卒業研究レポートの公開にあたって
京都芸術大学通信教育課程 芸術教養学科は2013年4月に開学しました。今年度11周年を迎えたばかりの新しい学科です。
オンラインでの学びを中心にカリキュラムを構築し、3,300人を超える学生(2024年5月現在)が在籍しています。
毎年、4月と10月に入学生を迎え、3月と9月に卒業生を送り出してきました。
芸術教養学科では、世界のさまざまな芸術史、東アジアを源流とする日本の伝統的な文化、そして、今日のデザインのあり方や可能性について学びます。伝統文化とデザイン思考を同時に学修することで、「モノの見方、感じ方」を変え、暮らしのなかに芸術を取り入れるとともに、それを活かす方法、すなわちデザイン思考を身につけることをめざします。
芸術教養をFineArtではなく、LiberalArtsと捉え、実践的に考える行為、その集大成こそが、卒業研究「文化資産評価報告書」の作成にほかなりません。
文化資産評価報告書とは、本学科で学ぶなかで培った興味関心に基づき、地域の文化遺産、地域やインターネット上で実践されているデザイン活動、文化・芸術活動などの事例について考察したものです。文化とは社会生活の結晶であり、その地域や風土、そしてそこに生きる人々によって育まれ、形成されるものでしょう。報告書では、自身が触れた、あるいは発見した文化資産について、デザインとしてどのように優れているのかが真摯に考察され、独自の見解が述べられています。
これまでの卒業者数、また公開された文化資産評価報告書の件数は以下の通りです。
2015年3月 卒業生76名 文化資産評価報告書の公開24件
2015年9月 卒業生8名 文化資産評価報告書の公開1件
2016年3月 卒業生67名 文化資産評価報告書の公開27件
2016年9月 卒業生21名 文化資産評価報告書の公開2件
2017年3月 卒業生96名 文化資産評価報告書の公開36件
2017年9月 卒業生21名 文化資産評価報告書の公開9件
2018年3月 卒業生103名 文化資産評価報告書の公開44件
2018年9月 卒業生36名 文化資産評価報告書の公開19件
2019年3月 卒業生129名 文化資産評価報告書の公開47件
2019年9月 卒業生29名 文化資産評価報告書の公開10件
2020年3月 卒業生133名 文化資産評価報告書の公開49件
2020年9月 卒業生43名 文化資産評価報告書の公開11件
2021年3月 卒業生174名 文化資産評価報告書の公開57件
2021年9月 卒業生55名 文化資産評価報告書の公開19件
2022年3月 卒業生190名 文化資産評価報告書の公開71件
2022年9月 卒業生83名 文化資産評価報告書の公開37件
2023年3月 卒業生252名 文化資産評価報告書の公開103件
2023年9月 卒業生97名 文化資産評価報告書の公開41件
2024年3月 卒業生254名 文化資産評価報告書の公開88件
2024年9月 卒業生106名 文化資産評価報告書の公開43件
なお、この「芸術教養学科WEB卒業研究展」には、提出されたすべての卒業研究「文化資産評価報告書」が公開されているわけではありません。また、優秀作品だけが並んでいるわけでもありません。本人が公開を希望するとともに、研究対象の取材先から許諾を得られたものだけが掲載されています。そのため、秀逸なレポートもあれば、そこまでではないもの、修正すべき箇所があるものなども一緒に並んでいます。もちろん、優れたレポートであっても、本人の意向や取材先からの許可が下りなかった等の理由で、掲載されていない報告書も少なくありません。
この文化資産評価報告書は、レポートとして提出されたものですが、同時にアートリソースのガイドブックにもなっています。全国各地、いや、世界各地の文化遺産がどれほど多彩で豊穣なものなのか、それを知る絶好の機会にもなりますので、ぜひご覧ください。
2024年10月8日
宮 信明(芸術教養学科主任:准教授)
