下村 泰史(教授)2022年9月卒業時の講評

年月 2022年10月
みなさん、ご卒業おめでとうございます。

今回ここで発表されているもののうち、私が担当したものは以下のようなものを取り扱っていました(レポートの表題とは異なります)。

・名古屋市の歴史ある都市公園
・伊豆市のわさび田の景観
・熊本城の震災からの復興過程
・上田城の景観
・ワシントンDCの全米日系米国人記念碑の空間構成
・足立区竹ノ塚の路上上彫刻の歩行者空間における意味
・大田区田園調布のこれまでとこれから
・千葉県の鋸山(富津市/鋸南町)の歴史性と時間的・空間的デザイン
・「Din Don」からみる日本の音風景

私のランドスケープデザインという専門性もあって、フィールドの景観を伴う場のありようについてのレポートを読ませてもらいました。

おそらく今秋卒業されるみなさんも、このようなテーマで卒業研究レポートを執筆することになるとは、入学時には思われなかったことと思います。ふつう言うところの「芸術」とは随分異なったものだからです。

この「卒業研究」は本学科の学びの総仕上げであり、最後に履修する科目です。一方、入学したての方が最初に受講する科目に「芸術教養入門」というのがあります。そのレポートからは、多くの方が、「芸術について体系的に知りたい」「自分の創作の裏づけとなる知識がほしい」といった志を持って入学されてきたことが読み取れます。

その「芸術教養入門」のレポートの添削講評に、私はいつも「芸術教養学科の学科専門教育科目では、いわゆる「芸術」だけでなく、人間の創造的な行為を幅広く扱います」という一文を書き加えてきました。

今回の卒業研究ではいずれのレポートも、対象を取り扱う方法的な巧拙はあれ、そうした創造についてのより幅広い視点を獲得したことが窺われるものでした。

芸術教養学科で身につけた「目つき」と「手口」を、今後の人生でも是非活かしていただきたいと思います。