神戸発の防災教育プログラム「イザ!カエルキャラバン!」 ― 「+クリエイティブ」な防災イベントの考察と評価 ―

平田 悟

【はじめに】
1995年1月17日に発生した「阪神・淡路大震災」以後、日本では自然災害が頻発し、地域単位での防災の取り組みの重要性が高まる一方、住民レベルの関心が十分に広まっていないという課題がある(1)。
防災士の資格を持つ筆者は、「防災の大切さを、子供から大人まで分かりやすく伝えるために、芸術やデザインの概念が貢献できることは何か」と、本学での学びの中で考えてきた。
その答えの一つとして、阪神・淡路大震災の教訓を生かして開発され、神戸から展開される防災教育プログラム「イザ!カエルキャラバン!」(以下、I K C)について、考察と評価を試みる。

【概要】
I K Cは、永田宏和(2)と藤浩志(3)が考案し、N P O法人プラス・アーツ(以下、プラス・アーツ)(4)が展開する防災教育プログラムである。
2005年の神戸市内での開催(5)以降、防災教育の新たな形として注目され、2022年末までに全国で約600回開催されている。
I K Cの内容は、永田が考案した防災体験プログラムと、藤の「かえっこバザール」を組み合わせたものである(6)。
前者は、永田が大学生らと共にワークショップを重ねて考案したもので、神戸市内の被災者167人からヒアリングやアンケートで集めた体験談に基づいている(7)。
後者は、藤が開発したプログラムで、子供達に不要なおもちゃを持ち寄ってもらい、「カエルポイント」を介して別のおもちゃに交換する、というものである(8)。

<I K Cの流れ>
1)おもちゃを「かえっこバンク」に預け、「カエルポイント」をもらう。
2)かえっこバンクでは、おもちゃを査定し交換に必要なポイント数を決める。目を引きそうな物は、イベント終盤のオークションに出品する。
3)新たなおもちゃを手に入れるのに必要なカエルポイントを貯めるため、子供達は防災体験プログラムに参加して回る。
4)貯めたポイントで、別のおもちゃに交換したり、オークションに参加する。

【特徴1.防災を楽しみながら学ぶプログラム】
防災体験プログラムには、「ジャッキアップゲーム」「水消火器で的あて」等の体験ゲーム、カードゲーム、クイズ、工作、紙芝居や人形劇等がある。子供達が自ら体験したり考えることで、楽しみながら防災知識を学べる工夫が評価出来る(資料1―7)(9)。

【特徴2.子供達に防災教育プログラムへ参加する動機を与えるイベントデザイン】
I K Cは、「かえっこバザール」を組み込み、集客や防災体験プログラムへの参加の動機付けとして利用している。
こうした「代用貨幣」(トークン)を用いて報酬物を得るために能動的な行動を促す手法を「トークンエコノミー法」と呼び、心理療法や問題行動のある子供の行動改善等で有効性が確認されているが、防災教育への導入は殆ど例がなく(城戸・片桐・仲矢、2019)、特筆に値する特徴である。

【特徴3.防災教育を地域に根付かせる工夫】
I K C等の防災プロジェクトが実施される地域で、プラス・アーツは「プラス・アーツ メソッド」と言う次の3つの考え方に基づいて、地域の活動を支援する。

1.風・水・土
この3つは、地域の人々が担う役割を意味する。
「風」の人:種(新たな活動)を運んで来る人々(10)
「水」の人:種を育て応援する人々(11)
「土」の人:種を根付かせる地域の人々(12)
プロジェクトの成功のため、地域の人々が新たな活動の意義を理解し連携することを、最も重要視している。

2.不完全プランニング
主催者以外の人々にもプロジェクトに参加・協力してもらうための考え方で、完成されたプログラムではなく、「不完全プランニング」=「地域の人々が関われる余地を持つ種(活動)」を持ち込むことで、地域の自主的な活動へ導くことを目指す。

