高知県におけるよさこい祭りの在り方 -魅力と展望-

中山 野乃花

Ⅰ.基本データと歴史的背景
・基本データ
よさこい祭りとは、1954年に高知県高知市において、第二次世界大戦後の経済復興の足掛かりとなることを目指し、商店街が中心となり誕生した祭りである。毎年8月9日の前夜祭、11、12日の本祭、12日の後夜祭・全国大会の4日間高知市の競技場や演舞場で約180チーム、15000人の踊り子が手に持った鳴子を鳴らしながら乱舞する。よさこい祭りの会場には、競演場と演舞場がある。この違いは、審査があるのが競演場、審査がないのは演舞場である。チームの踊りや音楽、地方車など全体の審査が行われる。競演場や演舞場に関わらず会場ごとに用意された個人賞メダルが踊り手に贈られる点もよさこいに参加する目的である。チームを先導する地方車の装飾も華やかで、街中がよさこい一色に包まれる南国土佐の夏の風物詩である。よさこいの語源は、一般的には「好さ来い」「良更来」などという字が当てられ意味は、「夜に来てください」「今晩いらっしゃい」と言われている。
よさこい祭りの生みの親として有名な人物は、武政英策である。ペギー葉山が歌って大ヒットした「南国土佐を後にして」の作者であり、よさこい鳴子踊りの楽曲を作った人物である。祭りのルールは ・鳴子(なるこ)を持つこと ・前進しながら踊ること ・「よさこい鳴子踊り」のフレーズを入れること ・チームの先頭を走る音響トラック(地方車)を1台用意する。 決まりが最小限でその他は自由にしてよいというスタイルであるため年齢や性別・国籍を問わない。
・ 歴史的背景
空襲や南海地震によって活気を失っていた市民を元気づけるため、隣県の徳島県の「阿波踊り」に対抗する祭りとして1954年にこの祭りは生まれた。ライバル意識のエネルギーがよさこいの独自の爆発力の源泉となった。作曲家の武政英策が田畑で鳥を追い払う道具であった「鳴子」を楽器として使うことを発案し、道具を持って踊るということで「阿波踊り」との差別化をはかっている。

Ⅱ.事例のどんな点について積極的に評価しているのか
よさこい祭りは、武政英策が「伝統芸能の型は時代に合わせて変えていければよい」と考え楽曲の自由なアレンジを許可したことによって伝統芸能でありながらロックやヒップホップなど時代の流れに合わせて変化を続け、時代の感性を取り込んでいる祭りである。演舞内容のオリジナル性や衣装などに対して自由度を持たせているため、参加チームごとの特色があり、競技性が高いので毎年参加しても飽きることのない祭りとなっている。
このようなことから、毎年国内外の観光客約90万人以上集客し、経済効果は約80億円程度にもなる。高知県最大の観光資源としての地位を確立し、よさこい祭りは地域活性化に大きく貢献している。上記のことから、変わり続けることがよさこいの伝統であるといえる。その在り方は、伝統を持続可能な「イベント」として県内外に定着させていることに成功していると評価でき、祭り考案時に武政英策が考えていた「他の祭りとの差別化」ということも同時に達成できている点も評価できる。

Ⅲ.国内外の他の同様の事例と比較して何が特筆されるのか
国内での伝統的な踊りを軸としたお祭りとして、隣県の徳島県徳島で毎年8月12日から15日に開催される阿波踊りが挙げられる。この祭りは、400年以上の歴史をもち、日本各地で開催される盆踊りの中でも最大規模を誇るといわれており、日本を代表する祭りの一つでもある。踊る人も見る人も同じ阿呆なのだから楽しまずに踊らないのは損だという意味がある、「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損」というフレーズは全国的に有名であり、その知名度の高さがうかがえる。阿波踊りは伝統的な決まった型の踊りを踊ることになっている。そのため、技術や完成度でなく踊っているときの喜びや解放感など大切にする。長い年月受け継がれている型を継承していくことを重要視しており、変えないことこそが価値であり阿波踊りの在り方である。
このことは、前段で述べた、「変わり続けることがよさこいの伝統である」ということとは対照的であり、阿波踊りは少子高齢化による踊り手の減少や、変わらないことによるコンテンツのマンネリ化、観光客の減少、それらによっておこる祭りの赤字運営化など課題が多く見られている。
よさこい祭りでは、自由度の高さや毎年変わる演舞内容など、コンテンツがマンネリ化せず、県内外からの参加チーム増加傾向(2023年度は160チーム、2024年度は189チーム、2025年度は190チームの参加があった。)にあり、リピーターの観客やよさこい関連の移住なども多くある。上記のことから、祭りの持続可能性という点は全国の他の祭りと比べても特筆すべきものであるといえる。

