宮 信明(准教授:学科長 コース主任)2026年3月卒業時の講評
みなさま
卒業研究レポートの作成、そして提出、本当にお疲れさまでした。
大きな課題をクリアされて、いまはホッと一息つかれているところではないでしょうか。
夏目漱石『それから』の中に「人間の目的は、生まれた本人が、本人自身に作ったものでなければならない」という有名な言葉があります。ご存知の方もいらっしゃるでしょう。みなさんは、しっかりと自分で目的を作り、それを見事に達成されました。まずはそのことを大いに誇ってください(自慢しましょう!)。
今期の卒業研究は280件の提出がありました。ちなみに、昨年度の春期は277件でしたので、2024年度よりも3件増えたことになります。もちろん、これは過去最多の件数です。非常に多くの卒業生を送り出すことができて、我々教員にとっても、こんなにうれしいことはありません。
みなさんのご卒業を寿ぎ謹んでお慶びを申し上げます。
さて、今回、私が担当した卒業研究では、以下のような対象が取り上げられていました。
・笏谷石
・博多座
・お好み焼き
・石川雲蝶作品
・小倉旦過市場における糠炊き
・おこしもの
・天王寺阿倍野エリア
・帝国劇場
・文楽人形の首
・焼きまんじゅう
・文学創造都市
・柳家小ゑんの新作落語
・怪談
・大学路(テハンノ)
・『男はつらいよ』
・宇治田楽
・人形のまち岩槻
・マレーシアにおける日本食レストラン
・FOURTEEN PLUS 14+
・江戸っ子の食文化
・シネマ・チュプキ・タバタ
・衣生活
・大豆の会
・崎陽軒シウマイ
・OKINAWA CACAO
・世田谷のボロ市
・高田世界館
・FUKUOKA ASIA FILM FESTIVAL
・出町座
・鯛よし百番と飛田新地
・忠臣蔵
・堺の茶文化
・又吉直樹の本のデザインと文章の芸術性
・伊能歌舞伎
・崎陽軒のシウマイ弁当(上記の崎陽軒シウマイとは別レポート)
いかがですか。このラインナップ!
これを見るだけでも、どれほど多彩なテーマで卒業研究(=評価報告書)が作成されているのか、一目瞭然でしょう。これでも専門分野を勘案して、担当教員に振り分けられていますので、全体像はもっと多様性に富んだものになっています。
私が今年度、採点を担当したのは35件。いずれのレポートにおいても、興味深い事例が報告されていました。また、それを論じるための視点もじつに斬新で、読み応えのあるものばかりでした。
それぞれのレポートの点数と講評については、個別にお伝えしてありますので、ここでは、採点・講評を担当した卒業研究の中から、興味深く拝読したレポートをいくつか紹介してみたいと思います。
1つ目は、文楽人形の首(かしら)を取り上げたレポートです。首に彫り込まれた「性根」について、清濁あわせ持つ性根があるからこそ、舞台上で一体の人形から一人の役者へとなりえるのである、とその文化資産としての評価が、明快な論理によって報告されていました。資料や先行研究の乏しい分野であるにもかかわらず、丁寧な文献調査と関係先への聞き取り調査に基づきつつ、視覚で捉えることのできない性根について、具体的かつ多面的に考察されていて素晴らしかったですね。余談ですが、「あっ、映画『道行き』を観に行かなきゃ」と思いました(レポートに『道行き』は出てきません。念のため)。
2つ目は、柳家小ゑんの新作落語を取り上げたレポートです。まさか自分が採点・添削を担当するレポートで、柳家小ゑん師匠がテーマになるとは思ってもみなかったので、いささか面くらいました。小ゑん師匠の新作落語について、「オタク落語」「想像させる芸」「新作落語発展への活動」といった多様な視点から考察が加えられており、きめの細かい論述になっていました。なかでも鑑賞記録や口演一覧(2025年8月~2026年1月)は圧巻。小ゑん師匠の新作落語が無性に聴きたくなりました。小ゑん師匠にお目にかかる機会があれば、ぜひお伝えしたいと思います。
3つ目は、崎陽軒シウマイを取り上げたレポートです。崎陽軒シウマイの調査のみならず、食文化論や都市論などの知見も参照しつつ、崎陽軒シウマイのデザイン性と地域における文化的象徴性について、正確で鮮やかな論述が展開されていました。特に、節末できちんとそれまでの考察がまとめられ、改めてその評価について明示されていたのは、読み手の理解が一気に深まるような構造になっていて見事でした。ちなみに、私はシウマイ弁当も好きですが、炒飯弁当も好きです。
ここでは上記3つのレポートに言及しましたが、それ以外にも、今回の卒業研究では、素晴らしいレポートがたくさんありました。そこに共通するのは、やはり①分析や考察に必要な文献・資料がきちんと調査されていること、②対象を吟味するとともに、それが独自の問題編成によって展開されていること、③アカデミック・ライティングのルールに則って、説得力のある文章で論述されていること、の3点ではないでしょうか。その点を踏まえ、改めてご自身のレポートを読み返してみてください。
卒業研究は、みなさんがこれまで芸術教養学科で学んでこられたことの集大成です。だからこそ、個別講評では、厳しいことをあれこれと書き連ねてしまいました。とはいえ、それぞれのレポートが卒業に値するクオリティに達していたことは間違いありません。ぜひこれからも、芸術教養学科で学修したことをもとに、よりよい学びを続けていっていただければと思います。
それでは、改めまして、ご卒業、誠におめでとうございます!
