野村朋弘 (准教授:主任)2020年3月卒業時の講評

年月 2020年3月
卒業が認定された133名の皆様、おめでとうございます。心より言祝ぎ申し上げます。
今期は折りしも新型コロナウィルス感染症「COVID-19」の国内感染が拡大していることを踏まえて残念ながら卒業式が8月に延期となりました。
とはいえ、3月で皆さんは晴れて卒業されます。めでたいこと、この上ないことです。
世情不穏のため、何かと自粛傾向がありますが、それはそれ。めでたいことは、めでたいこととしてお祝いして下さい。

それで芸術教養学科では、卒業研究レポートが課されています。地域の文化資産について評価しまとめるというものです。
他学科の研究論文や制作物と同じく重要なもので、文字数3200字という限定された中で創意工夫されていたのが読み取れました。
毎年のことですが地域も題材も様々であり大変興味深く、私自身学ぶひとも多かったです。ありがとうございました。
私が担当したのは、専門領域である伝統文化などに関わるものを主としています。

これまた毎回お話していることですが、単に伝統・文化の歴史をなぞるだけでは、本学科の学びの集大成とはいえません。また、一人の作家、作品にスポットをあてて美術史的な観点で考察するだけでも、本学科の学びとしては片手落ちといえます。
地域に遺されている意味や、如何にして遺していくのかを考えることが重要なポイントといえましょう。いまを生きる我々にとっての特定の文化資産を取り上げ、過去を鑑み、未来を考える。その双方の視点・考察が必要です。

文化資産のどのような点を評価するのか。「問い」を立てるといってもいいと思いますが、そうした視点の立て方には、これまでの学修で培った「まなざし」が込められていると思います。
今回私が担当した研究レポートでは、芸術教養学科の学びとしてお手本のようなものもあり、大変うれしく思いました。卒業生の皆さんは、ぜひ、まなざしや思考を大切にしていって下さい。

ただ気になった点がないわけではありません。
それは二つあります。まず一つ目は、比較考察がなされていないものが幾つか散見されました。これは毎年講評でも書いていることです。比較することは、主たる対象の文化資産を考察するために必要不可欠です。比較対象は単に紹介すればよいということでありません。有機的に考察しなければなりません。
二つ目は注です。伝統・文化系の卒業研究レポートでは詳細な注を付けているものが多くありました。それは適切であり、学術的な考察としては必要なことです。
反面、考察の根拠として出典を明記するものではなく、単に本文には収まらないので注に出したと読めるようなものもありました。課題では本文を3200字程度としています。つまりは、創意工夫をして3200字程度に収めることが求められています。限られた中で、適切に語ることが求められているのです。長く書けばいいというものではありません。
些か厳しいことを書いてしまいましたが、読ませて頂いたレポートは、それぞれに秀でた点がありました。気になった点はそれぞれ個別の講評で指摘させて頂きました。参考として下さい。

さて、このweb卒業研究展のトップページにある日本地図もポイント表示でどんどんと見えなくなってきました。素晴らしいことです。
学ぶことは大学卒業で終わりではありません。本学科を卒業されたあとも、新たな「知」との出会いを愉しんで下さい。そして偶にはキャンパスに遊びにきて下さいね。
卒業生の皆さんのこれからのご活躍を祈念しております。