3.+(プラス)クリエイティブ
活動の中に、デザイン・アートの概念や「クリエイティブ・シンキング」を取り入れ、新鮮で創造的な発想でアップデートし続けることを、「+クリエイティブ」と呼んでいる。
これは、活動に、より多くの人々の関心を引きつけるため、また、活動のマンネリ化を打破するために、魅力化し再構築し続けることが重要であると言う考え方である。

プラス・アーツは、地域の「風・水・土」の人々の連携を確認した上で、講演・研修会の実施や開催支援を行う。
I K Cの開催マニュアルはオープンソースで、2回目以降は自力でも開催が可能である。さらに「+クリエイティブ」な発想から、各地でローカライズ版も誕生している。
このメソッドは、地域の自主的な取り組みを促す考え方として積極的に評価出来るものである。

<プラス・アーツ メソッドの実現例>

・まびっこカエルキャラバンVol.3(2022年10月30日 岡山県倉敷市真備町)
2018(平成30)年7月の西日本豪雨で浸水被害を受けた翌年から開催(13)。
主催の「M S B30」は真備の中学生の団体で、地域のN P Oと連携して開催を担い、Vol.3では高校生ら約50人が運営スタッフを務めた。

・海外では、フィリピンのイロイロ市で、プラス・アーツとJ I C A等が協働で2013年に初回開催を支援。2年目以降は、現地の人々の「+クリエイティブ」が発揮され、地域の実情に応じた防災プログラムが開発されたり、ゲームに使用するキャラクターの人形を現地の動物をモチーフにして自作するなどのローカライズ版が誕生した(14)。

【類似例との比較】
防災教育プログラムは、主に学校教育の中での事例が多い。
一例として、愛知県三河市の3小学校の3・4年生を対象とした防災教育プログラムの開発に関する研究(木村・林、2009)では、1944年東南海地震で被災した姉妹の体験談を基にした絵画や教材を制作。後続にイベント型プログラム(2校)と年間教育プログラム(1校)が開発され、それを学んだ児童らには有意な教育効果がみられた。
こうした実体験を伴う防災教育は、効果を上げるために有効であると言える。
I K Cも同様に、実体験したり自ら考える内容であり、近年では、小中学校の総合学習や防災教育に用いられる事例が増えている(15)。
小学校教育の中でI K Cを取り入れた検証(城戸・片桐・仲矢、2019)では、任意参加の課外活動として開催し、参加群と不参加群をペーパーテストで比較すると、前者の方に明確な学習効果が見られた。さらに1年後に再度開催し、直後と半年後にペーパーテストを実施すると、I K Cに2度とも参加した群では学習効果が半年後も持続していることが検証された(城戸・仲矢・片桐、2020) 。
一方で、地域のイベントでのI K Cには、小学校中学年以下や幼児の参加が増える傾向にあるという(16)。
幼い子供達には、父母など大人達が帯同する。こうして大人達を集めることも、実はI K Cの意図の一つである。
学校教育に限らず、子供から大人まで幅広い年代層の人々を集めて防災知識への関心を引き出すI K Cの試みは、積極的な評価に値する。

【考察と評価】
これまでに見たI K Cの特徴などを踏まえ、その評価について検討する。
I K Cは、トークンエコノミー法を導入した「かえっこバザール」の仕組みで子供達を魅きつけ、自ら体験したり考えることで、楽しみながら防災に関する体験や知恵を得る機会を提供している。それは、運営者や見学者として多くの地域の大人達も呼び寄せ、幅広い年齢層に防災に関する興味を喚起する試みでもある。
プラス・アーツは、I K C等の防災プロジェクトが、地域主導のイベントとして定着して継続的に開催されることを目的として活動している。
これが実現できれば、子供達の防災に関する学習効果だけでなく、幅広い年齢層の関心を集め、地域全体の防災力の向上が期待出来るだろう。
永田は、様々な場面で「防災教育は、日本の文化の一部である」と語っている。
「イザ!カエルキャラバン!」とプラス・アーツの活動は、子供達や地域全体の防災力の向上と、地域コミュニティ形成に資するために周到にデザインされたものである。これは、デザインや芸術の概念が、防災・減災の分野で社会に貢献し得ることを示す事例であり、文化的活動として評価に値するものである。
2023年で、関東大震災から100年、阪神・淡路大震災から28年、東日本大震災から12年が経過する。
これらを単なる「歴史の教科書の中の出来事」ではなく、これから先の時代を生きる人々に教訓として伝え、今後の防災・減災に活かすため、「+クリエイティブ」な試みが広がることを、筆者は期待している。

