野村朋弘 (准教授:主任)2016年3月卒業時の講評

年月 2016年3月
今季、卒業研究に取り組まれた皆さん、お疲れ様でした。私は、伝統行事や文化遺産に関わる題材を中心に担当させて頂きました。レポートの題材は、地域も取り上げ方も様々で、大変興味深く読ませて頂きました。卒業研究レポートでは、地域に関わる文化資産を評価することを求めています。地域の文化資産とは何でしょうか。ある地域の特定の時代や時代を経ても継続していた人々の生活(行事・習慣であったり、信仰であったり、暮らし)そのもののことです。人々の中には前近代であれば、階層もあります。公家の生活、武家の生活、商家の生活、農家の生活などです。そうした中に文化は育まれています。時代を経て文化が統合されたり、改修されてつつも日々積み重ねられていく中で、常に新しい価値や美しさが生み出されてきました。文化とはそうした意味において、とても身近なものです。身近な文化が如何にして生み出され、変化し、どのような点がデザインとして秀でているか。自分なりに気づき、評価する。それが文化資産評価報告書です。本学科で体得して欲しい学びがある種、凝縮されているのです。私は伝統的な行事や文化遺産に関わるものを中心に読ませて頂きましたが、いずれもご自身の興味関心に沿ってまとめられたものであり、アートリソースのガイドブックにもなっていました。そして、卒業研究レポートの文字数は「3200字程度」です。入学したての頃は「3200字も?」と思われたかも知れませんが、様々な科目でレポートを書き、実際に卒業研究に取り組んでみると、このサイズにまとめる困難に気づかされたことでしょう。その為、大切になるのが取り上げた題材の何を評価するのか。という「問い」です。問いのサイズが適切かどうかで、レポートの評価も左右するといってよいでしょう。また、行事や文化遺産にも様々な比較対象がありますが、比較することも深められなければ単なる紹介に留まってしまいます。そうした点について、気になった箇所は、個別の講評で指摘させて頂きました。個別の講評では様々なことを書くこともありました。しかし卒業に値する内容であったことには変わりはありません。大学での学びはこれで区切りが付きますが、講評をもとに更に「知るを愉しむ」ことを忘れずに、日々の生活を豊かにして下さい。