鳥羽市立海の博物館 ー博物館建築の未来と可能性ー

近田 直子

はじめに

三重県鳥羽市にある鳥羽市立海の博物館(以下「海の博物館」)は海の近くで暮らす人々の過去と現在、そして未来を伝える民俗資料を扱う博物館である。本稿では海の博物館の博物館建築の未来の可能性について、青森県弘前市の弘前れんが倉庫美術館と比較し文化資産としての評価・報告を行うものである(以下、博物館の概要定義に則り両館を同時表記する際は「博物館」とする(1))。

1.基本データと歴史的背景

1-1.鳥羽市立海の博物館(2)

海の博物館は1971年に私立の博物館として創設された。開館以来、海に関わる実物資料を収集し続け、1985年に「伊勢湾・志摩半島・熊野灘の漁撈用具」として国の重要有形民俗文化財に指定される。その後、博物館の老朽化に伴い1992年に現在の場所に全面移転している。移転先の建築の条件は、津波・塩害の対策、100年の耐久性、そして低コストである。設計は建築家の内藤廣である(3)。現在の運営は指定管理者制度を採用し、公益財団法人 東海水産科学協会となっている。

1-2.弘前れんが倉庫美術館(4)

弘前れんが倉庫美術館は、1907年に青森県弘前市に酒造工場として建てられた吉野町煉瓦倉庫を改築し、2020年に現代アートを扱う美術館として開館した。近代産業遺産である建築を残し未来へと継承し、建築と人と芸術との出会いを通じて新たな空間体験を創出することをコンセプトとしている。倉庫の創始者である弘前市の実業家・福島藤助の「この事業が失敗しても、これらの建築が弘前の将来のために遺産として役立てばよい」といった考えが反映された建築である。改修設計は田根剛(5)である。運営はPFI事業として弘前芸術創造株式会社が担っている。

2.比較と特筆点

両者について、時間と空間の観点から比較し特筆点を述べる。

2-1.時間性ー建築が持つ時間ー

時間は区切ることができない連続したものである。しかし、私たちは意識・無意識的に関わらず時間を区切り、意味を与えたり役割を付与している(6)。建築は場所を境界で区切ることにより、そこに訪れた人々に別の時間を与える。海の博物館と弘前れんが倉庫美術館は、地域の博物館建築として異なる時間的背景を持つ。

海の博物館の時間の源となるものは、蓄積された膨大な資料群である。博物館の立地は海に近く海の災害や塩害対策が必須であり、館側の要求は「100年は耐えられる建築」であった。現在の建築は、そうした条件のもとに構想されている。つまり建築の時間としてはゼロからのスタートである。設計者の内藤廣は「建築を成立させていく条件が厳しいと、建築は余計な無駄を省いて、何を中心に組み上げるか、何を最後まで確保するのかが次第に明確になってくる。」「空間はつねに細部に至るまで時間によって組み敷かれている」(7)と述べているように、この建築の軸を時間と定め設計している。情報や物の移り変わりが早い現代において、持続性のあるデザインを考える上で博物館自体が社会的なメッセージを持っているといえるだろう。〔資料1〕

一方、弘前れんが倉庫美術館の建築は、酒造工場の煉瓦倉庫から始まり時代と共に別の目的で使用されてきた。コンクリートが普及していない建設当時、耐久性の点から創始者の福島藤助が煉瓦にこだわったことからも、この建築の軸を時間としていたことがうかがえる(8)。事実100年経った現在に至るまで現存していることからも、建築の時間性はすでに証明されている。そういった意味で、この美術館の建築は開館以前から絶対的な時間性をすでに持ち合わせていた。その上で、修復保存の方法を用い建築の時間を引き伸ばすことで、美術館として生まれ変わらせたのである(9)。昨今の歴史的建造物の取り壊し(10)などの観点からも、建築物の再生・再活用として注目されるものである(11)。〔資料2〕

