野市郷土資料館編『日野用水開削450周年記念特別展~日野人が守り育てた緑と清流~』、日野市教育委員会、2018年、30頁。
参考文献:同上、同頁。日野の昭和史を綴る会編『日野市郷土資料館講座 村絵図を楽しむ1―三沢・程久保―』、日野市郷土資料館、2009年、1頁。
・-b. 郷土画家による田園風景の絵画
法政大学エコ地域デザイン研究所編『水の郷 日野 農ある風景の価値とその継承』、鹿島出版会、2018年、111‐112頁の絵画写真を参考にして筆者が模写した作品。
・筆者作品《みずとくらし・用水のある日野》。令和4年9月6日~11日に開催された日野市民文化祭(洋画展)筆者出展作品(油彩画・F10号)、撮影日2022年9月15日、筆者撮影。 -
資料4
図1.市内の用水路・全体図(図2の写真位置図)
・図:筆者作成、作成日(最終修正日)2023年1月10日。
・出典(地形地図)/国土地理院WEBサイト/https://maps.gsi.go.jp/help/intro/general/tetuduki.html/2022年8月6日閲覧/筆者加筆。
図2.水路景観デザイン分類図(シーン景観)
・図:筆者作成、作成日(最終修正日)2023年1月10日。
・筆者撮影、撮影日:①A(2020年8月16日)、①B(2022年4月16日)、①C(2022年10月20日)、①D(2020年10月20日)、①E(2022年4月6日)、①F(2022年10月16日)、①G左右(2022年7月20 日)、②A・B(2022年10月16日)、②C(2022年10月14日)、②D(2022年8月20日)、②E(2023年1月4日)、③A(2022年4月16日)、③B・C・D(2022年6月10日)、③E・F(2022年3月19日)、③G(2022年9月17日)。
・学校内は許可を得て入校(2022年3月19日開催の水辺のある風景50選ガイドツアー参加時に入校)。 -
資料5
図1.観る景観デザイン例(観光や水と緑の癒しのある空間)
-a. 日野用水(上堰)日野宿の町並みエリアの用水路
図:筆者作成、作成日(最終修正日)2023年1月25日、筆者撮影、撮影日2022年8月15日。日野市環境共生部緑と清流課聴き取り調査実施(実施日:2022年8月23日、記載内容了承・確認日2023年1月24日)。
-b. 向島用水親水路
図:筆者作成、作成日(最終修正日)2023年1月12日、筆者撮影、撮影日2022年8月16日、2023年1月4日(水門)。
図2.構えの景観デザイン例(自然と形態化した水門・堰など)
図:筆者作成、作成日(最終修正日)2023年1月12日、筆者撮影、撮影日2022年8月16日、2023年1月4日(水門)。 -
資料6 用水路の多面的価値(シナジー効果)
・図1、図2(図1:概要説明・表:春夏秋冬の生き物たち):筆者作成、作成日(最終修正日)2023年1月21日。
・図1.用水路の多面的価値(シナジー効果):図の写真(①②③④⑤⑥⑧⑨⑬)
①撮影日2022年8月3日、筆者撮影、②撮影日2022年6月12日、筆者撮影、③撮影日2022年10月22日、筆者撮影、④撮影日2022年6月10日、筆者撮影、⑤撮影日2022年8月3日、筆者撮影、⑥撮影日2022年3月19日、筆者撮影、⑧撮影日2022年10月30日、筆者撮影、日野市公式HP掲載の『水都・日野 みず・くらし・まち 水辺のある風景日野50選』のガイドブック(写真)は、日野市HP掲載のPDFファイルの取得(2022年7月30日閲覧・取得)、用水マップ(水の郷日野エコミュージアムマップ/日野用水エリアその一、その二、豊田用水エリア、向島用水エリア、平山・南平用水エリア・観光案内所で販売)、⑨左写真・筆者作品、筆者撮影、撮影日2022年9月15日、右写真・撮影日2022年9月11日、筆者撮影、⑬撮影日2022年4月26日、筆者撮影。
・図2.概要説明の参考文献など
・法政大学エコ地域デザイン研究所編『水の郷 日野 農ある風景の価値とその継承』、鹿島出版会、2018年、111頁。
・日野市郷土資料館編『日野用水開削450周年記念特別展~日野人が守り育てた緑と清流~』、日野市教育委員会、2018年、48‐50頁。
・日野市公民館だよりひのNo.168号(2021年7月31日)、日野市中央公民館発行。
・「第17回水と緑の日野・市民ネットワーク主催のシンポジウム」(2021年9月25日)の配布資料。
・現地踏査(向島親水路の水車小屋の説明看板)及び各種イベント参加による情報収集による。
・表:春夏秋冬の生き物たち
日野市郷土資料館編『日野用水開削450周年記念特別展~日野人が守り育てた緑と清
流~』、日野市教育委員会、2018年、47‐50頁、を参考にして筆者作成。 -
資料7
図1.多摩川水系(本流)の用水路(東京都内)
