
「竹楽」動と静の祭り─竹と共に歩む町興し
1.竹楽と竹田市
大分県竹田市では、11月に武家屋敷周辺や岡城址に幻想的な祭り「たけた竹灯籠・竹楽」が開催される。路上での生演奏や屋台村、各地域から訪れる観光客で賑やかに行われるが、その喧騒から抜けると一転して「音と光をテーマ」とした美しい竹灯籠が施される。幻想的で一体感のある空間構築の創造には、まるで動と静が同時に体現されているようである。そんなイベントの場となる竹田市は、400年の歴史を持つ武家屋敷や岡城址が現存し、水と緑豊かな自然を有している。詩情豊かに竹と四季折々の美しい光景を詠んだ田能村竹田(1777年~1835年)をはじめ、「荒城の月」で有名な滝廉太郎(1879年~1903年)など、多くの文人や芸術家を輩出した閑静な町である。
しかし一方では、里山保全における竹害が課題とされており、環境問題解決と伝統工芸維持に向けての発展が望まれたが、竹産業再生はハードルが高く、積年の課題として模索し続けていた結果、一つの祭りを誕生させることになった。
2. 竹楽の始まり
始まりは1997年、イベント「もみじフェスタ」の里山歩きで「モウソウチク」という竹によって大変に荒れていることが発覚した。市民は、里山が人の減少によりバランスが崩壊し、美しい景観の損失と暮らしや文化までもが消失することに危惧したのである。この問題を解決するために自治体では、杉山・自然林・山際の田畑などから里山保全のため間伐された竹を有効利用することができないかという話し合いを経て、モウソウチクを使って竹灯籠を作ろうとする発想が生まれる。(註1)1998年には、約3000本の竹灯籠を現存する武家屋敷周辺や岡城址に置いて風情を楽しむ小さなフェスタを開催した。これが好評を得たことで契機となり、竹田市職員とNPO法人里山保全竹活用百人会の主催、ボランティアによる支えによって取り行う本格的な祭りと成長し、第二回目には20000本を創り上げることに成功した。ボランティアの奉仕により、メインとなる竹灯篭の竹の切り出し・竹表面の燻煙・綺麗な斜切断の工程を二か月程かけて行っている。その20000本のうちの約半数は林研グループによるもので、燻煙が割れやカビ・虫食い防止になりながら、シックな茶色を呈す。過度に手を加えないことで、華美過ぎず素朴な光が燻煙竹による竹灯籠の特徴とし、これら竹灯篭の一つ一つが真心を込めて作られる工芸品となった。そして、祭りの始まりに釣鐘の合図で一斉に手作りの竹灯籠が点火される姿は人々に感動を与えている。こうして竹楽は、比較的新しい祭りでありながら毎年10万人を超えるイベントに成長し、大きな経済効果生んだのである。(註2)
一方、このように竹楽は毎年数多くの人達で竹灯籠を作っているが、祭りが終わった後どうなるのだろうか。
3.経済再生モデルによる循環構造
竹楽で灯籠としての役割を終えた後は、竹炭や堆肥などの資源として再利用していく「経済再生モデル」を取り込んでいる。これは、京都大学木質科学研究所の野村隆哉が産業連環を軸にした竹灯りや竹炭を提唱したことによって、里山保全を目指していた地元に受け入れられたことがきっかけとなる。この経済再生モデルの循環構造が採用されると、竹楽の収益は里山を長期間に渡って保全していくために利用され、竹害などの環境問題解決に向けての対策を百年の長期間目標とし、地域住民と協力のもと構築が成されている。(註3、註1に同じ)
一方、こうした竹害は竹田市だけではなく、他にも及んでいると考えられ、他地域ではどのような対策がされているのだろうか。
4.他地域の竹害対策
福岡県北九州市は同じく竹害に悩み、2019年に竹を利用した小倉城 「竹あかり」というイベントを開催した。16000個の竹灯籠で、小倉城を幻想的な空間に飾り立てている。竹灯籠は市民の方々による様々な形や工夫が打ち出された作品が多々見られ、毎年デザインされる竹灯籠は見る者を魅力し、それらが使用された後の竹を再使用する循環構造は竹楽と類似している。そして、北九州市が打ち出す「宿泊型観光」といった政策に繋がっていることが独自の点として挙げられる。(註4)
一方、竹楽は北九州市のような派手さは無いが、屋台などで賑やかな場所と武家屋敷や岡城址に飾られた竹灯籠の穏やかな場所が隣接する独自な空間デザインや、市民の一貫した形を維持する竹灯籠への想いやこだわりで、動と静の景観と独特の灯りにより構築されていることが特筆していると考える。
しかし、北九州市に見られる積極的な誘致を促す試みは参考にできるのでは無いだろうか。百年という目標を掲げる竹楽の継続に対する手がかりを考察する。
5.竹楽を未来へ
福岡JTBとの協賛で、竹楽に観光客を呼び込むための取り組みが行われた。ただ眺めるだけのイベントで終わらずに、自らが晩鐘の鐘と共に竹灯籠への点火に参加することが出来る「あなたの灯りを灯しませんか」というツアーは、観光客が主催者の気持ちになることか出来る体験イベントである。これは、体験した感動をPRしてもらうことで、他県への認知と人を呼ぶきっかけとなり、地元民だけでなく積極的に観光客をも巻き込んでいくことが、竹楽による町興しの原動力になると考えられる。(註5、註1に同じ)
