早川 克美(准教授:学科長)2017年3月卒業時の講評

年月 2017年3月
みなさん、ごきげんよう。卒業研究のレポートの作成、おつかれさまでした。

そして、提出された96名全員の方が合格され、卒業されます。おめでとうございます。

卒業研究は、みなさんの芸術教養学科で学んだこれまでの学習の成果です。それぞれの方の視点が実に様々で、読み応えのあるレポートばかりでした。

特に、芸術教養演習からテーマを継続されて、その時指摘された部分を修正され、さらに調査、考察を深められたレポートは、学習の集大成にふさわしい内容となっていました。キトラ古墳、無鄰菴、三渓園についてのレポートは特にその成果が表れ、優れていました。

レポートの評価が分かれたのはご自身の問題意識と対象への評価軸が明示されているかという点です。せっかく丁寧に調べられたのに、調べたことのまとめで終わってしまっている方も少なからずいらっしゃいました。評価が高かったレポートは、二次情報に頼らず、ご自身が直接現地で調査をされたり、適切な比較対照を試みたり、また評価手法および評価軸を明確に定義されていました。海の中道海浜公園についてのレポートは参考文献を根拠として、評価軸を明らかに設定しているところが優れていました。芸術教養演習の授業でもお話しましたが、まず、調べた多くの情報から、「何を取捨するのか」という「問題定義=切り口」を示すことが肝心です。次に、その切り取られた情報をどのような「構造」で考察するのかを検討し、最後にその構造をどのような「語り口=手法・方法」で伝えるかという点に留意して書くことが重要です。また、多くの方が、選ばれた対象への一定の距離をおいた客観的な考察には成功されていますが、批判的、反省的なまなざしで捉えていなかったことが気になりました。一見、うまくいっているように見える事象に問題はないのか?どのような課題をクリアして今日があるのか、そんな視点も加味されると、一層深い考察になったと思います。

いろいろと書いてしまいましたが、卒業生となられたみなさん、本当におつかれさまでした。みなさんが得られた学びはゆっくりと時間をかけてみなさんの中で熟成されて、様々な場面でみなさんを助けてくれることでしょう。一緒に学んだこの月日はみなさんの勝ち取られた財産です。これからのみなさんのご活躍を祈っております。