・図:筆者作成、作成日(最終修正日)2023年1月24日。以下のサイトを参考にして筆者作成。
東京都産業労働局WEBサイト(田んぼの生きもの調査)/https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/nourin/nougyou/hozen/tanbo/2022年7月15日閲覧。
図2.拡大イメージ図(日野市・国立市・府中市)
・図:筆者作成、作成日(最終修正日)2023年1月26日。
・表:多摩川本流より取水している日野用水と府中用水の比較
以下のサイトを参考にして筆者作成。
東京都産業労働局WEBサイト(田んぼの生きもの調査)/https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/nourin/nougyou/hozen/tanbo -
資料8
図1.府中用水(国立市域)のシーン景観
・現地踏査実施日 2022年7月8日。
・図:筆者作成、作成日(最終修正日)2022年10月19日、筆者撮影、撮影日 2022年7月8日。
出典(地図)/国土地理院WEBサイト/https://maps.gsi.go.jp/help/intro/general/tetuduki.html/2022年7月8日閲覧。
・さとの家は、国立市から派遣されたスタッフ2名が常時滞在し、農業体験の調整や屋内には農業関連のパネル展示がされて、年間を通した農業発信拠点として活動していた。近くには複数の体験農園あり。
図2.府中用水(府中市域)のシーン景観
・現地踏査実施日 2022年7月12日。
・図:筆者作成、作成日(最終修正日)2022年10月19日、筆者撮影、撮影日 2022年7月12日。
出典(地図)/国土地理院WEBサイト/https://maps.gsi.go.jp/help/intro/general/tetuduki.html/2022年7月13日閲覧。
・府中市内は用水路を地下に埋設したり、蓋をかけた暗渠水路が多く見られた。
・郷土の森博物館は、府中用水は使用していない。ポンプ汲み上げで水を取水している。園内には、昔の農家や町屋、歴史的な建物があり、田んぼや用水路・水車を復元し、田んぼでは体験田植えが行われている。
参考文献
註
(1)国土交通省WEBサイト/水の郷100選/https://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/mizusato/files/abt100sen.html/2022年8月20日閲覧。
(2)日野市郷土資料館編『日野用水開削450周年記念特別展~日野人が守り育てた緑と清流~』、日野市教育委員会、2018年、15頁。
(3)同著、41頁。広報ひの(昭和45年7月発行)の記事。
(4)同著、44‐45頁。以下抜粋。
・日野市清流保全条例(日野市公共水域の流水浄化に関する条例)の制定
昭和51年(1976)に制定し、用水の年間通水を始めた。各家庭には清流フィルターを配布し、家庭レベルでできる水質汚濁防止のための意識改革を図った。
・日野市清流保全条例の改正(日野市清流保全―湧水・地下水の回復と河川・用水の保全―に関する条例)
平成7年(1995)、国土庁(現・国土交通省)から「水の郷」に選ばれた日野市は、平成18年(2006)、貴重な水辺環境を維持・保全し、次世代に引き継ぐことを目的に、日野市清流保全条例(昭和51年制定)を全面改正した。改正ポイント ①市と市民による用水路の積極的な維持管理(用水守制度)、②自然と共生した親水空間の学習教育・生涯学習への活用、③浅川流域(2ヶ所)での「水辺の楽校」プロジェクトの推進。
(5)日野市では、水環境を次世代に伝えるため、市民の清掃・維持活動を支援するための「用水守制度」があり、日ごろ活動する範囲を決め、あらかじめ「用水守」として登録し、万一の事故に備えて賠償制度の対象となり、ボランティアで水辺維持の活動をしている。現在、個人・グループ・自治会・企業など約200名以上が「用水守」として活動している。(清流news Vol.130、日野市環境共生部緑と清流課、2022年7月1日発行、より)
(6)早川克美著『私たちのデザイン1 デザインへのまなざしー豊かに生きるための思考術』、藝術学舎、2014年、63頁。クラウス・クリッペンドルフは、ペンシルベニア大学のサイバネティクス、言語、文化研究領域の教授。デザインのための人間中心のアプローチを提唱。
(7)補足説明(現地踏査・用水マップ裏面説明より)
日野駅周辺には日野宿本陣などの江戸時代の歴史・文化遺産があり、日野宿再生整備計画によって用水路が開渠された。用水の幹線は地下を流れ、その上を流れている水路が見える二重構造(約150m)となり、護岸は魚巣ブロック(魚の棲家)が配置された空玉石積み(隙間を少し開けて玉石を積んだ方法)である。写真パネル展示は、まちかど写真館(市民グループ日野宿発見隊の活動)による昔の用水風景の写真が複数掲示されている。なお、変化点からさらに先にある未整備区間について、日野市環境共生部、緑と清流課に聴き取り調査を行なった。(内容は資料5.図1に記載)
