加藤 志織(准教授)2021年3月卒業時の講評

年月 2021年3月
学生のみなさん、こんにちは。卒業研究の採点・講評を担当しています教員の加藤志織です。まずは卒業研究の作成と提出お疲れ様です。今年度は新型コロナウイルス感染症の流行により学業にもさまざまな影響があったかと思います。多大なる困難のなかで卒業研究を仕上げられたことは称賛に値します。心より敬意を表します。それでは2020年度冬期に私が採点および講評を担当した卒業研究に関する総評をお伝えします。すでにお渡ししている個別の講評と共に今後の学習にお役立ていただければ幸いです。
今回も、皆さんそれぞれに興味深い事例を探してくださり、その文化資産としての価値について論じてくださいました。取り上げた事例に対する皆さんの熱い思いを感じることができました。この点においてはどの卒研も等しく素晴らしいと言えます。それでは卒研に盛り込むべき5つの項目の中から、1.基本データと歴史的背景、2.事例ついて積極的に評価できること、3.国内外の他の同様の事例と比較して特筆されること、4.今後の展望、について全体的な所感を述べさせていただきます。

1.基本データと歴史的背景
こちらについてはどの卒研も適切に記述されていました。ただ、歴史的な背景にかんする記述量が必要以上に多い卒研がいくつかありました。課題で求められていることは、事例を文化資産としてオリジナルな観点から評価することであって、事例の沿革等についてまとめることではないことに注意しましょう。

2.事例のどんな点について積極的に評価しているのか
この点を明確にしていただくことが大切ですが、不明確な記述の卒研が複数ありました。また、評価観点を複数挙げていただくこと自体はかまいませんが、卒研に許された紙幅は僅かです。したがって、その中の最も注目される評価観点を1つ選んで、それを集中的に論じていただくことが大事です。提出された卒研の中には、評価観点を挙げただけのようなものもありました。言うまでもありませんが、評価観点を示すと同時に、それを調査・分析し、具体的かつ客観的に詳しく説明していただく必要があります。

3.国内外の他の同様の事例と比較して何が特筆されるのか
多くの卒研において比較はおこなわれていましたが、適切な比較がなされていないものが多くありました。比較する対象は妥当なもの(効果的な比較をするためには最も相応しいもの)でなければなりません。なぜ、それと比較するのか、その理由も示してください。比べる対象として相応しいものを選ばないと恣意的な比較になってしまいます。

4.今後の展望について
事例の展望について、さまざまな可能性や提案がなされますが、机上の空論を記述しても意味がありません。ある程度の実現性や効果等が期待できることを、その根拠と共に示すことが必要です。

最後に論文作法についても述べておきます。参考文献一覧、註、資料(図など)を付けましょう。とく参考書籍等を参照して書いたレポート部分には引用註を付けて必ず典拠を明示する必要があります。資料(図など)には番号とキャプションを付けると共に、レポート本文中にも、例えば「(図1)」のように表記してください。図や資料と本文との関係が適切に示されず、何に関する説明なのか不明確な添付資料がいくつもありました。また、資料(図など)や本文を補足するための註は必要最小限にしましょう。そもそも、レポートは本文だけを読んで内容を理解できるように書くことが基本です。もちろん、適宜、本文を補足するための資料や註を付けていただくことになりますが、必要なものだけにしましょう。
卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます!今後のご活躍を願っています。