2-2.空間性ー直線的な時間の中で循環する空間ー

時間と同様、空間も区切りはない連続したものである。建築は空間にあえて不連続な境界を設け意味を付与したものとして立ち現れる。建築の空間は時間と不可分であり、次の日に消え去ってしまってもいいような空間であれば可能性は広がる。しかし、永い存続のためには耐久性が必要となる。つまり建築の時間の長さに比例して空間の可能性は狭くなる。

海の博物館が立つ場所は人の記憶や思い出の地といった要素よりも、災害から資料を守るために適しているという実利的な理由によって選ばれている(12)。しかし、実利や機能といった理由だけでは醸し出せない、人間の根源にある素朴な意識を映し出すような景観を作り出している(13)。建物内の天井や壁の剥き出しの構造体は、素人でもその美しさを直感的に感じることができる(14)。敷地内及びその周辺は森と海に囲まれ、分棟形式による展示棟・屋外・収蔵庫といったゆるやかな高低差の水平移動はシークエンスを構成し、鑑賞者は物理的・感覚的に博物館空間を体験することができるのである。〔資料3-1・3-2〕

弘前れんが倉庫美術館は歴史的建造物とされていることからも、時間の積み重ねによる空間の重みをすでに持ち合わせている。この空間性を最大限に活かすため、制約の多い美術館の機能は捨て建築美を残すといった大胆な決断が行われた。街中に立つ煉瓦造りの建築は視覚的にこの地の歴史を伝えており、現代アートと融合することによって鑑賞者に過去と現在とを繋ぐ体験をもたらしてくれるのである。〔資料4〕

3.評価する点

私たちはいずれかの場所に生まれ、いずれかの場所に住みやがて死を迎える。場所はそれぞれ固有の風土・文化を持つ。風土はその土地の気候・地質・景観などに見られる環境であり、文化は人類の理想を実現していく精神活動や、技術を使い自然を人間の生活に役立てていく過程で作られたモノやコトの表現である(15)。
海の博物館の設計者である内藤廣は、デザインとは「翻訳すること」であり、建築を考える際「場所の持っている固有の価値を翻訳・デザイン出来なければ構築物はその場所に存在する必然性を失う」と述べている(16)。同博物館を取り巻く環境に新奇なものはない。しかし場所が翻訳された風土的な景観と、建築の素材が作り出す経年劣化を含めた独特の美しさを持つ。三重県と青森県という遠く離れた場所にあるふたつの博物館建築を比較するにあたり、絶対的な違いは建築としての物理的な時間であると考えていたが、両者の建築思想や時間・空間、そして場所に対する考え方にはいくつかの共通点がみられた〔資料5〕。その上で、海の博物館は構想の時点で、「風土/文化」「構造/技術」との融合、またその継承の場として100年後の時間を見据えた点と(17)、地方の公共の施設のあり方として社会的な意義を提示している点において評価されるものである。それは海の博物館という場、ひいては博物館建築の未来の可能性を実践的に示すものである。

4.今後の展望

海の博物館は、当時の新しい技術の構造体と昔からある技術とが組み合わさり必要最低限のエネルギーによって維持され、メンテナンスをしなくても展示棟は50年、収蔵庫は100年ほど持つと考えられている。実際、30年以上経つ現在でも経年の味わいとともに美しい景観を保っているのは驚異的なことである。しかし、日本の博物館運営は貴重な資料があるというだけで存続させていくには厳しい現状がある(18)。海の博物館が建設の際に徹底的にこだわった低コストも経済的な理由からである。建築はその役割を大きく果たしているが、より永く続いていくためには私たち市民の理解が不可欠となるだろう。