(8)樋口忠彦著『景観の構造 ランドスケープとしての日本の空間』、技報堂出版、1991年、44頁。
(9)補足説明(現地踏査・用水マップ裏面説明より)
昔はコンクリート護岸の用水路だったが、平成4年(1992)に護岸は、空玉石積みや素掘りに変わり、木杭、遊歩道沿いの樹林、トンボ池(ワンド)、水車小屋を配置した親水路ができた。親水路始まりの変化点以降は水深約10~20cm。親水路の中程にあるトンボ池は、隣接している小学校の敷地内を利用している。
(10)法政大学エコ地域デザイン研究所編『水の郷 日野 農ある風景の価値とその継承』、鹿島出版会、2018年、134頁。
・国土交通省WEBサイト(水辺の楽校プロジェクト)/ https://www.mlit.go.jp/river/kankyo/main/kankyou/gakkou/2022年12月20日閲覧。
補足説明(上記参考書籍・該当サイトより)
国土交通省によって平成8年(1996)から開始され、地域の身近な河川を子どもたちの自然体験や学習の場として活用できるように自然の状態を極力残しつつ、必要に応じてアクセス施設や水辺に安全に近づける河川の整備を行なうことを目的とするプロジェクトである。向島用水の環境整備によって、潤徳小学校に向島用水の流水を引き込み、トンボ池は潤徳小学校の自然環境体験学習の場としてカリキュラムに組み込まれ、放課後に観察を行なっている。この自然と学校の空間が溶けあった事例によって、「水辺の楽校」というアイデアが生まれた場所である。(2021年3月現在、全国288箇所登録あり)
(11)補足説明(浅川の堰・向島用水親水路の現地踏査より)
浅川の堰(床止め)は老朽化と台風により損傷したため、治水工事(令和3年9月~令和4年3月)を実施し、工事後は向島用水親水路の水流・水量が安定し、水質が良くなり魚影も多く見られた。下流にある水車小屋の水車は常時回転していた。
(12)川添善行著・早川克美編『芸術教養シリーズ19 私たちのデザイン3 空間にこめられた意思をたどる』、藝術学舎、2014年、107‐109頁。
(13)「第17回水と緑の日野・市民ネットワーク主催のシンポジウム」(2021年9月25日開催)筆者参加時の配布資料「日野市の田んぼと用水の保全」によれば、全小学校17校のうち、校庭に田んぼあり8校、ビオトープあり15校、バケツ稲3校,地域の田んぼ借用1校がある。
(14)早川克美著『私たちのデザイン1 デザインへのまなざしー豊かに生きるための思考術』、藝術学舎、2014年、86‐87頁。
(15)中西紹一・早川克美編『私たちのデザイン2 時間のデザインー経験に埋め込まれた構造を読み解く』、藝術学舎、2014年、108頁。アメリカの心理学者ミハイ・チクセントミハイは、人が何かに集中している状況を「フロー状態」と呼び、本人がそうした状況にあるときには、機能的でパフォーマンスが高く、加えて幸福感を得られると指摘した。
(16)日野市公式ホームページ/令和3年度(2021年)とうけい日野データ/https://www.city.hino.lg.jp/shisei/profile/toukei/1004643.html/2022年8月21日閲覧。
(17)「第17回水と緑の日野・市民ネットワーク主催のシンポジウム」(2021年9月25日)筆者参加時の配布資料「日野市内の水田保全について 調査資料紹介」より。
(18)援農市民養成講座「日野市農の学校」
農業者の高齢化や後継者の不足、相続による田畑の減少などにたいして、市民が高度な援農活動ができるよう、農業知識や技術を習得する場である。年間を通して農業を学び、卒業生は援農ボランティアで、農家の畑で活躍する。(日野市公式ホームページより)
(19)「第17回水と緑の日野・市民ネットワーク主催のシンポジウム」(2021年9月25日)参加時の配布資料「日野市内の水田保全について 調査資料紹介」より。
(20)同上のシンポジウム参加時の配布資料「日野市の田んぼと用水の保全」より。
(21)日本ナショナル・トラスト協会WEBサイト/http://www.ntrust.or.jp/about_ntrust/about_ntrust2.html/2023年1月4日閲覧。日本のナショナル・トラストがはじまったのは、高度経済成長期まっただなかの鎌倉。現在では、全国50以上の地域で、それぞれの風土に根ざしたナショナル・トラストを展開している。活動分野も、土地や建物の取得をはじめ、普及啓発や環境教育、まちづくりなど、多岐にわたっている。(上記サイトより抜粋)
