まちの実験広場「HELLO GARDEN」

馬場 一誠

1、はじめに
千葉市の西千葉エリアに「HELLO GARDEN」はある。すべて屋外で、屋根も壁もなく、半分は椅子やテーブルなどが置かれたフリースペースで、残りは農園だ。普段は、まちの人が読書やおしゃべりなどに自由に利用し、週2日はコーヒーや軽食などの販売がある。土日には、自らの企画運営や他の団体に無料で貸し出したイベントも行われる。昨年10周年を迎えた。

2、基本データ
名称:HELLO GARDEN
所在地:千葉県千葉市稲毛区緑町1-18-8
広さ:367㎡
所有、運営者:株式会社マイキー[1]
開業:2014年4月1日
活動内容:
a イベントなどへのスペース提供(無料)、イベントの企画相談、イベントの訴求
(添付ファイル④)
b 主催イベント実施
① SUNDAY MARCHE(原則月1回)[2]
② HELLO TABLE(原則月1回)[3]
③ HELLO MARKET(原則月2回 2024年3月末をもって終了)[4]
④ その他 (夏祭り、文化祭、KIOSKなど)[5]
スタッフ:3名(マイキー社員2名、アルバイト1名)、その他ボランティア活動の人多数

3、設立の背景と経緯
株式会社マイキーは、地域活性プロジェクトに取り組む企画運営会社として2013年に設立された。「私たち自身も生活者の一人として、ホームタウン(作成者註 西千葉)で自らの暮らしを思考・実験し続け、そこで得たものをすべてのプロジェクトに活かしていきます。」[6]という考えのもと、Hometown projectsと銘打って4つの企画を立ち上げた。それが、HELLO GARDEN、西千葉工作室[7]、子ども創造室[8]、トンネル図書館[9]だ。HELLO GARDENは、空き地を購入して、「カフェでも、公園でも、公民館でもない、どんな人にも開かれた『新しい暮らしの実験広場』」です[10]と謳って2014年に始まる。

4.評価ポイント
HELLO GARDENは、「自由な場」を提供して地域の人たちに自主的な活動を促す。コミュニティそのものをつくることには否定的である。HELLO GARDEN代表の西山は、「コミュニティには自分の共感できるものがあるいっぽうで、逆に好まないものもあり得るので、〔中略〕『この人はコミュニティの内だけど、この人は外だよね』みたいなラインが見える感じではなく、もっとゆるやかな関係性というか、もう少し大きな土壌を耕すような感覚でやっています」[11]と述べている。その「自由な場」の醸成という考えは、フェンスも出入り口も無くどこからでも入ってこられるフリースペースという見た目に現れている。椅子やテーブルは固定せず常に置いたままで、防犯カメラもない。
「HELLO GARDEN」の役割は3つある。①憩う、遊ぶ、商う、表現するなどといった様々なふるまいを受け入れるプラットフォーム、②「やってみたい!」を実現するために背中を押したり、ノウハウを伝授したり、共に考えたりしながら人に寄り添うサポート、③人に新しい価値観を提案したり問いを投げかけたりすることで、暮らしを考えるきっかけを提供するメディアだ [12] 。スペースの貸し出しにも「自由な場」という考えは貫かれている。会場使用の申請書には、商品・サービスの告知や勧誘を目的としたものは利用を断る場合もあると書かれているが、いままで断ったことはない。まちの人たちが自分自身で楽しみを見つけて自分たちの手でよりよいものに変えていって欲しいという理念に基づいて、人やモノの管理も含めて「できるだけ何もしない」のがHELLO GARDENの運営だ。
その応援のため、前述のように自らもいくつかの主催イベントを実施して、個人事業主や地域住民の結びつきを促し、自発的な市民活動が生まれるきっかけづくりを促す。また、地域住民の信頼も高く、隣接する緑町公園の管理も任されている。これは、緑町⼀丁⽬⾃治会、みどり⼦ども会と共に緑町公園管理運営委員会をつくり、千葉市のパークマネジメント[13]の仕組みで実現している。これによって、HELLO GARDENと緑町公園は一体となったスペース活用が可能になっている。

