上村 博(教授)2018年9月卒業時の講評

年月 2018年10月
卒業研究レポートの作成お疲れさまでした。私の担当するレポートは例年食文化を扱ったものが多く、今年も京都の和菓子に精進料理、愛知の味噌、横浜のバンメンと、それぞれ特色のある地域の食をとりあげたものがありました。またそれ以外にも、愛知県佐久島のアートによる島おこしや沖縄の文身を扱ったものがありました。

ほとんどのレポートに共通して評価できたのは、実地の調査を踏まえた具体性のあるものだという点です。現実は情報の宝庫です。語られたこと、記されたことはそのごく一部に過ぎません。参考文献はもちろん貴重です。しかしそれは現実に含まれる膨大なデータにこれまで他人がどう向き合ってきたのかをしるためのもので、自分の作業はそのあとにはじまります。

わずか3200字のレポートです。事例について書物やネットで他人の書いたものを調べてアレンジするだけでも分量を満たしてしまいます。また反対に、独りよがりの思いつきや主義主張を振りかざすだけでも、あっという間に字数を費やしてしまいます。しかしそんなものは、自分の日記でも書いておけばよいです。大学のレポートとして書く必要はありません。

現実に接して事例の持つ意味を把握し、自分の頭脳で客観的に考察をしたことこそ、他人に伝える意味があります。

その点で、読み応えのあるレポートが多かったことは実に良かったと思います。