
タイトル:世界につながる「福山ばら祭」の歴史と未来ビジョン
はじめに
瀬戸内海のほぼ中央にあり、広島県最東部に位置する福山市は、広島市に次ぐ第2都市であり、約45万人が暮らしている。福山市は、2026年市制施行110周年を迎え、何故「100万本のばらが咲き誇るまち」を掲げるようになったのか、歴史を紐解きながら紹介していきたい。
1「福山ばら祭」の歴史
「福山ばら祭」は、福山市花園町ばら公園及び緑町公園周辺で、毎年5月中旬に開催される福山市最大のイベントである。祭の歴史は、福山大空襲(1945年)の惨劇から始まる。市街地の約8割が焼失したという大空襲を経て、街復興の願いをこめ、「花を植えよう。荒廃したまちに潤いを与え、人々の心に和らぎを取り戻そう」という声と共に、約1000本のばらが現在のばら公園に植えられた。(1956-57年)市民の「花は美しい、それを愛し育む人の心はなお美しい」というかけ声と共に、市内至る所にばらの花壇が作られるようになっていった。
2「100万本のばらが咲き誇るまち」の由縁
ばら祭のテーマソング「心に咲く花」は、市制90周年(2006年)を記念して作られ、同年の「第39回ばら祭」では、祭りの期間中に出たゴミの「100%全量リサイクル」の目標を達成した。「第52回ばら祭」(2019年)は、過去最高となる86万人の観客動員数を数えた。福山市は毎年、市内の小・中・高校、自治会や企業、個人へ向けて、ばらの苗を無償配布しており、市制施行100周年記念日となる2016年7月1日、遂に百万本のばらの苗の植え付けを達成したのである。文字通り「100万本のばらが咲き誇るまち」となった。毎年4月になると至る所でばら花壇で働くボランティアの方々の姿を見かける。
3基本データ
ばら公園には、現在12種類の交配種の「ふくやま」と名づけられたばらが植えられている。「ふくやま」と名のつくばらは、1986年(昭和61年)福山市のシンボルとして誕生した。
1 ローズふくやま(高雄×プリスタイン)1986年、市政施行70周年記念
市民からの募集で名 づけられた。
2 ビューティフルふくやま(ロクレア×アルファー)1987年
3 プリンセスふくやま(フロージン×金閣) 1990年、福山青年会議所30周年記念
4 スマイルふくやま(レーゲンスベルク自家交配) 2001年、市政施行85周年記念
福山市開発
5 チャーミーふくやま(レーゲンベルグ×レッドメイアンディナ)2004年、福山市開発
6 ラブリーふくやま(レーゲンスベルク×オレンジジュエル)2004年、福山市開発
7 アニバーサリーふくやま(サスペンス×レッド・ひろしま)
2006年、福山ばら会創立50周年記念
8 福山城(紫雲×無名実生)2011年、市政施行95周年記念 ばらオーナーから寄贈
9 ウルヴァリン:FUKUYAMA(コルトゥレック×無名実生)2013年、ハリウッド映画
「ウルヴァリン:SAMURAI」の福山撮影を記念して誕生。
10 ローズマインドふくやま(アイスバーグ×無名実生)2016年、市政施行100周年記念
愛称を全国から公募し、市民投票により決定された。
11 ニコライバーグマン ふくやまローズ 2018年、福山PR大使のフラワーアーティスト
バーグマン氏とのコラボレーションにより誕生した。
12キャンディーローズフクヤマ
世界バラ会議福山大会2025記念
4世界につながる「ばら祭」
2025年「第20回世界バラ会議福山大会」が開催され、「ばら祭」は58回目を迎えた。「世界バラ会議」とは、「世界バラ会連合(World Federation of Rose Societies, WFRS)」(https://www.worldrose.org/)が3年ごとに行う国際会議で、本拠地はイギリスのロンドンである。世界各地から研究者、生産者、愛好家が集められ、ばらに関する研究発表、知識交換、庭園ツアー、殿堂入りのばらの選定などが行われる世界最大のばらの祭典である。日本では、第14回世界バラ会議(2006年)が大阪市で行われ、次いで2025年福山市が選ばれた。福山大会は、5月17日~24日まで行われ、「第58回福山ばら祭」、博覧会として「ばらの世界を旅する」をテーマに「Rose Expo FUKUYAMA 2025」が開催された。
5福山みらい創造ビジョン、持続可能なばらのめざすもの
ばらのめざす姿を2030年度までも市が提示していることに、深く感銘を受けた。
市が提案するデザインコンセプトシナリオ
1 福山ばら物語の構築
都市景観の創造として、公演や場所の持つ歴史や景観を踏まえた物語の構築。
2 環境に配慮したローメンテナンスで栽培できるばらの導入。
無農薬栽培のできるばらや丈夫な品種の選定収集。
3 既存の施設を生かした魅力的な空間創り→「空間デザイン」「時間のデザイン」
4 話題性や独自性を生み出し、観光誘致につながる高質なデザイン計画。→「ばら混植のデザイン」
福山市ホームページより抜粋(https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/)
「60年以上にも及ぶばらのまちづくりの歴史がある福山市は、福山大会を機に、世界に誇れるばらのまちの創造をめざす。(中略)福山みらい創造ビジョンで示されている「安心」「希望」の都市の実現にばらの果たす役割は大きく、長年の福山ばら大学で培われた知識、技術を生かすとともに、市民参画により優れた都市環境づくりに生かしていく。市内各所に点在するばら花壇を、それぞれの立地を生かし、多様なばらの品種の導入と多彩なデザインにより新たなばらの表現を試みる。新しい理念でできあがった市内各所のばらの表現は、世界から評価されるとともに、国内のばらの愛好家に新しいばらの時代の到来を提示する。植栽デザインの高い評価は観光開発にもつながり、ばらをテーマとした産業に結びつけていく。」