5、他の事例と比較して特筆されるべき点
東京・森下の「喫茶ランドリー」[14]は、『まちに暮らすあまねく人々が来る「私設公民館」』を目指して、株式会社グランドレベル[15]が2018年につくった。店名どおりコインランドリーを置き、ミシン、アイロンなどもある家事室、イベントスペースを備えている喫茶店だ。
喫茶ランドリーとHELLO GARDENの共通点は、共に地域の人たちが「公」を意識して自主的に自分たちの生活を良くしようと考えるきっかけをつくろうとしていることである。それを喫茶ランドリーは「私設公民館」、HELLO GARDENは「実験広場」と呼ぶ。両者はともに比較的新しい住宅地の中にあり、その地で生まれ育った人は多くない。人々の伝統的な結びつきは弱く、関係を新たに構築しなければ孤立しやすい環境だ。日本人は公共的なものは自治体など公的機関から与えられるものだという意識が強い。しかし、私設図書館のネットワーク「みんとしょ」[17]など自分たちの生活は自分たちでつくり守るという考えが徐々に広がっている。喫茶ランドリーもHELLO GARDENもその点では同じ方向を向いている。
しかし、相違点もあり、具体的な活動方針はかなり異なる。喫茶ランドリーは、空間もサービスもあまり作りこまずにさまざまな隙を残しているように見える。そして「補助線のデザイン」と呼ぶ適度な働きかけだけをする。補助線で方向性、基本ルールを示し、その補助線に則って能動的に動くことで、来店客は自分たちで考え、スタッフと一緒になって居心地よく過ごせる場をつくりあげていく。しかし代表の田中は「本当の余白は、作り込まれた結果だ」[16]と言う。考え抜かれた仕掛けなのだ。また、喫茶ランドリーはグランドレベルの一事業であり、企画段階では詳細に計画を立てるが、店を立ち上げた後は一気に進める。店内活動は利用者のアイデアに委ねる部分も大きいが、補助線があるので店舗ごとのぶれは少ない。2024年末の段階で直営は3店舗、事業者が異なる同じコンセプトの店は6店舗と着実に事業を拡大させている。
一方のHELLO GARDENは、屋根も壁もない広場なので、見た目でも「自由な場」をイメージさせる。実際に、何も制約がなく、意図的に導くものは何もない。また、主催イベントにもその考えは現れており、イベントに「完成」はない。まちの実験広場として実験的な活動を重視しているので、企画が成功したから継続するという考えもない。事業の成功という視点が無いのだ。2023年に実施した「ふふふ文化祭」[18]も自ら成功だと評価しているが、翌年は実施していない。成功したら次を考えるのが「実験広場」の考え方だ。

6、今後の展望
結果を急がないHELLO GARDENの活動は、設立後10年を経て、徐々に実を結び始めている。「みどりまち盆踊り」のように、HELLO GARDENが共同主催し実質的に運営しているイベントは、地域住民も外部からの参加者も増え、年々拡大し充実している。しかし、HALLO GARDENの成果としてより重要なのは、ここを利用し楽しもうとする人たちが増えていることだ。たとえば「学生団体おりがみ」[19]が実施している「あおぞら図書園」は、設立当初からここを中心に活動し、集大成イベントとして昨年11月に「本ふぇす」[20]を開催した。それは、HALLO GARDENと緑町公園で2日間かけて行われ、HELLO GARDENは会場提供以外にもイベント告知などで協力したが、企画運営の主体は学生たちだ。「あおぞら図書園」の佐々木美緒さん(千葉大4年)は、次のように語る。「HELLO GARDENは西千葉の情報のハブであり、企画の相談にも気軽にのってくれて頼りになる存在。さらに利用者同士の交流の場をもうけてくれると今後の活動のヒントになるのでうれしい」。
HELLO GARDENは現在でもハブの機能を十分に発揮している。そこでさらに、多対多コミュニケーションのサポートが実現できれば、利用者の自立性はより高まり、新しい実験のアイデアが広がるのではないだろうか。ここは、マイキーにとってもまちの人たちにとっても、永遠に「実験広場」である。時代のニーズが変化していくなかでさらに多様な実験の必要性は増えていくだろう。実験にゴールはない。