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     毛布で担架を作り、負傷者に見立てた人形を運ぶタイムを競う体験ゲーム。毛布の端を巻いて持ち手を作ると握りやすくなり、担架として利用できることを体験して学ぶ。
    (画像出典:イザ!カエルキャラバン!ホームページ>カエルキャラバン活動日記 http://kaeru-caravan.jp/5208 )(NPO法人プラス・アーツ許諾済)
  • 81191_011_31683172_1_2_20221015%e6%9c%ad%e5%b9%8c%e5%8d%97%e5%8c%ba 【資料2】防災体験プログラム「ジャッキアップゲーム」実施例(2022年10月15日開催「「イザ!カエルキャラバン!in札幌市南区」(北海道札幌市))。
     物の下敷きになった人を、ジャッキを使って救出する体験ゲーム。身近なパンタグラフジャッキや、工場や防災倉庫にある油圧ジャッキが利用される。下敷きになっているカエル人形と、上に重しとして乗せられているナマズ人形には、水入りペットボトルを詰めて、20〜30kg程度の重さにしている。
    (画像出典:イザ!カエルキャラバン!ホームページ>カエルキャラバン活動日記 http://kaeru-caravan.jp/blog )(NPO法人プラス・アーツ許諾済)
  • 81191_011_31683172_1_3_20190928%e6%96%b0%e6%bd%9f%e6%b1%9f%e5%8d%97%e5%8c%ba 【資料3】防災体験プログラム「水消火器で的あてゲーム」実施例(2019年9月28日開催「イザ!カエルキャラバン!in江南区文化会館」(新潟県新潟県江南区))。
     消火器の使い方を体験するゲーム。水消火器は地域の消防署に相談すると借りられる場合がある。的はプラス・アーツでレンタルも出来るが、ブックエンドなど身近な物で自作も可能。
    (画像出典:イザ!カエルキャラバン!ホームページ>カエルキャラバン活動日記 http://kaeru-caravan.jp/5410 )(NPO法人プラス・アーツ許諾済)
  • 81191_011_31683172_1_4_20221030%e7%9c%9f%e5%82%99 【資料4】「家具転倒防止まちがいさがし」実施例(2022年10月30日開催「「まびっこカエルキャラバン vol.3」(岡山県倉敷市真備町))。
     2つの部屋を見比べて間違い探しをしながら、家具転倒防止について学ぶプログラム。家具転倒防止グッズの実物を展示し、ワークショップを行うプログラムもある。
    (画像出典:イザ!カエルキャラバン!ホームページ>カエルキャラバン活動日記 http://kaeru-caravan.jp/blog )(NPO法人プラス・アーツ許諾済)
  • 81191_011_31683172_1_5_%e3%81%95%e3%82%93%e3%81%a1%e3%81%8b%e3%82%b7%e3%83%a3%e3%83%83%e3%83%95%e3%83%ab 【資料5】「防災カードゲーム シャッフル」実施例(2022年9月17・18日開催「イザ!3くまキャラバン!in さんちか」(兵庫県神戸市))。
     プラス・アーツがプロデュースした、災害時に役立つ知識を学べるカードゲーム。「防災機器・インフラ・衛生(感染症対策)・食事」の4つのジャンルの知識が遊びながら学べる。
    (画像出典:イザ!カエルキャラバン!ホームページ>カエルキャラバン活動日記 http://kaeru-caravan.jp/blog )(NPO法人プラス・アーツ許諾済)
  • 81191_011_31683172_1_6_%e7%9c%9f%e5%82%99%e9%98%b2%e7%81%bd%e5%9b%b3%e5%b7%a5%e5%ae%a4 【資料6】「防災図工室」実施例(2022年10月30日開催「まびっこカエルキャラバン vol.3」(岡山県倉敷市真備町))。
     災害時に役立つアイテムを身近な素材で作ることを体験するプログラム。新聞紙を使った紙食器、段ボールを使ったスツールやスリッパ、ゴミ袋でポンチョ等のプログラムがある。また、紙食器で炊き出しや非常食を試食する場合もある。
    (画像出典:イザ!カエルキャラバン!ホームページ>カエルキャラバン活動日記 http://kaeru-caravan.jp/blog )(NPO法人プラス・アーツ許諾済)
  • 81191_011_31683172_1_7_20220626%e4%b8%89%e9%87%8d 【資料7】「お家の防災グッズなぁに?クイズ」実施例(2022年6月26日開催「イザ!カエルキャラバン!㏌ あがたっこ with キュマちゃん」(三重県四日市市))。
     防災グッズを1分間で暗記していくつ覚えられるか試すクイズ。備蓄に必要な数量や様々な使いみちも学ぶ。
    (画像出典:イザ!カエルキャラバン!ホームページ>カエルキャラバン活動日記 http://kaeru-caravan.jp/blog )(NPO法人プラス・アーツ許諾済)
  • 81191_011_31683172_1_8_%e8%b3%87%e6%96%99%ef%bc%98_page-0001 【資料8】内閣府「防災に関する世論調査(令和4年9月調査)」調査結果(一部抜粋)。
    「ここ1〜2年の間で、自然災害への対処などを家族や身近な人と話し合ったことの有無」についての問いに対し、「ない」と答えた割合が全体で36.9%となり、性別では男性、年齢別では18〜29歳でその割合が高い。
    また、国や自治体等が実施する防災訓練への参加または見学の有無についての問いに対し、「参加や見学したことはない」「防災訓練が行われていることを知らなかった」の回答を合計すると、全体で50.1%に達し、特に30歳代でその割合が高く、防災訓練への関心の低さが窺われる。
    (出典:内閣府「防災に関する世論調査(令和4年9月調査)」を基に筆者作成。)
     https://survey.gov-online.go.jp/r04/r04-bousai/gairyaku.pdf ) (2023年1月28日アクセス)

