上村 博(教授)2019年3月卒業時の講評

年月 2019年3月
2018年度冬季の卒業研究を振り返って

 

今回、私が講評を担当した卒業研究レポートは、食文化や景観、また伝統的な行事の伝承に関するものが多くありました。いずれも文献にあたるほか、現地での聞き取り調査などもされており、丁寧な取材と具体的な観察に基づいたものでした。

内容としては、例年のことですが、どうしても事実や歴史的経緯の説明が多くなってしまい、他の研究には見られない自分自身の着眼点を示すというところがいささか弱かったように思いました。ただ、その中でも、戦後に定着した花火大会の運営に、地域における伝統的な組織維持の仕組みの今日的なありかたを指摘したものや、隅田川の堤防(テラス)の景観について、近景と遠景との関係から、その特徴を指摘したものなど、研究の視点が明確で興味深いレポートもありました。そのほか演劇やジャズフェスティバルについて、それらが上演される都市とどう関わるかについての論考など、興味深いものが多々あります。

大げさに言えば、各地で発揮されている人間の叡智が、こうしてひとつひとつその意味を解きほぐされることで、また新たな活動が生まれる契機となるのではないでしょうか。卒業されたみなさんの今後のご活躍を期待しています。