岩元 宏輔(准教授)2025年9月卒業時の講評

卒業研究レポート「文化資産評価報告書」に取り組まれたみなさま、大変おつかれさまでした。3200字につめこまれたみなさんの学びの軌跡を、1つ1つ味わいながら拝見させていただきました。
私が担当させていただいたレポートのテーマや調査対象は以下のとおりです。(順不同)
・ 水辺風景と映像が響き合うポップラ劇場市民野外上映会——街の景観再発見と公共意識の醸成を物語の力を借りて
・ 大阪府和泉市発祥、さをり織り ~布を織るのではなく、自分を織る。~
・ 「東京、鷹の台商店街を小さな商店から観察する」
・ 「2k540 AKI-OKA ARTISAN 高架下商業施設から生まれる新たな共創」
・ 複合施設「NAWATE」-ゲストハウス「とりいくぐる」を中心としたNAWATE PROJECT-
・ 障害者との協働と共生のまなざしをつくる「華麗になるひののめぐみ焼きカレーパン」
・ いつ(五つ)の世(四つ)までも
・ 「夢二郷土美術館 夢二生家記念館・少年山荘」-竹久夢二の世界を五感で体験する場
・ 時代を繋ぐもの〜奥野家住宅にみる古民家再生〜
・ K-カルチャーコンテンツに現れた伝統美学の文化資産的価値研究
・ 種村有菜が少女漫画で表現する、デザインとしての「美」
・ ストリートピアノとサウンドスケープ:下北沢の調査から
・ 時間と場が生み出す学び――モデルウォーキングワークショップのデザイン――
・ 空間とコミュニティのデザインが織りなす成田祇園祭 この先に必要な祭のデザインとは
今回の卒業研究においても、非常に幅広い視点と切り口から文化・芸術活動やコミュニティなどを捉えたものが揃いました。水辺や高架下、商店街や祇園祭といった「地域と空間」を起点にしたもの、さをり織りや古民家再生、焼きカレーパンといった「ものづくりや生活文化」に焦点を当てたもの、さらには夢二や種村有菜の作品、K-カルチャーといった「芸術作品・コンテンツ」を取り巻く活動についてご自身なりの視点で考察したものもありました。また、ストリートピアノやモデルウォーキングなど、身体性や音の体験に関わる調査も見られるなど、「人と人とが関わる場のデザイン」や「過去と現在・未来をつなぐ価値の再発見」といった芸術教養学科らしい視点での調査が行われており、まさに学びの集大成として取り組まれたことが想像されました。
なかでも特に優れたレポートとして印象に残ったものを紹介します。
・ 障害者との協働と共生のまなざしをつくる「華麗になるひののめぐみ焼きカレーパン」
東京都日野市で展開されている社会福祉法人夢ふうせんの「華麗になるひののめぐみ焼きカレーパン」を取り上げたレポートです。当該事業が地域活性化に寄与するとともに、障害者を対等な存在として捉えるきっかけを生み出していることについて丁寧に論じています。取り組みのユニークさを示しながら、障害者の社会参加を「弱者支援」ではなく「協働・共生」の視点から考えるということについて、読み手に示唆を与える内容でした。
・ ストリートピアノとサウンドスケープ:下北沢の調査から
「シモキタまちピアノ」を事例に、音楽によるまちづくりの可能性と課題について考察したものです。SD法を用いた印象評価、音種の記録、現地録音による再聴分析といった複数の手法を組み合わせてサウンドスケープを調査し、下北沢と渋谷マークシティのストリートピアノを比較することで対象の特異性を浮かび上がらせています。「音」という観点からまちづくりを捉え直し、学術的手法を主体的に応用しようした試みが素晴らしかったです。
卒業研究では、単なる活動紹介にとどまらず、対象の背景や実態に踏み込み、比較対照を行いながら見えてくる文化的な価値や未来への可能性について調査・考察することが求められます。もちろん報告書としてのクオリティも重要ですが、文化資源や芸術活動を「自分の目で見て、自分の言葉で語ろう」とする態度で臨んだこと自体も、この学びの大きな成果だと思います。こうした取り組みを積み重ねていくことで、対象を理解するだけでなく、自分自身の関心や価値観がより鮮明になっていくことにもつながるのではないかと思っています。ぜひ今後も、身近なものや体験を題材にしながら、自分自身の探究の軸を深めていってください。この経験そのものを誇り、糧にして、これからまたよりよい日々を紡いていかれることを心から願っております。
