加藤 志織(准教授)2020年9月卒業時の講評

年月 2020年10月
こんにちは。卒業研究レポートの採点・講評を担当している教員の加藤志織です。学生の皆さん、卒業研究の作成お疲れ様でした。今回も非常に興味深い事例を取り上げて熱心に調査・分析してくださいました。
私がこの度採点にかかわった卒研は、地域の芸術イベント・郷土玩具・地域に受け継がれる宗教的な祈念像、民間説話の収集など、そのジャンルは多岐にわたっていましたが、だいたい本学科の課題の趣旨に沿った題材の選択と調査がおこなわれていました。特に、コロナ禍のなかにもかかわらず丁寧に取り上げた事例を調査した論考が多く感銘を受けました。引用註の付け方など適切な論文作法に従って書かれたレポートが多かったことも印象に残りました。
このように真摯な態度で事例の調査に取り組んだ力作ぞろいでしたが、論の構成や文章力などにおいてもう一歩のものが多く、首尾一貫した論述という点でやや問題のあるレポートが目立ったことについては少々残念でした。また、取り上げた事例について実地調査をおこなう、先行研究等を調べることは当然しなければなりませんが、より重要なのはそうして得た情報等について客観的にみずから検証し、その上で独自の視点に立った考察をすることです。
とりわけ「国内外の他の同様の事例と比較して何が特筆されるのか」という観点からの分析が重要です。何を比較するための事例として取り上げるのか、その妥当性と理由に若干疑問を感じるレポートがいくつかありました。これらの部分が卒研レポートにおいて核になります。比較事例の選択は適当であったのか、あらためて見直していただければ幸いです。
これまでの学修は決して楽ではなかったと思います。苦しいなかで身につけていただいた知識や考察力は皆さんの糧となり今後の人生を豊かに過ごすための力となってくれるでしょう。そうした知識や考察力をぜひ社会で活かしてください!皆さんの今後のご活躍を願っています。