Ⅳ.今後の展望について
祭りの演舞の内容は自由で多くの人に開かれたものであり、観覧も基本的には無料(一部の演舞場では有料の桟敷席が設定されている)と、踊り子と観客の両方が参加しやすいものとなっている。ふるさと納税の活用によってよさこい祭りの運営や会場設営を行ったり、どこいこサービスNeoというサービスを展開し チームがどこで踊っているかをリアルタイムで把握できるシステムが進化していることで、自分の好きなチームを探したり、競演場や演舞場で次にどのチームが踊るのかということを知ったりすることが出来る。YouTubeなどの配信サービスを活用し現地に行かなくてもよさこいの熱狂を感じることが出来るサービスの展開も進んでいる。これらのことから、さらに「よさこい祭り」がより身近なものとして認知されていくであろうと考えている。
しかし一方で、よさこい祭りの参加費は約3万円から8万円となっており、参加費が高額なことが理由で参加を見送る人も多くいることも現状である。今のよさこい祭りのクオリティを下げることなくクラウドファンディングなどの資金調達を行い、参加しやすい参加費にすることも改善点としてあげられる。
行政としても、よさこい祭りをきっかけとした移住の促進にも力を入れており、よさこい移住は全国のよさこい人の高知に住みたいという気持ちを応援しており情報を発信したり、相談会やイベントを設けたりしているので、今後も、多くの人がよさこいを通じて高知県とかかわりを持てるようになると考えられる。
また、夏のよさこい祭り本番とは別に、2026年10月25日から12月6日まで「よさこい高知文化祭」と呼ばれるイベントが開催され、100万人規模の来場が見込まれている。この文化祭でよさこいを中心として高知県の文化や魅力を発信することができれば、高知県民や県内外の人が、よさこい祭りの地域における伝統の持続可能性に対する貢献度を再認識できる機会となる。

Ⅴ.まとめ
この研究を通して自分の住んでいる高知県のよさこい祭りについて調べ考察することができた。 その中で、高知県と徳島県はそれぞれ少子高齢化や参加費の高騰が課題となっており、今後の参加者の減少が懸念されている。参加費を抑え、県外へのPR活動を強化することで、さらなる盛り上がりが期待される。
今後も高知よさこい情報交流館への訪問や、実際に自分が参加することで、祭りの歴史や魅力を深く学び、他の伝統的な祭りとの違いや今後の発展のための考察をさらに深めていきたいと考える。

  • よさこいに参加した際の写真① 2025年8月11日撮影(非掲載)
  • よさこいに参加した際の写真② 2025年8月11日撮影(非掲載)
  • よさこいに参加した際の写真③ 2025年8月11日撮影(非掲載)
  • よさこいに参加した際の写真④ 2025年8月11日(非掲載)

参考文献

よさこい祭り振興会編「よさこい祭り公式ガイド2025」株式会社ほっとこうち、2025年
日本の祭りの会編「行ってみたい!日本の祭り」岩崎書店、2025年
よさこい祭り振興会編「よさこい祭り公式ガイド2024」株式会社ほっとこうち、2024年
久保田裕道編「日本の祭り解剖図鑑」、エクスナレッジ、2023年
よさこい祭り振興会編「よさこい祭り公式ガイド2023」株式会社ほっとこうち、2023年
川竹大輔編 「よさこいは、なぜ全国に広がったのか ~日本最大の交流する祭り~」、リーブル出版、2020年
こどもくらぶ・神崎宣武・池田和博編「47都道府県ビジュアル文化百科伝統行事」、丸善出版、2017年

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