私が担当させていただいたレポートのテーマや調査対象は以下のとおりです。(順不同)
・ 水辺風景と映像が響き合うポップラ劇場市民野外上映会——街の景観再発見と公共意識の醸成を物語の力を借りて
・ 大阪府和泉市発祥、さをり織り ~布を織るのではなく、自分を織る。~
・ 「東京、鷹の台商店街を小さな商店から観察する」
・ 「2k540 AKI-OKA ARTISAN 高架下商業施設から生まれる新たな共創」
・ 複合施設「NAWATE」-ゲストハウス「とりいくぐる」を中心としたNAWATE PROJECT-
・ 障害者との協働と共生のまなざしをつくる「華麗になるひののめぐみ焼きカレーパン」
・ いつ(五つ)の世(四つ)までも
・ 「夢二郷土美術館 夢二生家記念館・少年山荘」-竹久夢二の世界を五感で体験する場
・ 時代を繋ぐもの〜奥野家住宅にみる古民家再生〜
・ K-カルチャーコンテンツに現れた伝統美学の文化資産的価値研究
・ 種村有菜が少女漫画で表現する、デザインとしての「美」
・ ストリートピアノとサウンドスケープ:下北沢の調査から
・ 時間と場が生み出す学び――モデルウォーキングワークショップのデザイン――
・ 空間とコミュニティのデザインが織りなす成田祇園祭 この先に必要な祭のデザインとは
今回の卒業研究においても、非常に幅広い視点と切り口から文化・芸術活動やコミュニティなどを捉えたものが揃いました。水辺や高架下、商店街や祇園祭といった「地域と空間」を起点にしたもの、さをり織りや古民家再生、焼きカレーパンといった「ものづくりや生活文化」に焦点を当てたもの、さらには夢二や種村有菜の作品、K-カルチャーといった「芸術作品・コンテンツ」を取り巻く活動についてご自身なりの視点で考察したものもありました。また、ストリートピアノやモデルウォーキングなど、身体性や音の体験に関わる調査も見られるなど、「人と人とが関わる場のデザイン」や「過去と現在・未来をつなぐ価値の再発見」といった芸術教養学科らしい視点での調査が行われており、まさに学びの集大成として取り組まれたことが想像されました。
なかでも特に優れたレポートとして印象に残ったものを紹介します。
・ 障害者との協働と共生のまなざしをつくる「華麗になるひののめぐみ焼きカレーパン」
東京都日野市で展開されている社会福祉法人夢ふうせんの「華麗になるひののめぐみ焼きカレーパン」を取り上げたレポートです。当該事業が地域活性化に寄与するとともに、障害者を対等な存在として捉えるきっかけを生み出していることについて丁寧に論じています。取り組みのユニークさを示しながら、障害者の社会参加を「弱者支援」ではなく「協働・共生」の視点から考えるということについて、読み手に示唆を与える内容でした。
・ ストリートピアノとサウンドスケープ:下北沢の調査から
「シモキタまちピアノ」を事例に、音楽によるまちづくりの可能性と課題について考察したものです。SD法を用いた印象評価、音種の記録、現地録音による再聴分析といった複数の手法を組み合わせてサウンドスケープを調査し、下北沢と渋谷マークシティのストリートピアノを比較することで対象の特異性を浮かび上がらせています。「音」という観点からまちづくりを捉え直し、学術的手法を主体的に応用しようした試みが素晴らしかったです。
卒業研究では、単なる活動紹介にとどまらず、対象の背景や実態に踏み込み、比較対照を行いながら見えてくる文化的な価値や未来への可能性について調査・考察することが求められます。もちろん報告書としてのクオリティも重要ですが、文化資源や芸術活動を「自分の目で見て、自分の言葉で語ろう」とする態度で臨んだこと自体も、この学びの大きな成果だと思います。こうした取り組みを積み重ねていくことで、対象を理解するだけでなく、自分自身の関心や価値観がより鮮明になっていくことにもつながるのではないかと思っています。ぜひ今後も、身近なものや体験を題材にしながら、自分自身の探究の軸を深めていってください。この経験そのものを誇り、糧にして、これからまたよりよい日々を紡いていかれることを心から願っております。