5.まとめ

公共施設の建築には多くの規制が伴い、中でも博物館建築は資料の展示・保管の観点からもその自由度は狭くなり建築家の思想がすべて反映されることはない。しかし彼らは、わずかな自由の中からその場所に存在することの意味を探し出し、建築の中に溶け込ませていく。鳥羽市立海の博物館と弘前れんが倉庫美術館を比較していく中で、根底にある思想には多くの共通点が見出された。両者は、それぞれの地域の記憶や場の経験といったものを体験できる博物館建築である。それは建築が土地の意味や記憶を教えてくれる装置となり得ることを改めて教えてくれるものである。その上で、活かし残していくことの意義、自分たちが住む場所にそういった建築があることの意味を考えるきっかけになればと願うのである。

  • 81191_011_32086201_1_1_TOP 2022年7月22日 筆者撮影
  • E8B387E69699EFBC91_page-0001 〔資料1〕鳥羽市立海の博物館の時間性
  • E8B387E69699EFBC92_page-0001 〔資料2〕弘前れんが倉庫美術館の時間性
  • E8B387E69699EFBC93-EFBC91_page-0001 〔資料3-1〕鳥羽市立海の博物館の空間性
  • E8B387E69699EFBC93-EFBC92_page-0001 〔資料3-2〕鳥羽市立海の博物館の空間性
  • E8B387E69699EFBC94_page-0001 〔資料4〕弘前れんが倉庫美術館の空間性
  • E8B387E69699EFBC95_page-0001 〔資料5〕比較と分析一覧

参考文献

【註】
(1)文化庁 博物館の概要 の定義に則り、両館を表記する際は「博物館」とする。(https://www.bunka.go.jp/seisaku/bijutsukan_hakubutsukan/shinko/gaiyo/ 2024年7月6日閲覧)

(2)鳥羽市立海の博物館
運営:指定管理者 公益財団法人 東海水産科学協会 ※指定管理者制度:地方公共団体が指定した法人、その他の団体が地方公共団体に代わり公の施設の管理を代行する
所在:三重県鳥羽市浦村町
設立:1971年 「海の博物館」として鳥羽市鳥羽1丁目に開館。1992年に現在地に全面移転
設計:内藤廣建築設計事務所
施行:鹿島建設、大種建設
敷地面積:18,058平方メートル
創設者: 石原円吉・石原義剛
収蔵品:三重県各地に伝わる伝統的な漁具、国内外の船と海女関連資料。重要有形民俗文化財6,879点(2022年時点)
設立経緯:海の博物館は、三重県志摩市出身で水産振興や漁港整備などに尽力した石原円吉が活動の一環として設立した財団法人東海水産科学協会を母体として1971年(昭和46年)に設立された。初代館長である石原義剛は博物館移転の際、建築家の内藤廣に条件として塩害に強く耐久性があり低エネルギー、なおかつ経済的な理由から最低限の建築費用であることを絶対的な条件としてあげている。収蔵庫3棟・展示棟2棟・管理棟・体験学習棟・ギャラリー・カフェがすべて独立した分棟形式をとる。
ミッション・理念:「資料ありき」を博物館活動の基本におき原則として、三重県各地に伝わる伝統的な漁具、国内外の「船」「海女」関連の資料を収集する。資料に対する偏見を最小限に留め「どんなモノでも集める」ことを念頭におく。また、漁業・漁村の文化、海の環境についての啓蒙普及活動を行う。

(3)内藤 廣
 建築家。1950年神奈川県横浜市生まれ。1974年早稲田大学理工学部工学部建築学科卒業。同大学院において吉阪隆正に師事。スペイン・マドリッドのフェルナンド・イゲーラス建築設計事務所・菊竹清訓建築設計事務所勤務を経て、1981年内藤浩建築設計事務所設立。東京大学大学院の助教・教授、同大学副学長・名誉教授退任後、多摩美術大学の学長を務める(2024年現在)。
鳥羽市立海の博物館(当時の名称:海の博物館)はキャリア初期の設計であり7年の歳月をかけ完成され、建築家としての基点ともなった建築である。同建築において、日本建築学会賞・吉田五十八賞・芸術選奨新人賞美術部門などを受賞。

