加藤 志織(准教授)2016年10月卒業時の講評

年月 2016年10月
秋卒業のみなさん、おめでとうございます。芸術教養学科の教員、加藤志織です。今回の卒業研究も、みなさん非常にユニークな題材を選択し、独創的な分析をしてくださいました。

私が評価を担当したのは、大別すると美術館、公園、美術についての調査報告でした。どれも非常に興味深い事例を取り上げ意欲的な調査と考察がなされており読み応えがありました。個別の講評はそれぞれの学生さんにすでにお伝えしてありますので、この場では複数の卒業研究を拝見して気がついたことを述べておきます。

まずは調査対象として取り上げる文化資産の選択について述べておきます。特定地域でのデザイン・芸術活動であれば何を選んでいただいても基本的にはかまいませんが、3200字という少ない文字数でも論じることができるものを選んでいただく必要があります。あるいは3200字で分析できるような論点の設定が必須です。論証には、具体例の提示、先行研究の検証、独自の調査等も要求されます。

論証の仕方にも工夫が求められます。たとえば美術(作品)を選んだ場合、その分析に専門的な用語・方法論を用いないと客観的な議論が成立しません。これは美術だけではなく、公園などの空間造形や、美術館などの展示についてもあてはまります。したがって、卒業研究の対象として選んだ事例にかんする先行研究をまずは複数読み、客観的な分析に必要な方法論を学んでください。

レポートの体裁についても述べておきます。本科目で制作していただく文化資産評価報告書は、客観的な考察なので、註が必要です。また、当然ですが図版には番号等をつけ、報告書の本文も(図1)のように表記してください。報告書を作成する際に読んだ資料や文献等についても、適宜、本文に註をつけ、さらに参考文献としてまとめてください。

最後にお願いがあります。学習は続けることに意味があります。今回の報告書で取り上げられた事例についても、ぜひ継続して調査してください。もちろん、あらたに別のものを選んでいただいてもかまいません。今後、みなさんが本学で身につけた教養を活かして活躍されることを願っております!