参考文献

本研究にあたり、N P O法人プラス・アーツ理事長 永田宏和様には、2022年12月18日にオンラインによるインタビューにご協力頂きました。ここに心より御礼申し上げます。

【註】
(1)内閣府「防災に関する世論調査(令和4年9月調査)」によると、「自然災害への対処などを家族や身近な人と話し合ったことの有無」について、「ない」という回答が全体で36.9%である。また、「防災訓練への参加または見学の有無」について、「参加や見学したことはない」「防災訓練が行われていることを知らなかった」の回答を合計すると、全体で50.1%に達し、特に30歳代でその割合が高い(資料8)。この結果から、防災への関心が決して高まっていないことが窺える。

(2)永田宏和氏
 1968年生まれの兵庫県出身。大阪大学大学院修了。大手ゼネコン勤務時代に阪神・淡路大震災に遭遇する。2001年に退社後、アートイベントやまちづくりの企画・プロデュース会社「iop都市文化創造研究所」を設立。2005年のI K C開発に携わり、2006年にN P O法人プラス・アーツを設立し理事長を務める。
 2012年8月から「デザイン・クリエイティブセンター神戸」(K I I T O)副センター長。2021年4月から同センター長に就任した。

(3)藤浩志氏
 1960年生まれの鹿児島県出身。京都市立芸術大学大学院修了。美術家。N P O法人プラス・アーツ副理事長。その他、2022年11月現在、株式会社 藤スタジオ代表、秋田公立美術大学教授、NPO法人アーツセンターあきた理事長、秋田市文化創造館館長を務めている。
(藤スタジオホームページ https://www.fujistudio.co/home )