(4)弘前れんが倉庫美術館
運営:PFI事業方式 (弘前芸術創造株式会社)※PFI事業:民間の資金と経営能力・技術力・ノウハウなどを活用し、公共施設等の設計・建設・改修・更新や維持管理・運営を行う公共事業の手法
所在:青森県弘前市吉野町2番地1
設立:2020年
設計:田根 剛(Atelier Tsuyoshi Tane Architects(建築設計))、NTTファシリティーズ(設計統括)、NTTファシリティーズ東北(設計統括)、大林組(構造設計)、スターツCAM(構造設計)、森村設計(設備設計)
施行:大林組
敷地面積:4,526.24平方メートル + (緑地部分) 6,226平方メートル
創設者:福島藤助
収蔵品:煉瓦倉庫の空間性・歴史性、国内外の同時代的な動向を明示する作品、弘前・津軽地方から生まれた現代作品など
設立経緯:弘前市の実業家である福島藤助の事業の一つである酒造業の倉庫として建設、1907年(明治40年)に現在の場所に移転した。福島の事業が失敗しても建築は弘前市の遺産として遺すことができるといった考えから、れんが造りにこだわり建設された。その後、政府米保管用の倉庫として使用される。1988年(昭和63年)、煉瓦倉庫を美術館として活用することが提起され、2020年に美術館として開館するまでの間、さまざまな市民活動や、現代美術作家の奈良美智の展覧会がボランティアによって開催されるなど、美術館としての需要が現実的なものとなる。その後、土地と建物が弘前市の所有となったことから本格的な整備が始まり開館へと至る。展示棟1棟・カフェ、ミュージアムショップ1棟が隣接して立っている。
ミッション・理念:芸術や文化に触れる機会の創出。次世代のアーティスト、クリエイターが育つ文化芸術の創造。地域のクリエイティブ・ハブ(文化創造の拠点)として地域の発展に寄与する。サイトスペシフィック(場所性)・タイムスペシフィック(時間性)を特徴とし、建築や地域に合わせた新たな作品の制作(コミッションワーク)・展示・コレクションを行い、建築の可能性を活かした空間利用を行う。

(5)田根 剛
 建築家。1979年東京生まれ。北海道東海大学芸術工学部建築学科の在学中にスウェーデンのHDKとシャルマス工科大学へ留学。大学卒業後、デンマーク王立アカデミーに留学後、客員研究員として在籍。その後、デンマークのヘニング・ラーセン、イギリスのデビッド・アジャイの建築事務所を経て、「エストニア国立博物館」の国際コンペにおいて最優秀賞を受賞し、ダン・ドレル、リナ・ゴットメとともにDGT.(Dorell.Ghotmeh.Tane / Architects)を設立。博物館は10年間の建築期間を経て開館した。2017年にAtelier Tsuyoshi Tane Architectsを設立。現在フランス・パリを拠点に活動。

(6)中西紹一・早川克美編『時間のデザインー経験に埋め込まれた構造を読み解く(芸術教養シリーズ18 私たちのデザイン2)』、京都造形芸術大学 東北芸術工科大学 出版局 藝術学舎、2014年、p.16)

(7)内藤廣『建築のはじまりに向かって』、王国社、1999年6月20日、p.173-178

(8)福島藤助
1871年青森県弘前市生まれ。福島酒造会社(のちの福島醸造株式会社)創業者。1907年の酒造りの場所の移転に伴い現在の弘前れんが倉庫美術館の基礎となる倉庫を建てた。醸造に関連する多くの建造物の多くはれんが造りであるが、コンクリートが普及していない当時、れんがは建築の資材として耐火性があり頑強であったが費用がかかるものであった。それを賄うためにれんが工場や採石工場を建設している。福島は「たとえ事業に失敗しても、建物を市の将来のために遺産として遺すことができる」とし、れんが造りにこだわった。(田根 剛『弘前れんが倉庫美術館ー記憶を継承する建築ー』、株式会社パイ インターナショナル、2022年7月11日、p.55-57 )

