下村 泰史(教授)2023年3月卒業時の講評

年月 2023年3月
卒業研究レポートを執筆された皆さん、お疲れ様でした。
さて、今回私が添削講評を担当した分についての総評を以下に書きたいと思っています。
今回私が拝見した分については、ややもの足りない印象を受けました。もちろん優れたものも多くありましたが、全体としてはやや低調でした。

何が足りなかったのか。それははっきりしています。資料が貧弱なものが多かったのです。
資料として、写真が数点添えられている、あるいは既存のパンフレット等が添えられている、というスタイルのものが目立ちました。それで必要十分本文を補強できているならば、それはそれで素晴らしいことなのですが、どうもそうなっていないものが多く見受けられました。

この卒業研究のレポートでは、まず対象となる事例についてきちんと描出する必要があります。本文内でも概要情報と歴史的経緯を記述することが求められていますが、資料において補強することが必要なことも多いと思います。写真は便利なものですが、それ以外にも、所在地を示す地図や、モノであれば構造を示す断面図や平面図が必要だと思いますし、コトであれば時間軸や関係性を示すものが必要だと思います。
また、その特筆性を論じるにあたっては、執筆者の視点に即した考察が行われなくてはなりません。ここでも表による比較や、さまざまな図化による分析が有用であることが多いと思います。
もっとも、図表が多ければよいというわけではありません。本文と関係ないものが雑然と添付されていても、それは何の意味もありません。
しかしながら、この卒業研究レポートは3200字というコンパクトなものです。本文では論理的な骨子ししか示し得ないということも多いでしょう。そうした時に対象の豊かなディテイルや、緻密な比較考察の手順などは、執筆者による独自の資料類で語るしかないのです。
そして、著者自身がまとめた資料ほど、雄弁にその人を語るものはありません。そうした資料には引き込まれますし、感動を覚えることもしばしばです。

この総評では、誰の作品がどうだった、ということまでは触れません。それぞれご自身に、人に十分に伝えることができるレポートができたかどうか、問い尋ねてみてください。
自分のことだ、と思った方は、そここそが伸び代です。このレポートで使った頭の使い方は、これからの地域生活や仕事の場面でも求められることがあると思います。その時には、きちんと対象を示し、考え方を示すことを是非試みてください。

そして、このWEB卒業研究展を参考にされる、卒業を目指す学科生の皆さんにも、このことは申し上げておきたいと思います。何本もの先輩たちのレポートを資料も含めて読み込み、ぐっとくるもの、よく伝わってくるもの、そうしたレポートにはどのような工夫がされているのかを学んでいただきたいと思います。それをご自身の卒業研究レポートに活かしていただきたいと思います。