(4)NPO法人プラス・アーツ
 永田宏和氏が、I K Cを全国展開する足掛かりとして、2006年に設立したN P O法人。本拠地を神戸市の「デザイン・クリエイティブセンター神戸」(愛称:K I I T O)に置く。
 防災を中心に様々な社会課題に対し、その名の通り「+art」の発想で解決を図ることを目的に活動している。
 防災に関する主な活動は以下の通りである。
 ・防災教育プログラムの開発・普及
 ・地域での防災教育を担う人材の育成
 ・自治体の防災学習施設での展示等の企画・監修
 ・企業・自治体と連携した防災啓発活動
(NPO法人プラス・アーツホームページ http://plus-arts.net )

(5)IKCが開発された2005年には、兵庫県と神戸市が共催する阪神・淡路大震災10周年事業の一つとして、「神戸カエルキャラバン」の名称で神戸市内の7箇所で開催され、約7,000人を動員した。
 以下、永田氏によると、神戸市は当初、「震災からの復興の象徴」として、子供達の笑顔を集めて全国へ発信しようと「かえっこキャラバン」単体での開催を企画し、藤氏と親交のあった永田氏を通じて開催を依頼していた。
 構想を進める中で二人は、このイベントに震災の教訓を伝える意義も持たせたいと考える。そこで、同時期に永田が大学生らと進めていた、神戸市内の被災経験者から体験談を募るプロジェクト(本文にて後述)を基に防災体験プログラムを開発し、「かえっこキャラバン」と組み合わせることを発案した。
 こうして企画・開催された「神戸カエルキャラバン」は活況を呈し、これを見た永田は、防災教育を全国的な課題と捉え、2006年にプラス・アーツを設立。名称を「イザ!カエルキャラバン!」と改めて、全国展開を開始した。

(6)2020年に新型コロナウィルス感染症の流行が始まって以降は、感染防止のため、「かえっこバザール」を取りやめ、スタンプラリーによる景品交換などで代替している事例が見られる。
(カエルキャラバン活動日記 http://kaeru-caravan.jp/blog )

(7)当初は、地震に関する内容が主だったが、近年では、風水害等に関するプログラムも追加されて多様化している。新たなプログラムは、企業や自治体との協働で開発したものを、関係機関の了承を得た上で、プラス・アーツが展開しているケースがある。
 この他、オプションとして主催者や開催地の人々が考案したオリジナルのプログラムが取り入れられる事例もある。
(カエルキャラバン活動日記 http://kaeru-caravan.jp/blog )

(8)「カエルポイント」は永久不滅で、他会場で開催されるIKCや「かえっこバザール」でも利用できる
(出典:イザ!カエルキャラバン!ホームページ>カエルポイントについて http://kaeru-caravan.jp/kaeru-point )

(9)永田氏によれば、「楽しみながら防災を学ぶ」と言うI K Cの趣旨に関し、初期には行政の防災関係者などから強い抵抗感を感じたことが何度かあったという。
 2005年の「神戸カエルキャラバン」の時には、神戸市の記念事業担当の職員と共に、市内の開催地近くの消防署を訪問し協力を依頼したが、最初は消防署担当者から企画内容に理解を得られず「こんな企画には協力できない」と強く拒否された。粘り強く交渉を重ねてなんとか協力を得られて開催に漕ぎつけたところ、多くの子供達や家族が嬉々として防災イベントに参加する様子を見た消防署担当者が「こんなことは初めてだ」と驚きながら、当初の対応を謝ったと言う。その後は、プラス・アーツの防災プロジェクトを神戸市消防局が監修したり、神戸市役所4号館(消防局や危機管理センターが入る)1階の防災展示コーナーにプラス・アーツが企画協力するなど、相互連携が築かれている。
 また、国の防災担当機関の職員や関東地方のエネルギー関連企業の幹部からは、「黒船のようなやり方」や「サーカス興行」などと言う表現で強烈に非難されたこともあったという。
 しかし、いずれの機関・企業も、その後にI K Cの活況に注目した上で、プラス・アーツとの協働事業を行なっている。