(9)「建築は場所の記憶である。100年前に造られた弘前の煉瓦倉庫には時間の蓄積によってしか成し得ない再現不可能な佇まいが残っていた。建築の寿命が短くなる昨今、新旧の対比による近代的な「改築」ではなく、デザインによる「改装」でもない、古い建物の修復や保存による技術、壁を剥がし発掘するかのような時間を遡る作業、れんがを増殖させて埋め戻したりする手間、それらを「延築(えんちく)」と名付けた。」(田根 剛『弘前れんが倉庫美術館ー記憶を継承する建築ー』、株式会社パイ インターナショナル、2022年7月11日、p.94 )

(10)NHKウェブサイト 「クローズアップ現代 失われゆく”名建築”唯一無二の価値とは?」( https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/blog/bl/pkEldmVQ6R/bp/pw9jKKKEkq/ 2024年7月6日閲覧)
NHKウェブサイト 「クローズアップ現代 ”思い出の建築”消えていいですか?問われるニッポンの建築文化」 (https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4778/ 2024年7月6日閲覧)

(11)「この煉瓦倉庫は外側の煉瓦だけでなく、内部空間もだたの倉庫とはいえない時間の蓄積や独特の質を持つ。日本の古き良き建築が失われる中、過去と未来をつないで日本の新しい文化としたい」(田根 剛『弘前れんが倉庫美術館ー記憶を継承する建築ー』、株式会社パイ インターナショナル、2022年7月11日、p.69)

(12)海の博物館の立地
海に近い環境であるため、外海から離れた入江に面した場所であり、過去の津波の記録が海抜12mであったため、収蔵庫の場所は12.5mと定めた。また塩害対策として耐久性のある建築であることが条件となっていた。

(13)「不思議に思えたのは、ほとんど性能とコストしか問題にしないでつくられたものなのに、懐かしいとか、どこかで見たことがあるという人が結構いることだ。(中略)博物館全体の空間がつくり出す空気が、日常的な眼差しの裏側にある既視感、いわゆるデジャ・ヴュを誘い出しているようなのだ。」(内藤 廣『建築のはじまりに向かって』、王国社、1999年6月20日初版発行、p.184)といった感覚は、空間に対して私たちがそこに私たち自身を投影し見出している感覚であると考えられる(和辻哲郎『風土人間学的考察』、岩波書店、1991年12月5日、「第1章 風土の基礎理論」)。

(14)展示棟は構造の力が集中する頂部のトップライトが設けられ、室内全体に光が行き渡るようになっている。頂部から肋骨のような剥き出しの木材が地面に向かい降りている。植物や生物の構造が美しく感じられるように、専門的な構造がわからなくとも直感的な美が感じられる。収蔵庫はプレキャストコンクリートとポストテンションを組み合わせた構造を持つ。重要文化財を収蔵するため、できるだけ照明が抑えられている。コンクリートの灰色のほの暗い室内が、外からの時間とは切り離された時間感覚をもたらす。〔資料1・3〕展示棟・収蔵庫内観参照

(15)西尾 実・岩淵悦太郎・水谷静夫 編『岩波国語辞典 第7版新版』
、岩波書店、2011年11月18日第7版新版第1刷発行、「風土」「文化」

(16)ここでいう「デザイン」とは建築を考える際の考え方。建築がその場所にある意味を「 建築において技術や合理性、教条的なイデオロギーのみでは構造物は存在し続けるエネルギーをその場から得ることはできない」と述べており、博物館の機能面だけでなくその地域に建てることの意味を説いている。(内藤 廣『構造デザイン講義』、王国社、2023年11月30日初版発行、p.30)
 
