2025年9月

正井 舞子

墨絵の表現

■序 本稿では水墨画、筆墨、文人画、院体画、唐絵大和絵、禅画など様々な呼び方、名称、概念を持つ絵画表現技法を墨を用いた絵と云う意味で「墨絵」と統一する。 これら...

岡村 英樹

地域寺院に息づく記録文化ー長徳寺「寒松日暦」とキリシタン救出劇をめぐる物語性について

1. 基本データと歴史的背景 1.1. 寒松日暦(かんしょうにちれき)と龍派禅珠(りゅうはぜんしゅ) 「寒松日暦」は、臨済宗建長寺派の長徳寺(埼玉県川口市)住持で...

宮前 浩

町中が役者「小鹿野歌舞伎」 歴史が辿った道のり

1 基本データと歴史的背景 昔から秩父へ通ずる主要道は「秩父往還」と総称され様々な人々の行き来があったため文化交流も盛んであった。「江戸の文化の吹きだまり」な...

土屋 健二

ヴェズレー、サント・マリー・マドレーヌ聖堂の柱頭彫刻が語るもの

1.はじめに フランス中部ブルゴーニュ地方のヴェズレーは、周辺を緑に囲まれた小高い丘の上の聖堂(サント・マリー・マドレーヌ聖堂、以下「ヴェズレーの聖堂」と呼ぶ...

江口 空

制度設計が支える持続可能な芸術祭: バンクーバー・ミューラル・フェスティバルの実践から

はじめに 現代の都市において、アートは美術館を飛び出し、地域活性化を担う役割を持つ。しかし、日本の芸術祭の多くが単発的な「イベント主義」に陥り、持続可能性の課...

古沢 成聖

異日常の内省空間──「アートリトリート」に見る都市型リトリートの文化資産的価値

はじめに 現代社会では、情報過多と社会の高速化により、個人が静かに自己と向き合う時間を確保することが困難になっている。SNSやリモートワークの普及により、私的空間...

森 誉光

住宅密集地のアール・ブリュット ~アーティストとお母ちゃん~

1.はじめに 大阪市阿倍野区共立通は、古くからの住宅密集地である。その細い路地を進むと、カラフルな「Art」の看板がある教室や開放的なカフェがあり、掲示板には芸術関...

浅岡 智美

石川丈山:デザイン嗜好とデザイン思考 ~詩仙堂の四畳半~

【第1章 基本データと歴史的背景】 江戸初期の文人石川丈山(1583~1672)は、徳川家康(1543~1616)の近習として仕え、武士道と禅の対なる精神を持つ人物である。漢詩...

石井 弘

東京芸術大学の新旧奏楽堂にみる音響空間のデザインと、音楽史上の演奏形態の変遷を考察する

1.新旧奏楽堂の基本データ 旧奏楽堂 東京芸術大学音楽学部の前身、東京音楽学校の施設として明治23年に建築された。 日本における音楽教育の中心的な役割を担ってき...

櫻井 裕之

成城:洗練と安らぎが織りなす街の魅力

はじめに 東京都世田谷区に位置する成城は、都内有数の高級住宅地として知られている。「せたがや百景」にも選ばれた美しいイチョウ並木や桜並木、そして生垣や豊かな...