(10)「企画・プランナー、建築家、デザイナー、アーティスト」等を想定する。

(11)「人と人を繋ぐ人、自治体職員、社会福祉協議会職員、地元の大学の先生・学生、N P O法人」等を想定する

(12)「その土地に暮らす人、町内会役員、マンション管理組合理事、P T A役員、地元企業社員」等を想定する。

(13)2019年初回の開催に当たっては、公益財団法人福武教育文化振興財団の助成を受け、プラス・アーツと永田氏による講演会と事前研修会が行われた。

(14)イザ!カエルキャラバン!ホームページ>世界に広がるBOSAIの輪より
( http://kaeru-caravan.jp/bosai )

(15)永田氏によると、数年前から神戸市内の小学校の総合教育の中で取り入れられ、今後さらに市域全域に展開される動きがある。また、2022年度に神戸市西区の中学校で取り入れられた事例がある。

(16)筆者がボランティアスタッフとして参加した「イザ!3くまキャラバン!inさんちか」(2022年9月17・18日開催。神戸地下街株式会社主催)では、筆者は小学校中学年以下の低年齢の子供達の参加が多い印象を受け、これが意外に思われた。永田氏に聞くと、統計や記録はないが、I K C参加者が低年齢化している傾向は感じているという。この傾向を受け、開催に関するコンサルティングを行う際には、紙芝居や着せ替えゲームなど年齢層に合わせたプログラムを組み込むことを提案していると言う。

【参考文献等】

城戸楓・片桐昌直・仲矢史雄「防災訓練・教育における楽しめる防災プロジェクトの効果の検証」『大阪教育大学紀要 総合教育科学』第68巻P.211-219 2020年

城戸楓・仲矢史雄・片桐昌直「遊びながら学ぶ防災プログラムにおける学習効果の持続」 『日本教育工学会論文誌』第44巻4号P.377-386 2021年

木村玲欧・林春男「地域の歴史災害を題材とした防災教育プログラム・教材の開発」『地域安全学会論文集』第11巻P.215-224 2009年

特定非営利法人プラス・アーツ『楽しみながら学ぶ防災イベント「イザ!カエルキャラバン!」防災体験プログラムマニュアルBOOK』特定非営利法人プラス・アーツ 2011年

地震イツモプロジェクト編(企画:永田宏和)『地震イツモノート』 木楽舎 2007年

地震イツモプロジェクト編(監修:N P O法人プラス・アーツ)『地震イツモマニュアル』 ポプラ社 2016年

片田敏孝『人が死なない防災』 集英社 2012年

片田敏孝『人に寄り添う防災』 集英社 2020年

近藤誠司『防災教育学の新機軸 まなび合いのアクションリサーチ』 関西大学出版部 2022年

内閣府「防災に関する世論調査(令和4年9月調査)」
https://survey.gov-online.go.jp/r04/r04-bousai/index.html#T2 (2023年1月28日アクセス)

特定非営利法人プラス・アーツ ホームページ
http://plus-arts.net  (2023年1月28日アクセス)

イザ!カエルキャラバン! ホームページ
http://kaeru-caravan.jp (2023年1月28日アクセス)

藤スタジオホームページ
https://www.fujistudio.co/home (2023年1月28日アクセス)

Innovative Commons/創造の広場 
https://souzou.online/nagata/ (2022年10月22日アクセス)

淺沼組「GOOD CYCLE TALK #03」
https://www.goodcycle.pro/talk/337/ (2023年1月28日アクセス)

この他、以下の講演会・イベントの内容を参考にしている。

・福武教育文化振興財団フォーラム「ここに生きる、ここで創る」Vol.8 -「災害」と「文化」のいま、むかし、これから-(2019年1月19日開催)

・N P O法人プラス・アーツ「イザ!カエルキャラバン!合同研修会」(2022年7月30日開催)

・神戸地下街株式会社「イザ!3くまキャラバン!inさんちか」(2022年9月17・18日開催)

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