(17)資料を保管する収蔵庫は「100年は持たせて欲しい」という博物館側の要望により、実現させるために構造設計・空間設計などの技術のみならず、風土や気候といった場所の性質を読み解く必要があった。その結果、最先端の構造でありながら収蔵物の持つ時間とがシンクロする空間を造り出している。(内藤 廣『形態デザイン講義』、王国社、2013年10月10日初版発行、p.243-244)

(18) 2020年からの世界的な感染症の広がりや、光熱費の高騰などは博物館活動にも影響を及ぼした。国立の博物館が資料の管理による財政的ひっ迫の懸念を示している。奈良県立民俗博物館は施設の老朽化で空調が使えず夏場の展示室に氷の柱を置くなど対策に苦慮している(2024年7月から休館。2027年の再開を予定)
NHKウェブサイト 「国立科学博物館 クラファン初日に目標金額の1億円に達する」 (https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230807/k10014155491000.html 2024年7月6日閲覧)
NHKウェブサイト 「展示休止前の博物館にクーラー代わりの氷柱 大和郡山」 (https://www3.nhk.or.jp/lnews/nara/20240714/2050016490.html 2024年7月6日閲覧)


【参考文献】
中西紹一・早川克美編『時間のデザインー経験に埋め込まれた構造を読み解く(芸術教養シリーズ18 私たちのデザイン2)』 、京都造形芸術大学 東北芸術工科大学 出版局 藝術学舎、2014年
川添善行著、早川克美編『空間にこめられた意思をたどる(芸術教養シリーズ19 私たちのデザイン3)』、京都造形芸術大学 東北芸術工科大学 出版局 藝術学舎,2014年
今村信隆編『博物館の歴史・理論・実践1 博物館という問い』、京都造形芸術大学 東北芸術工科大学 出版局 藝術学舎、2017年
和辻哲郎『風土 人間学的考察』、岩波書店、1991年12月5日
エドワード・レルフ/高野武彦・阿部隆・石山美也子 訳『場所の現象学 没場所性を超えて』、筑摩書房、1991年12月10日初版第2刷発行
内藤 廣『環境デザイン講義』、王国社、2011年10月30日3刷発行
内藤 廣『形態デザイン講義』、王国社、2013年10月10日初版発行
内藤 廣『構造デザイン講義』、王国社、2023年11月30日初版発行
内藤 廣『内藤 廣の建築 1992-2004 素形から素景へ』、TOTO出版、2013年3月19日
内藤 廣『内藤 廣の建築 2005-2013 素形から素景へ2』、TOTO出版、2014年1月17日初版第1版発行
内藤 廣『建築のはじまりに向かって』、王国社、1999年6月20日初版発行
内藤 廣『内藤廣+石本泰博 空間との対話』、株式会社ADP | Art Design Publishing、2013年4月30日
内藤 廣『建土築木 1 構築物の風景』、鹿島出版会、2006年12月20日
内藤 廣『素形の建築』、株式会社INAX、1995年1月20日
内藤 廣『設計図面集』、オーム社、2021年3月20日
石元 泰博 『海の博物館』、内藤廣建築設計事務所、1993年1月
住友林業フォレストリー・フォーラム事務局 編 安田喜憲 中谷正人 内藤廣 宮崎良文 カウコ・ライティネン 著『フォレストリー・フォーラム 自然の恵みを語る 森と古代文明/気と暮らす。人と自然、ともに生きる住まい、,住友林業株式会社、平成10年6月24日第1版発行
日経アーキテクチュア 編、『NA建築家シリーズ03 内藤廣 』、日経BP社、2011年1月29日
樋口忠彦『景観の構造』、技報堂出版、1984年9月10日
東京大学都市デザイン研究室 編,西村幸生・中島直人・永瀬節治・中島 伸・野原 卓・窪田亜矢・阿部大輔、『図説 都市空間の構想力』、学芸出版社、2015年9月15日
網野善彦『日本の歴史をよみなおす(全)』、筑摩書房、2020年3月25日
宇河雅之・瀧川和也『伊勢志摩サミット開催記念 三重県総合博物館
 第11回企画展 伊勢志摩 常世の浪の重浪よする国へ、いざNOW!』、三重県総合博物館
田根 剛『弘前れんが倉庫美術館ー記憶を継承する建築ー』、株式会社パイ インターナショ
ナル、2022年7月11日
田根 剛・瀧口範子『アーキオロジーからアーキテクチャーへ』、TOTO出版,2018年10月24日
『津軽学12号』、津軽に学ぶ会、2020年4月11日
太宰 治『津軽』、電子書籍1999年5月21日公開 2005年10月26日修正(底本:『太宰治全集第六巻』筑摩書房、1990年4月27日初版第1刷発行)
深尾精一『旅する煉瓦』、鹿島出版会、2022年10月30日