(22)『日野市まちづくりマスタープラン2019―2040』、日野市まちづくり部都市計画課、2019年4月改訂。広範囲にわたる施策をまちづくりの視点で盛り込んでいる。基本方針(1.日野の記憶と文化を伝えるまち 2.日野の暮らしの舞台を支えるまち 3.日野の人々が活発に活動するまち 4.まちづくりを支える仕組み)、分野別まちづくりの方針、施策の展開が記載されている。
参考文献・資料など
・芸術教養演習1、レポート課題「みずとくらし・日野の用水を次世代につなげるための評価と考察」、筆者作成。
・芸術教養演習1、景観編資料。
・芸術教養研究3、レポート課題。
・早川克美著『私たちのデザイン1 デザインへのまなざしー豊かに生きるための思考術』、藝術学舎、2014年。
・中西紹一・早川克美編『私たちのデザイン2 時間のデザインー経験に埋め込まれた構造を読み解く』、藝術学舎、2014年。
・川添善行著・早川克美編『芸術教養シリーズ19 私たちのデザイン3 空間にこめられた意思をたどる』、藝術学舎、2014年。
・樋口忠彦著『景観の構造 ランドスケープとしての日本の空間』、技報堂出版、1991年。
・日野市郷土資料館編『日野用水開削450周年記念特別展~日野人が守り育てた緑と清流~』、日野市教育委員会、2018年。
・日野用水450周年記念事業推進委員会編『日野用水開削450周年記念誌・日野の用水』、日野市環境共生部緑と清流課、2017年。
・法政大学大学院エコ地域デザイン研究所編『2006年度日野の用水路再生共同研究プロジェクト年度末報告書 水の郷・日野 用水路再生へのまなざし』、法政大学大学院エコ地域デザイン研究所、平成19年。
・法政大学エコ地域デザイン研究所編『水の郷 日野 農ある風景の価値とその継承』、鹿島出版会、2018年。
・日野の古文書を読む会(上野さだ子)編『古文書で読む 多摩川・浅川と日野 軌跡Ⅳ』、日野の古文書を読む会、2020年。
・「第17回水と緑の日野・市民ネットワーク主催のシンポジウム」(2021年9月25日)配布資料「日野市の田んぼと用水の保全」、「日野市内の水田保全について調査資料紹介」、「日野市の田んぼと用水の保全」。
・『日野市まちづくりマスタープラン2019―2040』、日野市まちづくり部都市計画課、2019年4月改訂。
・くにたち郷土文化館編『府中用水―移りゆく人と水とのかかわり―』、府中用水土地改良区公益財団法人くにたち文化・スポーツ振興財団、2013年。
・たましん歴史・美術館歴史資料室編『多摩のあゆみ』、たましん地域文化財団、令和元年5月15日(季刊)。
・水の郷日野エコミュージアムマップ(日野用水エリアその一・その二/向島用水エリア/豊田用水エリア/平山・南平用水エリア)。
・日野の昭和を綴る会編『日野市郷土資料館講座 村絵図を楽しむ1(改訂版)―三沢・程久保―』、日野市郷土資料館、2009年。
・日野市公民館だよりひのNo.168号(2021年7月31日)、日野市中央公民館発行。
・日野市HP掲載のPDF資料『水都・日野 みず・くらし・まち 水辺のある風景日野50選』、日野市、2014年2月28日。
・現地踏査、取材など
・日野市環境共生部 緑と清流課/日野用水の聴き取り調査。
・日野市郷土資料館/所蔵写真の提供。
・日野市新選組のふるさと歴史館/佐藤家の「挨拶目録」展示の拝観(撮影不可)。
・くにたち郷土文化館/府中用水資料の取得。
・国立市城山さとの家/市民の農体験活動の情報収集。
・府中市郷土の森博物館/府中用水(府中市域)の調査。
参考ウェブサイト
・日野市公式ホームページ/ https://www.city.hino.lg.jp
・国土交通省WEBサイト(水の郷100選)/https://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/mizusato/files/abt100sen.html
・国土交通省WEBサイト(水辺の楽校プロジェクト)/ https://www.mlit.go.jp/river/kankyo/main/kankyou/gakkou/
・国土地理院WEBサイト/https://maps.gsi.go.jp/help/intro/general/tetuduki.html
・東京都産業労働局WEBサイト(田んぼの生きもの調査)/https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/nourin/nougyou/hozen/tanbo
・日本ナショナル・トラスト協会WEBサイト/http://www.ntrust.or.jp/about_ntrust/about_ntrust2.html
・TANBONOWAのWEBサイト/https://tanbonowa.com/?mode=f1/田植え祭り・稲刈り祭りのイベント情報収集。