松本 理沙(専任講師)2026年9月卒業時の講評

年月 2026年9月
卒業研究レポートを提出されたみなさん、本当にお疲れ様でした。大学生活の集大成として、みなさんが真剣にレポート課題に取り組まれたことが伝わってきました。

今回私が担当した卒業研究は、以下のようなテーマを扱ったものでした(順不同)。

国立西洋美術館
三鷹天命反転住宅
有栖川宮記念公園
Cathay/HSBC Hong Kong Sevens 2026
道後ハイカラ通り
大ゴッホ展
旭川駅
いわき回廊美術館
《Edmond De Belamy(エドモンド・ベラミーの肖像)》
月春の絵画
横山幸雄
フリーデンスプラッツ(Friedensplatz・平和広場)
名古屋市市政資料館、文化のみち二葉館、文化のみち撞木館のステンドグラス
三富今昔村

多種多様なテーマで初めて知る事例も多く、いずれも大変興味深く拝読しました。どれも大学での学びを活かした、優れたレポートだったと思います。

今回私が拝読した卒業研究のほとんどは、卒業研究レポートで必ず扱わなければならない5点( 1.基本データと歴史的背景 2.事例のどんな点について積極的に評価しているのか 3.国内外の他の同様の事例と比較して何が特筆されるのか 4.今後の展望について 5.まとめ)をきちんと盛り込んだものになっていました。大学のレポートで最も重要なことは、課題に正確に応答することです。この点をしっかりと理解し、レポートに取り組んでおられた点は素晴らしいと思います。
また、今回私が拝読した卒業研究の多くは、様々な学術書や論文を参照してレポートを執筆しておりました。学術的な文章を読み、それをもとにレポートを作成することもまた、大学での学びの重要な点です。

学問に触れ、それを身につけながら卒業まで辿り着いたことを誇りに、ぜひその力をお仕事や日々の生活を通して発揮してください。

今回提出された卒業研究を拝読して、印象に残った点が二点あります。一つ目は、研究対象となる場所や施設に足を運び、自ら丁寧に観察した成果を反映させたレポートが多く見られたことです。資料や文献を参照することはもちろん大切です。一方、現地に足を運ぶことで、資料や文献ではわからなかった情報を得ることもできます。対象の規模や周囲との位置関係、空間の使われ方、人々の行動など、実際に訪れないと知り得ないことはたくさんあるでしょう。今回私が添削した卒業研究の多くには、そうした現地での調査の成果が反映されていました。

二つ目は、身体感覚に着目した研究がいくつか見られたことです。例えば、三鷹天命反転住宅に関するレポートでは、床にある凹凸や、色彩がもたらす身体感覚について論じられていました。また、有栖川宮記念公園に関するレポートでは、植栽や地形に着目して、利用者の身体的な体験の内実が語られていました。
私たちはついつい、文字で理解できる情報にとらわれがちです。しかし、同時に「身体」がどう感じたのかもまた、重要な情報源になりえます。身体の動き、視線の変化、音や光、温度といった要素が、その場所でどのように機能しているのか。上記で紹介したレポートは、身体感覚を捉えるだけでなく、それを、論じる対象の意義にまで結びつけていた点が優れていました。

これら二つのポイントには、いずれも、一見すると捉えどころのなさそうな情報をしっかりと言葉にし、レポートに反映しているという共通点があるように思います。細部を観察し、それを言葉にするという経験は、今後のみなさんの人生において、きっと役に立つものです。ぜひ卒業研究で得た経験や成果を忘れず、日々の暮らしに生かしていただければと思います。

以上が私からの好評となります。ご自身の成果にも成績にも満足された方、思った成績ではなく悔しい思いをされている方など、卒業研究の末に感じられることは様々だと思います。ですが、先ほど述べたように、みなさんが本学で多くのことを学んだことには変わりありません。美術館や劇場での作品鑑賞、目の前に広がる風景、日々耳にするニュース、友人とのちょっとした会話に対する捉え方が大学入学前と少しでも変わっているならば、それは皆さんがたくさんのことを学び、その成果を日々に活かしている証拠です。これまで学んだことを活かし、今後ますますご活躍されることを心から祈っております。