【参考ウェブサイト】
鳥羽市立海の博物館ウェブサイト http://www.umihaku.com (2024月5月1日閲覧) 
TOTO ギャラリー・間 / TOTO GALLERY・MA 「 内藤廣 自著を語る:内藤廣の建築 1992-2004――素形から素景へ1」https://youtu.be/5WGPhVqmJW8?si=joUt36XLL4Geyt-9(2024月5月1日閲覧)
三重県生涯学習センター 「石原真伊さんインタビュー(いきいき生涯&ゆうゆう学習34号/2019年10月発行号掲載)」
◼︎メンテナンスについての記事◼︎
「所長:三重県総合文化センターが今年開館25周年なので、ほぼ同じ時期に建てられたのですね。海の博物館は古さを感じさせないというか、メンテナンスがしっかりしているのですね。
石原さん:実はこれまで予算も少なかったので、あまり手を加えたりはしていないのですが、建物がシンプルなのであまりメンナンスしなくても済んでいるという有難い建物ですね。」 https://www.center-mie.or.jp/manabi/interview/iki32 (2024月5月1日閲覧)
文化遺産オンライン「伊勢湾・志摩半島・熊野灘の漁撈用具」https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/199566 (2024月5月1日閲覧)
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「積み重なった歴史と伝統を継承した未来へ──弘前れんが倉庫美術館を巡って」https://bijutsutecho.com/magazine/series/s48/25764 (2024月5月3日閲覧)
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「note弘前れんが倉庫美術館公式」 https://hmoca-museum.note.jp/ (2024年5月3日閲覧)
「弘前れんが倉庫美術館 YouTube 田根剛インタビュー#1〜#6」弘前れんが倉庫美術館YouTubeチャンネルより https://www.youtube.com/@hirosaki_moca(2024月5月3日閲覧)
architecturephoto #田根剛 https://architecturephoto.net/tag/田根剛/ (2024月5月3日閲覧)
architecturephoto「 Atelier Tsuyoshi Tane Architects+NTTファシリティーズ+スターツCAMによる、青森の「弘前れんが倉庫美術館」 」 https://architecturephoto.net/120844/ (2024月5月3日閲覧)
Atelier Tsuyoshi Tane Architects https://at-ta.fr/
「ほぼ日刊イトイ新聞インタビュー「 建築の「主役」は誰なのか。」https://www.1101.com/n/s/tsuyoshi_tane (2024月5月3日閲覧)
WWDJAPAN「「音声座談会「蓉子の部屋」Vol.1建築家の田根剛(前編)「田根がこだわる“記憶”って何?」」https://www.wwdjapan.com/articles/1092161 (後編)https://www.wwdjapan.com/articles/1092172 (2024月5月3日閲覧)
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AOMORI GOKAN アートフェス2024 ウェブサイト https://aomori-artsfest.com/hirosaki-museum-of-contemporary-art/(2024月5月3日閲覧)

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