港町神戸と神戸布引ハーブ園の融合による景観的魅力

遠藤 育美

1.はじめに
近年は自然の猛威による豪雨災害が発生している。この神戸布引ハーブ園の場所も被災地だった。その場所は集中豪雨にて斜面崩壊後、神戸市政100周年を記念して整備され、世継山から南半分が「災害の教訓を生かした災害に強い公園造りと、豊かな自然環境を保全することが条件」¹ に設置され、日本最大級を誇る神戸布引ハーブ園が誕生した。その魅力の背景を考察する。

2.「基本データ」²
開園:1991年10月23日
所在地:兵庫県神戸市中央区北野町1−4−3
敷地面積:約 16ha
事業者:神戸市
管理人:指定者管理人
主な駅:新幹線新神戸駅・地下鉄新神戸駅
地理は瀬戸内海国立公園六甲地域に存在し六甲山・摩耶山・再度山の一連の世継山の山頂一帯にある。新神戸駅のすぐ北側に位置し、市街地の三宮や北野エリアに隣接している。(資料1)

「香りと色と味わいの世界を五感で実感できる舞台づくり」をコンセプトに暮らしに役立つハーブを中心とした、四季を通して旬の草花が彩るように空間構成・植栽計画されていて園内には、200 種 75,000 株のハーブが樹木ヤマザクラ、ヤブツバキ、クスノキ、リンデン、クチナシ、エゴノキ、クワ、コブシ、ヒノキ、ミカン、オリーブ、クロモジ、イチョウ、メタセコイア、ヤマボウシ、ローリエ、ウメ、オリーブ、ロウバイ等に囲まれて植栽され小鳥のさえずりも聞こえる。

ロープウェイは山麓駅・風の丘中間駅・山頂駅の3か所駅がある。全面ガラス張りの6人乗りゴンドラで、神戸の街並みや自然と調和する鮮やかなレッドだ。360度景色を見渡せ神戸の山々を望む大パノラマの景観眺望が楽しめるのである。車椅子に座った状態で乗車できる。

ロープウェイで山頂駅下車、中世ドイツの古城「ヴァルトブルク城」をモチーフにした展望プラザの建物の1階には、美智子上皇后陛下が水仙17本の花束を献花された、その花を加工し復興のシンボルとして保存している。(詳細は資料2右上を参照に)

ハーブ園は山の斜面に設置し、大きく4つのエリアにゾーニングし、展望エリア・ガーデンエリア・グラスハウスエリア・風の丘エリアから成る。(資料3)

それは、全12のテーマガーデン、ウェルカムガーデン・ローズシンフォニーガーデン・フレグラントガーデン・ハーブが植栽された見本園としての「ハーブミュージアム」・オシャレなキッチンガーデンを提案する「家庭菜園ポタジェ」・グラスハウス・ガーデンテラス・ラベンダー園・ヨーロッパの田舎の風景を取り入れ小屋を設置し工夫している「四季の庭」・オリエンタルガーデン・ユリ園・風の丘フラワー園などからなる。(資料4)

ハーブ園は山の景色を借景として標高400mから、神戸の街並みや神戸港を「見下ろす眺望」³ は絶景だ。夜景や初日の出の観光スポットだ。(資料5) 

3.歴史的背景
3-1六甲山の歴史
「六甲山系は約50~30万年前から花崗岩造山活動の結果として形成されたと言われ、土砂災害の歴史は古く、平均すると約30年に1回発生しているようである。」⁴「海と山に面した神戸には古くから人々が居住して、六甲山の森林の樹木や石材の利用、燃料材や肥料を確保するための伐採や戦乱や様々な人々の関わりの結果、荒廃に至った山である。」⁵ 明治初期「私は瀬戸内海の海上から六甲山の禿山を見てびっくりした。はじめは雪が積もっているのかと思った。」⁶ と植物学者牧野富太郎は記している。

3-2豪雨災害(資料6)
現在の布引ハーブ園一帯は、1967年7月9日の集中豪雨でゴルフ場が斜面崩壊を起こし、市ヶ原地区で21名の尊い生命が奪われた。(資料7)北半分は特別緑地保全地区に指定されている。「被害は西日本の24府県に及んだ。このため気象庁ではこの大雨を『昭和42年7月豪雨』と命名した。」⁷