  • 81191_011_32283002_1_1_全景写真 ①HELLO GARDEN 全景写真(2024年12月23日筆者撮影)
  • 354442_1 ②HELLO GARDEN 周辺地図_差し替え版
    https://www.google.co.jp/maps/place/HELLO+GARDEN/@35.6238988,140.0987733,683m/data=!3m1!1e3!4m6!3m5!1s0x60228362eaca617f:0x355cf76c5579c4d4!8m2!3d35.6244524!4d140.0996569!16s%2Fg%2F11dfk1fdq5?entry=ttu&g_ep=EgoyMDI1MDIyNS4wIKXMDSoASAFQAw%3D%3D
    Google Map,2025年2月28日閲覧
  • 81191_011_32283002_1_3_見取り図 ③HELLO GARDEN 見取り図(筆者作成)
  • 81191_011_32283002_1_4_2023.04.02~2024.06.30?イベント・ワークショップ?覧_page-0001
  • 81191_011_32283002_1_4_2023.04.02~2024.06.30?イベント・ワークショップ?覧_page-0002 ④2023.04.02~2024.06.30 イベント・ワークショップ⼀覧(HELLO GARDEN 作成)
  • 示看板写真など_page-0001 ⑤各種表示看板写真など(2024年11~12月筆者撮影)

参考文献

【註】
[1]地域やそこにある人々の暮らしをよりよくするプロジェクトをデザイン・実践する、シンク&ドゥ タンク(Think and Do Tank)。
事業内容:①地域活性化に関する調査・研究 
②地域活性化に関するプロジェクトのプロデュース・コンサルティング 
③地域活動の発掘・育成・協力 
④コンテンツ開発・実施 
⑤アートディレクション、クリエイティブ制作業務 
⑥スペースや店舗の企画・運営 
⑦人材育成・教育事業 
⑧広報・PRにおけるパートナー業務
 株式会社マイキーHP https://mikey-inc.jp/  2024年12月27日閲覧

[2] 千葉県内のヒト・コト・モノをHELLO GARDENの視点でキュレーションして届けるマルシェ
HELLO GARDEN HP 「SUNDAY MARCHE」ってなぁに?
https://hellogarden.jp/hello-letter/sunday-marche/sunday-marche/ 2024年12月27日閲覧

[3] みんなで持ち寄った食材や遊びで、ゆるゆる楽しい週末を過ごすアウトドアイベント
HELLO GARDEN HP 「HELLO TABLE」ってなあに?
https://hellogarden.jp/hello-letter/hello-table/info-5/ 2024年12月27日閲覧

[4] 「自分なりの仕事を自分でつくるチャレンジ」を応援する、月に2回の小さなマーケット
「SUNDAY MARCHE」の中に含まれる形で2024年3月末で終了
HELLO GARDEN HP 「HELLO MARKET」
https://hellogarden.jp/hello-market/ 2024年12月27日閲覧

[5]
・みどりまち盆踊り 
緑町で70年以上続く、歴史ある盆踊り。
日程:毎年7月の土日(2日間開催)
時間:夕方〜夜
場所:緑町公園・ZOZOの広場・HELLO GARDEN
入場:無料
主催:緑町1丁目自治会・緑町公園管理運営委員会
HELLO GARDEN HP 「みどりまち盆踊り」ってなぁに?
https://hellogarden.jp/hello-letter/midorimachi-bonodori/bonodori/?doing_wp_cron=1735293033.7767419815063476562500
2024年12月27日閲覧

・ふふふ文化祭
おもわず「ふふふ」と笑みがこぼれる文化祭
HELLO GARDEN HP 「ふふふ文化祭」ってなぁに?
https://hellogarden.jp/hello-letter/fufufu-bunkasai/fufufu-bunkasai/
2024年12月27日閲覧

・kiosk
金・土曜日の11:00-17:00だけ現れる飲食販売屋台。コーヒーやジュースなどの飲料や駄菓子を販売している。裏の実験農園で収穫したハーブなどを販売することもある。

・めぐる本棚
読まなくなった本を次の誰かへバトンタッチするための本棚。いらない本を持ち寄って本棚にいれ、気に入った本があれば持ち帰ることができる。利用可能時間は24時間/年中無休
HELLO GARDEN HP 「めぐる本棚」ってなぁに?
https://hellogarden.jp/hello-letter/megurubook/info-2/ 2024年12月27日閲覧
2024年12月27日閲覧