科目の概要
特定のデザイン・芸術活動やその成果としての地域の文化資産についての文化資産評価報告書を作成します。
皆さんが、学科専門教育科目群をはじめとする本学科でのこれまで学びを集積し取り組むのが「卒業研究」です。それぞれの興味関心や生活環境に基づき、地域やインターネット上で実践されているデザイン活動や文化・芸術活動などの取り組みを取り上げ考察し、「文化資産評価報告書」(同時にアートリソースのガイドブックともなるもの)としてまとめます
授業目標
本科目では、さまざまな場で実践されているデザイン・芸術活動に関して情報収集を行い分析・考察して報告書を作成します。作成を通じて、その活動の長短を歴史的かつ批判的に評価する能力を身につけます。また可能な場合には自らの携わる制作活動や教育普及活動なども客観的な評価対象として取り上げることが可能です。
評価基準
・文章の表記の正確さと構成の明瞭性
・授業の趣旨および課題内容の理解
・受講生自身の見解の明示
・着眼点の独自性
以上の評価観点を総合的に満たしていることを合格の基準とします。
課題の概要
課題内容
【文化資産評価報告書の作成】
自身の問題関心に沿ったデザイン・芸術活動の評価報告書を作成します。
評価対象は地域の文化遺産に関わるもの、今日的な制作、上演活動のいずれを選んでも良いです。
ジャンルも造形物、食文化、出版文化、景観、インターネットを活かしたソーシャル・デザインの取り組みなど、制作的な契機があれば何でも結構です(棚田や並木も自然の風景というだけではなく、人工的な制作物でもあります)。自分自身の関わる芸術的な活動をとりあげることもできます。特に評価対象に関して、どのような点がデザインとして優れているかも考察して下さい。
「芸術教養演習1・2」で取り上げた事例でも結構です。
また、報告に際しては必ず次の5点を明記してください。
1: 基本データと歴史的背景
2: 事例のどんな点について積極的に評価しているのか
3: 国内外の他の同様の事例と比較して何が特筆されるのか
4: 今後の展望について
5: まとめ
以上の5点の順序は問いません。
課題の取り組み方
1)受講の順序
本科目は、「履修の前提条件」に記載された単位数(1年次入学生の場合122単位、3年次入学生の場合60単位)を修得していれば、配当年次以降に履修できます。ただし、なるべく「芸術教養研究1~4」「芸術教養演習1・2」の履修を経たのちに受講することを勧めます。
本科目では中間での発表や講評などは行いません。
いわゆる卒業論文ほどのボリュームのある文章を作成することはありませんが、さまざまな芸術活動について、自分の考えを根拠に基づいて表明するためには、特に「芸術教養演習1・2」での発表とディスカッションが有効です。
2)調査対象
芸術、デザインに関する活動であれば、絵画や彫刻のような美術、商業デザインにかぎらず、地域の景観、食文化、行事、コレクション、芸能、地場産業など、制作的な契機が含まれていれば何でも結構です。
取り上げる対象は漠然としたジャンルではなく、できるだけ限定された範囲での具体的な活動を取り上げてください。たとえば「イタリア美術」とか「沖縄の芸能」というよりも、「ホイアンの街並み」「大宜味村の芭蕉布」「出町座におけるクラウドファンディングの活用」などのほうがより精確な議論ができます。
3)書式
報告書には取り上げた事例が明示されたタイトルをつけてください。
また画像とそのキャプションも添えてください。なるべくなら自分で撮影した写真、自分で作成した図表が望ましいですが、書籍等から転載する場合は(文章の場合と同じく)、出典を明記してください。
自分で撮影した写真、自分で作成した図表にも、(〇年〇月〇日、筆者撮影)や(筆者作成)などとキャプションに追記してください。
3200字の本文の章立ては、シラバス「課題の内容」に記してある項目をそのまま用いても結構ですし、より適切な章立てが考えられる場合には、必ずしもその通りにしなくても結構です。