3-3土地活用の検討
「1983年秋、若手の造園技術職員が熱心に『ハーブ園構想』を提案した。そのころの神戸市政策懇談会は、懸案事項に近い重要案件だけを議論するだけでなく、一般職員からの提案も市長・三役まで説明できる機会があった。」⁸「1984年9月ようやくハーブ園ではない総合公園として次の段階へ進もうとした。1985年市長からロープウェイ構想が発表された。新たな打開を模索して1986年若い女性スタッフを主力とするコンサルタントに構想案の提案を依頼した、コンサルタントはずばり『ハーブ園構想』を提案した。1988年2月「布引ハーブ園」「ロープウェイ」が記者発表される。」⁹

3-4ハーブ園植栽
「ハーブの初歩から、開聞山麓香料園園長の宮崎泰先生とハーブ研究家の指導を仰ぐ」¹⁰
「できるだけ地形に⼿を加えず、広場もコースをそのまま使った。」¹¹
宮崎泰先生に当時どのようなことを考慮されて植栽されたか伺う。
「ロープウェイが建設されるので、空中から見下ろして感動出来るような植栽配置。空中から見下ろすハーブ園は世界で初めてであることを十分に考慮すること。日本ではどこも真似ができないようにする。種子蒔きから生長、開花、種子採取といった過程も見られたら良いのではないか。種子を繋いでいくということもこれからのハーブ園の在り方の一つであると思う。また、広い面積に繁るハーブの香りが楽しめる。雨期の長い日本では乾燥地のハーブばかり集中植栽せず、レモングラスといった雨に強いハーブを利用する。布引は急傾斜地の利用であるため、雨水の流れをおさえるために、1段から4段に仕切り、流れをおさえるようにした。」¹² ハーブ園造成に情熱と野望・創案があったのである。

3-5開園後
「自然の中で育つ鳥を守ろう、と市動物愛護協会と神戸フラワーソサティーが、開園して間もない公園で、実のなる木の植樹や巣箱の取り付け、キジの放鳥をした。」¹³ 開園を待望していた。

4.事例のどんな点について積極的に評価しているのか
1983年秋、若手の造園技術職員が「ハーブ園構想」を提案した。1986年に「男女雇用機会均等法」¹⁴ 施行したばかりなのに、1986年若い女性スタッフを主力とするコンサルタントの提案を行政が受入れ英断したことは、高く評価したい。「ハーブショップオープン」¹⁵「朝日新聞記事データベース 聞蔵Ⅱ」¹⁶ において、「ハーブ」検索で1982年から1985年ハーブに関する記事が6件掲載されていた。おそらく、新鮮さゆえに提案したのではと推測する。したがって、2組の「ハーブ園構想」にて魅力あるハーブ園が新生したのである。

5.同様の事例と比較
「灘山緑地」¹⁷(詳細は資料8を参照に)(淡路島国営明石海峡公園)
灘山緑地は土砂採取にて自然を失い、ハーブ園の場所は豪雨災害にて自然を失い、尊い人命を失ったのである。それを単に比較することは至難である。だが、どちらも土地を放置せずに緑が復活し観光地として活性化していることは特筆に値する。灘山緑地は「失われた自然環境を回復させるため、『岩盤斜面地緑化』という特殊な工法を用いて『郷土の森』を再生」¹⁸

6.今後の展望
ハーブ園は開園から今年で30年になる。観光客を増やすためにも新たなステージに向けて、次世代の斬新な発想を取り入れることも必要かもしれない。例えば、ハーブ園の一角にアロマやエステサロンを設ける。観光客と一緒にハーブを使ったパンやクッキーなど出来るクッキングサロンを設ける等、「市街地の延長線上として三宮や北野エリアとの連携を図り国内外の旅行者を惹きつけるスポットとしてその価値をブランド化する。」¹⁹ そして魅力あるハーブ園を情報発信続けることが大事だ。

7.まとめ
ハーブ園はストレス社会において、非日常的な空間を味わうことが出来る。景観の魅力だけではなく、森林環境の中にいると、静けさの中に森の音を感じ、フィトチッドなどの香りやハーブの香り、小鳥のさえずりを聞き、自然界の音にふれ癒しを得る森林療法効果がある、このことからハーブ園はなくてはならない憩いの場所である。