・ご自由にどうぞ
誰かの元で不要になってしまったモノをお預かりし、またそれを必要とする次の誰かへ、バトンを繋ぐ取り組み。いいな、と思うモノがあれば、自由に持ち帰れる。金・土曜日のkiosk営業時 11:00-17:00
HELLO GARDEN HP 「ご自由にどうぞ」ってなぁに?
https://hellogarden.jp/hello-letter/gojiyuuni-doouzo/gojiyuunidouzo/ 2024年12月27日閲覧

[6] マイキーHP マイキーの果たすべき役割 ・ミッション https://mikey-inc.jp/about/ 2024年12月27日閲覧

[7] ものづくりのための道具・スペース・アイデア・スキルをシェアするまちの工作室。木工・洋裁・電子工作などの道具や、3Dプリンタやレーザー加工機などのデジタルファブリケーションなど、様々なものづくりの設備を備え、生活者が「つくる」「なおす」「つくりかえる」という行為を通じて暮らしや活動を自らの手でアップデートすることをサポートしている。
西千葉工作室HP https://nishichibakosakushitsu.com/ 2024年12月28日閲覧

[8]子どもたちの創造力を育む学び場。1年間かけてじっくり学ぶ放課後コース、企業や行政との協業による単発ワークショップ、教育関係者向けの研修プログラムなど、様々なアプローチによって創造力の育成に取り組んでいる。
子ども創造室HP https://kodomosouzoushitsu.com/ 2024年12月28日閲覧

[9] マイキーが研究資料として所有している本を地域に公開・貸出をする小さな私設図書館。資料を地域にシェアして有効活用すること、そしてマイキーが事業を通じて日々考えていることを地域と共有することを目的としている。
トンネル図書館HP https://mikey-inc.jp/hometown-projects/tunnellibrary/ 2024年12月28日閲覧

[10] HELLO GARDEN HP https://hellogarden.jp/about/ 2024年12月28日閲覧

[11] ○ZINE(エンジン)」ACKT02(一般社団法人ACKT) HP 「HELLO GARDENという見たい景色」
https://tarl.jp/archive/enzine02/ 2024年12月28日閲覧

[12] マイキーHP HELLO GARDEN 「プラットフォーム・サポート・メディアの3つの役割」
https://mikey-inc.jp/hometown-projects/hellogarden/ 2024年12月29日閲覧

[13] 千葉市HP 「身近な公園のパークマネジメント」https://www.city.chiba.jp/toshi/koenryokuchi/kanri/parkm.htmlまちの実験広場「HELLO GARDEN」 まちの実験広場「HELLO GARDEN」 2024年12月29日閲覧


[14]喫茶ランドリーグループHP http://kissalaundry.com/ 2024年12月29日閲覧

[15]㈱グランドレベルHP https://www.glevel.jp/index.html 2024年12月29日閲覧

[16]田中元子『1階革命 「喫茶ランドリー」とまちづくり』 晶文社、2022年 p84

[17]「みんとしょ」HP  https://sancacu.org/ 2024年12月28日閲覧

[18]HELLO GARDEN HP 「ふふふ文化祭」ってなぁに?
https://hellogarden.jp/hello-letter/fufufu-bunkasai/fufufu-bunkasai/
2024年12月27日閲覧

[19]学生組織「おりがみ」HP https://origami-vol.or.jp/student/ 2024年12月29日閲覧

[20]「本ふぇす」報告 https://www.instagram.com/p/DD8Yzuzvrv_/ 2025年1月27日閲覧
HELLO GARDEN HP内「本ふぇす」告知 https://hellogarden.jp/events/spacerental-2411-honfes/ 2025年1月27日閲覧

【参考文献】
田中元子『1階革命 「喫茶ランドリー」とまちづくり』 晶文社、2022年
太田明日香『アネモメトリ#81 自分でつくる公共 グランドレベル=1階の試み 1 「私設公民館」喫茶ランドリー 東京・森下』
太田明日香『アネモメトリ#82 自分でつくる公共 グランドレベル=1階の試み 2 「私設公民館」喫茶ランドリー 東京・森下』
太田明日香『アネモメトリ#83 自分でつくる公共 グランドレベル=1階の試み 3 点から面へ、回遊できるまちのつくられかた

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