参考資料を収集していくうちに、市の考える将来を見すえた明るい街づくりの展望が感じられ、嬉しく拝読することができた。今まで何気なく眺めていた市内のばらは、多くの方々の配慮と未来へ受け継がれていくべき無形の文化的価値と地域遺産となっていたのだ。
市は、持続可能なばらのめざすものとして7つの項目を挙げている。
① ばらのまちの回遊性を高める(ばらを楽しむための回遊ルートの整備)。
② 農薬散布を前提としない丈夫なばらの導入。
③ ばらの表現力を高める(空間、時間、色彩のデザイン性を駆使したばらの表現力を高める)。
④ 健やかなばらを育む土壌改良。
⑤ 四季を通じた魅力づくり。
⑥ 公共空間のばらの維持管理に市民が参加できる体制を整える。
⑦ ばらの新品種国際コンテストによるタウンスケープローズ(公共空間で栽培可能なばら)の収集と情報発信を行う。
広大な公共ガーデンの素晴らしさを個人の写真では収めきれないのが残念である。市や市民ボランティアの手で管理されている公共ガーデンの一部を紹介する。(ばらの本数)
1 ばら公園(約7000本)(約670種類)2006年世界バラ会連合優秀庭園賞受賞
2 緑町公園(約7500本)
3 福山サービスエリア(山陽自動車道)上り線(約800本)
4 ガーデン冨谷(約530本)
5 花園公園(約700本)
6 福山城公園(福山駅北口スクエア)(約800本)
7 福山駅前広場(約1200本)
8 中央公園(約650本)
9 春日池公園(約3300本)
10 福山市園芸センター(約1200本)
11 マチモト薔薇農園(約2000本)
12 ホロコース記念館アンネのバラ園(約50本)
400箇所以上のガーデンと地域花壇は、市民ボランティアの手で植えられ育てられており、福山ばら祭開催時のボランティア募集には、150名の募集に対して、それを上回る登録者数があったと報じられており、市民のばらを大切に思う気持ちと「ばら祭」は市民にとって重要な行事であるとする表れである。
400箇所ある地域花壇(地域の団体によって維持管理されている花壇)の中から一部を紹介。(ばらの本数)
・Jardin des Roses(おおもとウィメンズクリニック)(約200本)
・能宗呉服店ばら花壇(天満屋ギフトショップ)(約350本)
・ローズガーデン江草(約320本)
・UEMOTO TENNIS SCHOOL & ROSEGRDEN(約120本)
・戸手フレンズローズガーデン(約250本)
・トライアングル広場ばら花壇(約90本)
・緑丘学区 高屋ばら花壇(約150本)
・広島大学付属福山中・高等学校(約100種類、1000本)
・福山市立蔵王小学校
・入江大橋 遊ローズガーデン
・イシイのばら花壇
・遺芳ばら園
・深津ばら花壇
・一文字堤防バラ花壇(曙学区)
福山ばら祭は、交通渋滞や臨時駐車場問題、市民ローズボランティアの募集人数増加と確保、海外からの観光客を受け入れるための多言語の対応が不十分など、抱えている課題は多々あるが、問題を1つずつ解決しながらこれからも続くであろう「福山ばら祭」を見守り応援していきたい。
参考文献
「福山ばら祭」公式ホームページ:https://fukuyama-matsuri.jp/(最終閲覧日2026年7月13日)
福山市公式ホームページ:https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/(最終閲覧日2026年7月13日)
世界バラ会連合(WFRS)」:https://www.worldrose.org/(最終閲覧日2026年7月13日)
福山市役所情報発信課: https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/soshiki/jouhou-hasshin/
(最終閲覧日2026年7月13日)
福山みらい創造ビジョン:https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/uploaded/attachment/333703.pdf
(最終閲覧日2026年7月13日)
「福山ばら祭」50年の歩みを振り返る:https://fukuyama-matsuri.jp/smarts/index/47/
(最終閲覧日2026年7月13日)
「ばらのまち福山の歴史」https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/site/rosetownfukuyama/22314.html
(最終閲覧日2026年7月13日
福山市ばらのまちづくり課:https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/soshiki/sekaibara/
(最終閲覧日2026年7月13日)
福山市観光コンベンション協会:https://www.fukuyama-kanko.com/(最終閲覧日2026年7月13日)
「芸術教養学科2025年度冬期芸術教養演習1提出レポート」