しかし、竹楽周辺に夜景を眺めながらのレストランやカフェ・宿は少なく、ゆっくりと竹灯籠を眺められる場所が増加すれば安定的な誘致を促すことができると考える。緩やかな人通りの箇所などに、竹を使った小さなベンチや椅子などで休憩スペースの増加を図ることは竹の利用に繋がりながら、人々の心と体を癒し、さらに深い思い出として残っていくのでは無いだろうか。
他の課題には、竹灯篭や祭りの進行に関わることが出来るボランティアの組合員や市役所職員の人数が、高齢などの理由で参集時から年々低下していることも挙げられる。そのため、課題解決の例の一つに挙げられるのが、学校教育における地域社会との積極的な活動である。大分県立芸術文化短期大学は、教育の一環「地域社会特講」として実際の竹田市に赴いて活動に参加し、住民達が協力して取り組んでいることを理論として学ぶ。現場活動の実体験によって一人でも多くの若者が能力と知見を習得しながら、地域課題解決や地方都市の未来を担う人材となることへと期待ができる。(註6、註1に同じ) 他にも、若年層へ向けた活動の一部に、子供たちが祭りで使う装飾品などを作る作業や、準備段階から参加する「子供夜市」などのイベント事業である。子供の積極的な関わりが活力的なコミュニティを創造する源となり、同時に子供は経験を積みながら、竹田への愛着を自然と育くめる成長体験の場となっている。(註7)(註8)(註9)このように、誘致を促し、未来へと繋げる積極的な活動の維持が今後も必要だと考えるのである。
竹田市では、こうした考案と共に、人々がより竹田市へ愛着を深めるための未来アプローチとして、2014年に歴史的文化遺産を活かし、景観に配慮した町づくりを目指した城下町再生プロジェクトを打ち出している。(註10)竹楽は竹田市の方向性とマッチしながら、景観を損なうこと無く地域の魅力を最大限に活かせることから、地盤を固めながらの長期的な取り組みが期待できる。そして同時に、これからも様々な角度からの視点が重要になるであろう。
6.終わりに
このように竹楽は、竹害に対する伐採処理に終わらずに、竹を有効利用しながら未来を歩む百年目標を掲げ、継続する努力をしている。こうした市民の地道な活動が、伝統行事としての独自な祭となり、後世へと築き上げていくのでは無いだろうか。そして、竹田市の方向性と共に、里山を守る催しとして更なる発展の期待を寄せているのである。
参考文献
(註1)『竹楽20周年記念誌 竹楽の歩み』
発行日: 2021年3月31日、著者:編集委員会のメンバー、発行者:NPO法人里山保全竹活用百人会、13頁。
(註2)大分県本部/竹田市職員労働組合 後藤 祥司「竹楽~竹・光・音・出逢い~の取り組みについて―― 「市職労の火」を消さないために――」
https://www.jichiro.gr.jp/jichiken_kako/report/rep_saga35/01/0178_jre/index.htm
2026年7月閲覧。
(註3、註2に同じ) 大分県本部/竹田市職員労働組合 後藤 祥司「竹楽~竹・光・音・出逢い~の取り組みについて―― 「市職労の火」を消さないために――」
https://www.jichiro.gr.jp/jichiken_kako/report/rep_saga35/01/0178_jre/index.htm
2026年7月閲覧。
(註4)小倉城 「竹あかり」
https://kokurajotakeakari.com/
2026年7月閲覧。
(註5、註1に同じ)『竹楽20周年記念誌 竹楽の歩み』
発行日: 2021年3月31日、著者:編集委員会のメンバー、発行者:NPO法人里山保全竹活用百人会、13頁。
(註6、註1に同じ)『竹楽20周年記念誌 竹楽の歩み』
発行日: 2021年3月31日、著者:編集委員会のメンバー、発行者:NPO法人里山保全竹活用百人会、16頁。
(註7)芸術教養演習2レポート
藤井 望「動と静の祭り「竹楽」と町興しへの取り組み─未来の可能性や課題について」京都芸術大学、芸術教養学科、提出年2025年11月15日。
(註8)まちづくりたけた株式会社「第25回たけた竹灯籠『竹楽』が開催されました」
https://taketa-agrew.jp/2024/11/22/25chikuraku2024/
2026年7月閲覧。
(註9)竹田町商店街振興組合
https://www.syoutengai.or.jp/jirei/h30/016_Ky_taketamachi.pdf
2026年7月閲覧。
(註10)竹田市
https://www.city.taketa.oita.jp/soshiki/kensetsuka/toshi/367.html
2026年7月閲覧。


