「守り継ぐ景観の記憶 大宮公園における桜守ボランティア」

三枝 陽菜

はじめに
大宮公園は2025年に開園140周年を迎えた歴史のある近代公園の一つである。開園当初は「松の公園」として有名であったが、現在は「日本さくら名所100選」(1)に選ばれ桜の名所として有名である。桜の時期には多くの花見客が訪れ活気があふれている。この桜の木々の管理をしているのが民間のボランティア活動であることはどれだけ知られているのだろうか。近代公園として景観は変化しつつ魅力を維持し続けている大宮公園と桜守活動を景観とコミュニティのデザインから考察したい。

概要と歴史
1)大宮公園
大宮駅北東約1.5kmの場所にあり、面積は35ha(第二、第三公園は除く)でそれぞれ700本以上の桜と松(2)が植えられている。
明治18年に氷川公園として明治六年の太政官布告第16号(3)に基づき、隣接する氷川神社の境内を分ける形で開園した。その後、高級旅館が立ち並ぶ東京からの遠足地として人気を博したが施設の老朽化に伴い本多静六によって大正10年に「氷川公園改良計画 」が練られた。この計画に基づきサッカー場などのスポーツ施設が作られると共に、桜の植栽も行われ、現在のスポーツのできる松と桜のある公園という姿が出来上がった。2016年時点の年間来園者は約200万人で桜の時期は多く13.3万人にも上る。(4)
2)桜守ボランティア
大宮公園内(第二、第三公園は除く)の「老齢化の進むサクラの樹木が健全に育成する環境を整えることを中心に、園内の緑化に取り組んでいる団体である。できた経緯は「大宮公園の開園120周年(平成17年)を契機に、公園のシンボルである「サクラとアカマツと水辺の風景」を次世代に継承するため、過密で老齢化の進むサクラの樹木が健全に育成する環境を整えることにいたしました。このための作業を協働しておこなうために発足した」(5)とあり、今現在も続く20年以上にわたってボランティアと公園事務所の両輪で桜守活動を行っている。

積極的に評価している点
1) 多角的で専門的な維持管理の実践
参加人数も一定ではなく可変することに加え、少ない活動日数で活動の範囲が広いことからボランティア活動が確立されていると考えられる。活動内容としてひこばえの除去(6)から害虫除去・対策(7)や、土壌改良(8)、伐採木の決定(9)、開花時期には花数の調査(10)など桜の管理を月一回、年9回程度の活動で行っている。加えて桜の開花時期は公園内のごみ拾いまで行うため、活動内容は多岐にわたるが一貫して園内の緑化整備に尽くしている。
2)透明性と再現性の高さ
年間スケジュールと活動内容がウェブ上で公開されており、年を追うごとにボランティア通信(11)の内容が詳細になっており透明性が高い。そのため一度も参加したことがなくても、ボランティア通信を読むとその日どの様な活動をしたのか、おおよそ理解することができる。加えて活動の日程や内容が毎年大きく変更がないため、再現性も高く後世にわたっての記録として優れている。
3)「納得感」のある意思決定
実際に「大宮公園サクラ活性化対策検討委員会」によって園内の桜について調査が行われた結果、中が空洞になっている木も発見された。(12)どのように樹勢を回復するかについては専門家の意見を参考にしながら保存や土壌改良を行われ、伐採する場合は桜守ボランティアと話し合いながら実際どの木を伐採するのか決められている。
4)愛着と専門性
上記に挙げたように実際に木々の保護をしている人の意見を聞き、決定することはボランティア活動に意義ややりがいが見出される。「桜守」という役割を行政主体ではなく、ボランティア活動として維持することで地域住民の「シビックプライド」が空間の質を支えるデザインとなっている。

他の事例と比較して特筆される点
1)松との共存
桜の名所とされる公園は国内に多くあるが、松と共存している姿は他にはないだろう。開園当時は「松の公園」としてこの土地に多く根付いた松を活かす景観であったが、松を生かしたまま桜の植栽が行われたことで現在の景観がある。今日ではボランティアによって桜だけでなく松も併せて管理することで公園の景観に一体感が出ており、どちらも楽しめる公園となっていることが大宮公園の魅力であり特色である。
2)未来の想定の姿に沿った公園の整備
グランドデザイン検討委員会によって未来の公園の姿が想定されており、そこに向けて公園内の整備がされている。この委員会は地域住民や氷川神社の宮司、観光の専門家や、埼玉県の行政も含めた全14者で組織され、大宮公園の質の向上を含む将来的な姿を話し合い計画したものである。この計画によれば、現在の桜が多く植えられている自由広場は「桜の丘」として「主にサクラやアカマツを中心とする明るく快適な広場空間をつくる。」(13)とある。本計画に基づいて桜や松の管理が行われており、現状木々が多く生い茂って暗くなっているエリアの樹木間の調整が予定されている。更に桜の伐採や接ぎ木苗、若い松の植栽をするなど、徐々に木々を更新して次世代により良い姿を残すための整備が行われている。
3)行政と市民の対等なパートナーシップ
大宮公園の桜守活動はボランティアが主体として行っている。桜守活動は全国各地で行われており、行政やボランティアが主体者のものもあれば、職業やNPO活動の地域もある。例えば、東京都目黒区は区が計画を立てそれに沿った活動がボランティアに求められている(14)一方で青森県弘前市は公園緑地課の中に桜守活動があり、行政が主体となって桜守を行っている(15)。更にボランティアのリーダーである世話人が、次年度の計画まで担うため、桜守ボランティアの方向性を決定するなど県、コンサルタントの三者で話し合いながら、活動を進めている。(16)以上のことから、職業としても行われる専門性の高い活動を行政任せのトップダウン方式ではなく、市民参加型で合意形成も行っているのが最も特徴的である。