8.謝辞
掲載を承諾下さいました、神戸布引ハーブ園・国土交通省六甲砂防事務所・国土地理院・明石海峡公園管理センター・開聞山麓香料園園長宮崎泰様に、ここに感謝の意を表します。

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  • 3_%e3%82%be%e3%83%bc%e3%83%8b%e3%83%b3%e3%82%b0%e5%9b%b3_page-0001 資料3
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参考文献

http://www.gakugei-pub.jp/kobe/g_kin/43hon.htm 神戸のみどり・その6『布引ハーブ園誕生異聞』(前半)元神戸市建設局公園砂防部長小森正幹 2021.1.21閲覧日 註1・註8
http://www.gakugei-pub.jp/kobe/g_kin/44hon.htm#N0003 神戸のみどり・その7『布引ハーブ園誕生異聞』(後半)元神戸市建設局公園砂防部長小森正幹 2021.1.21閲覧日 註9・註10
https://www.kobeherb.com/ 神戸布引ハーブ園/ロープウェイ 2021.1.10閲覧日 註2
http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0945pdf/ks094507.pdf/ 1. 公園緑地における眺望景観とは(3)-2 高所から見下ろす眺望(俯瞰景)国土技術政策総合研究所 研究資料 2021.1.22閲覧日 註3
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sabo/63/4/63_51/_pdf/-char/ja 沖村孝「都市化の進行と土砂災害-神戸・六甲山系の歴史」『砂防学会誌』63号(2010)4号P51-58砂防学講座「日本の国土の変遷と災害」2021.1.24閲覧日 註4
https://www.city.kobe.lg.jp/documents/1078/senryaku-no1.pdf 第1章 六甲山の歴史と現状 神戸市 2021.1.23閲覧日 註5
牧野富太郎『牧野富太郎選集1』株式会社東京美術 昭和56年7月25日新装第2印発行 東京への初旅P27 註6
http://www.dpri.kyoto-u.ac.jp/nenpo/no11/11b0/a11b0p04.pdf 昭和42年7月豪雨の特性について 中島暢太郎・後町幸雄 2021.1.23閲覧日 註7
https://www.kobe-np.co.jp/rentoku/rokkougouu/201804/0011154015.shtml 神戸新聞NEXT特集昭和42年7月豪雨から50年被災地を歩く(上)襲われたまちの弱点 2021.1.24閲覧日 註11
開聞山麓香料園園長宮崎泰様へ電子メールにて「当時のハーブ園植栽意向」を伺う 註12
https://database.asahi.com/ 朝日新聞記事データベース聞蔵Ⅱ 2021.1.21 閲覧日 註13
1991年11月13日 兵庫 朝刊 「自然を大切に」動物愛護協会が植樹やキジ放鳥 神戸・布引公園 
http://www.arsvi.com/d/e07.htm/ 男女雇用機会均等法 2021.1.18閲覧日 註14
http://www.charis-herb.com/about_charis.html カリス成城 2021.1.21閲覧日 註15
https://database.asahi.com/ 朝日新聞記事データベース聞蔵Ⅱ 2021.1.21閲覧日 註16
1982年2月2日 東京 朝刊 15頁 春を告げる 季節の新園芸 
1985年2月6日 東京 夕刊 3頁 西洋漢方ハーブ大もて
1985年3月12日 東京 朝刊 12頁 女のインデックス ハーブ
1985年5月23日 東京 朝刊 3頁 ハーブティー新製品
1985年10月10日 東京 朝刊 14頁 浸透する新しい香り
1985年12月6日 東京 朝刊 13頁 ハーブを使った料理法 使いすぎず 楽しみながら料理
https://awaji-kaikyopark.jp/rekishi/ 淡路島国営明石海峡公園 2021.1.15閲覧日 註17
https://www.mlit.go.jp/common/001134960.pdf 国土交通省 事例集 ②環境維持・改善効果 30頁 2021.1.23閲覧日 註18
https://www.city.kobe.lg.jp/documents/17592/rokkosan-granddesign-all.pdf 六甲山グランドデザイン 神戸市経済観光局観光MICE部 観光企画課 六甲山再生委員会 P2 布引ゾーン 日本三大神滝に出会う「ナショナルパークへのエントランス」2021.1.23閲覧日 註19

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