今後の展望
1)ボランティアの人数の増減
ボランティア通信のアーカイブには最初の頃は60人以上の参加者が活動していたと記録がある。(17)しかし現在の参加人数は最大で20人程度、少なければ10人以下の時(18)もあり、安定して多く参加していたころと比べると圧倒的に少なっている。現行のまま少ない日数で効果的に行うためにはある程度人数の確保も欠かせないだろう。
2)認知度の低さ
私自身、大宮公園の歴史について調査する中で知ったが一般的に公園事務所が管理すると考えられているのではないだろうか。桜の管理や更新計画があることを周知する看板が園内に2か所ある(19)が、ボランティアの活動だということはわかりづらい。今後活動を継続するためにも周知に力を入れるべきではないだろうか。
3)シビックプライドの醸成
一部の市民だけのシビックプライドの高まりではなくその他大勢の市民のシビックプライドの醸成も必要だろう。計画や変化にただ身を任せるのではなく、自らが自分事として望む公園の景観を発信することや桜守ボランティアなどの活動に参加することで変化を見守る立場になる必要があるだろう。

まとめ
公園自体の歴史があり、古くから周辺の住民に親しまれている。多くの人が桜を心待ちにしており、その姿は未来にわたって受け継がれていくべきものである。時代に取り残されずその時々の来園者や地域の住民に寄り添った景観であってほしい一方で歴史が消され真新しさだけが魅力の景観ではあってほしくない。積み重ねてきた歴史が多層的に映る深い魅力のある100年後も残る公園になっていてほしいと願う。そしてボランティアによって積み重ねられているのは木々の管理だけでなく、シビックプライドの継承であり、公園の未来を「自分事」としてとらえる姿である。「公共施設をどう扱うか」という姿を市民一人一人が見習うべきではないだろうか。

参考文献

註
(1)公益財団法人日本さくらの会によって1990年に選定された
日本さくらの会>桜の会とは>事業活動>「さくら名所100選」の選定
https://www.sakuranokai.or.jp/about/jigyo/
2026/06/18閲覧 
(2)平成20年度時点での樹木数。大宮公園事務所に問合せし回答いただいた。
(3)人口の多く集まる地域にある由緒ある景勝地や名所地には「公園」として適した土地を選び大蔵省へ提出するようにという公園開設に関する明治6年の太政官第16号によって選ばれた土地である
「都市公園150周年のあゆみ」都市公園制度制定150周年
https://www.posa.or.jp/wp/wp-content/uploads/2023/04/posa_150th_panel02.pdf
2026/06/18閲覧 
(4)2大宮公園及び周辺地域の現状 2.3利用状況
大宮公園グランドデザイン検討委員会報告書
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/112914/oomiyagd-original.pdf
より 2026/06/18閲覧
(5)大宮公園>桜守ボランティア>桜守ボランティアとは?>概要
https://www.pref.saitama.lg.jp/omiya-park/volunteer/sakuramorihp.html
より引用 2026/06/18閲覧
(6)ひこばえは樹木が光合成により栄養を得ようと出す枝で生育上大切な枝であるが、大宮公園では防犯上の見通し確保や広場利用のため手の届く範囲のひこばえを定期的に除去している
桜守ボランティア通信No.140より参照
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/34599/r7.pdf
2026/06/18閲覧
(7)害虫は「クビアカツヤカミキリ」と「コスカシバ」のこと。クビアカツヤカミキリは桜などのバラ科の樹木内部を食い荒らし樹木が枯死することによって落枝や倒木などを発生の恐れがある。
中国四国農政局>ホーム 食の安全と消費者の信頼確保 生産段階や消費段階の安全性確保 赤いクビに要注意!クビアカツヤカミキリ 参照
https://www.maff.go.jp/chushi/anzen/seisan/kubiaka.html
2026/06/18閲覧
コスカシバは幹の傷に散乱された卵が越冬し成長する際に形成層を食い荒らすことで桜の木の衰退の原因になるため、卵のうちに圧殺する必要がある。
HOME>桜の名所づくりとは>桜の植栽・管理>コスカシバ 参照
https://www.hananokai.or.jp/sakura/sakuramihonen-info/sakuramihonen-info-list10/
2026/06/18閲覧
(8)桜の木々が自由広場という人の行き来が可能なエリアに植えてあるため、土が踏み固められてしまう。その結果根がうまく張れなくなることがあり、それを防ぐために土壌を柔らかく改良する必要がある。
桜守ボランティア通信No.145より参照
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/34599/r7.pdf
2026/06/18閲覧
(9)伐採木の決定
桜の枝が互い干渉し合うことで成長を阻害してしまうことや桜の木自体が衰えているものもあるため、伐採をしている。
桜守ボランティア通信No.144より参照
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/34599/r7.pdf
2026/06/18閲覧
(10) 間伐による日照の変化が樹勢にどのような影響を与えているかを観察しており、間伐や土壌改良を行う樹木の選定する際の基準の一つにしている。
大宮公園事務所に問合せし回答いただいた。
(11)令和4年度から7年度分の桜守ボランティア通信の掲載がある。
大宮公園>桜守ボランティア 参照
https://www.pref.saitama.lg.jp/omiya-park/volunteer.html
2026/06/18閲覧
(12)「大宮公園サクラ活性化対策 サクラ除伐・更新計画」より参照
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/243554/sakurakousinnkeikaku.pdf
2026/06/18閲覧
(13)7.将来像のイメージ>7.3ゾーンごとの施策>桜の丘 より引用
大宮公園グランドデザイン検討委員会報告書
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/112914/oomiyagd-original.pdf
より 2026/06/18閲覧
(14)以下の2つの資料から保存計画についての意見の募集は区民からも行われているが、計画を練りボランティアの募集を行政が行い、活動は行政と区民のボランティアで行われている。
トップページ > 区政情報 > 計画・政策 > 目黒区の取り組み > 自然・環境への取り組み > めぐろサクラ再生プロジェクト > 桜守活動 より参照
https://www.city.meguro.tokyo.jp/midori/kusei/keikaku/sakuramori.html
2026/06/24閲覧
トップページ > 区政情報 > 計画・政策 > 目黒区の取り組み > 自然・環境への取り組み > めぐろサクラ再生プロジェクト > めぐろサクラ再生プロジェクトの取り組み より参照
https://www.city.meguro.tokyo.jp/midori/kusei/keikaku/sakura_hozen.html
2026/06/24閲覧
(15)公園緑地課の中にチーム桜守があり、一員には樹木医もいる。チーム桜守以外にも桜の管理をしている職員がおり年間を通して細やかな手入れがされている。
弘前さくらまつり2026>トップページ 見どころ・花見スポット・楽しみ方 弘前公園のチーム桜守
https://www.hirosakipark.jp/sakura/hanami/hirosakisakura/
2026/06/23閲覧
「日本一」後世に 弘前・チーム桜守10年」陸奥新報 2024/4/22掲載記事
https://mutsushimpo.com/news/dw60om68/
2026/06/23閲覧
公園文化WEB>公園管理運営「チャレンジ!」しました>第10回 弘前公園のサクラを後世に引き継ぐ(弘前公園)
https://www.midori-hanabunka.jp/challenge?term=park10
2026/06/23閲覧
(16)これまで、世話人の方には、桜守ボランティア活動の準備体操の指導、グループ活動のリーダー、世話人会(反省会)の参加などをお願いしています。世話人会は、桜守ボランティアの活動後に30分から1時間程度行い、その日の反省や、次回活動の確認、次年度の活動計画などについて話し合っています。
桜守ボランティア通信No.121より引用
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/22929/122-2.pdf
2026/06/18閲覧
(17) 第8回(H19/2/4) 参加人数:64 名との記録がある
大宮公園桜守ボランティア 平成17~23年度の活動概要より参照
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/22929/h17-23kakokatsudo.pdf
2026/06/18閲覧
(18)参加人数が7名である。桜守ボランティア通信No.135より参照
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/34599/r6tushin.pdf
2026/06/18閲覧
(19)写真1.2参照 筆者撮影2026/07/11
このような看板が園内に2か所(園内地図参照)あるのみで、ボランティアの活動についての案内はほぼない。
園内地図は以下より引用したものに①②を書き入れたもの
大宮公園 > 施設紹介 > 園内案内図
https://www.pref.saitama.lg.jp/omiya-park/shisetsu.html
2026/07/12閲覧

参考文献
埼玉県HP>大宮公園 > 大宮公園のサクラ更新のお知らせ
https://www.pref.saitama.lg.jp/omiya-park/oshirase/r5/saurakousin/sakurakousin.html
2026/06/18閲覧
大宮公園HP > 大宮公園の歴史
https://www.pref.saitama.lg.jp/omiya-park/oshirase/h30/history-omiya.html
2026/06/18閲覧
大宮経済新聞>大宮公園で桜守ボランティアが土壌改良 老齢化するサクラを手入れ
https://omiya.keizai.biz/headline/692/
2026/06/18閲覧
松下啓一『市民がつくる、わがまちの誇り―シビック・プライド政策の理論と実際』株式会社水曜社 2021年7月
平塚晶人『サクラを救え -「ソメイヨシノ寿命60年説」に挑む男たち-』東京文芸春秋 2001年3月
鈴木嘉一『桜守三代 -佐野藤右衛門口伝-』平凡社新書 2012年3月

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