卒業研究レポートの作成、そして提出、本当にお疲れさまでした。
大きな課題をクリアされて、いまはホッと一息つかれているところではないでしょうか。
夏目漱石『それから』の中に「人間の目的は、生まれた本人が、本人自身に作ったものでなければならない」という有名な言葉があります。ご存知の方もいらっしゃるでしょう。みなさんは、しっかりと自分で目的を作り、それを見事に達成されました。まずはそのことを大いに誇ってください(自慢しましょう!)。
今期の卒業研究は280件の提出がありました。ちなみに、昨年度の春期は277件でしたので、2024年度よりも3件増えたことになります。もちろん、これは過去最多の件数です。非常に多くの卒業生を送り出すことができて、我々教員にとっても、こんなにうれしいことはありません。
みなさんのご卒業を寿ぎ謹んでお慶びを申し上げます。
さて、今回、私が担当した卒業研究では、以下のような対象が取り上げられていました。
・笏谷石
・博多座
・お好み焼き
・石川雲蝶作品
・小倉旦過市場における糠炊き
・おこしもの
・天王寺阿倍野エリア
・帝国劇場
・文楽人形の首
・焼きまんじゅう
・文学創造都市
・柳家小ゑんの新作落語
・怪談
・大学路(テハンノ)
・『男はつらいよ』
・宇治田楽
・人形のまち岩槻
・マレーシアにおける日本食レストラン
・FOURTEEN PLUS 14+
・江戸っ子の食文化
・シネマ・チュプキ・タバタ
・衣生活
・大豆の会
・崎陽軒シウマイ
・OKINAWA CACAO
・世田谷のボロ市
・高田世界館
・FUKUOKA ASIA FILM FESTIVAL
・出町座
・鯛よし百番と飛田新地
・忠臣蔵
・堺の茶文化
・又吉直樹の本のデザインと文章の芸術性
・伊能歌舞伎
・崎陽軒のシウマイ弁当(上記の崎陽軒シウマイとは別レポート)
いかがですか。このラインナップ!
これを見るだけでも、どれほど多彩なテーマで卒業研究(=評価報告書)が作成されているのか、一目瞭然でしょう。これでも専門分野を勘案して、担当教員に振り分けられていますので、全体像はもっと多様性に富んだものになっています。
私が今年度、採点を担当したのは35件。いずれのレポートにおいても、興味深い事例が報告されていました。また、それを論じるための視点もじつに斬新で、読み応えのあるものばかりでした。
それぞれのレポートの点数と講評については、個別にお伝えしてありますので、ここでは、採点・講評を担当した卒業研究の中から、興味深く拝読したレポートをいくつか紹介してみたいと思います。
1つ目は、文楽人形の首(かしら)を取り上げたレポートです。首に彫り込まれた「性根」について、清濁あわせ持つ性根があるからこそ、舞台上で一体の人形から一人の役者へとなりえるのである、とその文化資産としての評価が、明快な論理によって報告されていました。資料や先行研究の乏しい分野であるにもかかわらず、丁寧な文献調査と関係先への聞き取り調査に基づきつつ、視覚で捉えることのできない性根について、具体的かつ多面的に考察されていて素晴らしかったですね。余談ですが、「あっ、映画『道行き』を観に行かなきゃ」と思いました(レポートに『道行き』は出てきません。念のため)。
2つ目は、柳家小ゑんの新作落語を取り上げたレポートです。まさか自分が採点・添削を担当するレポートで、柳家小ゑん師匠がテーマになるとは思ってもみなかったので、いささか面くらいました。小ゑん師匠の新作落語について、「オタク落語」「想像させる芸」「新作落語発展への活動」といった多様な視点から考察が加えられており、きめの細かい論述になっていました。なかでも鑑賞記録や口演一覧(2025年8月~2026年1月)は圧巻。小ゑん師匠の新作落語が無性に聴きたくなりました。小ゑん師匠にお目にかかる機会があれば、ぜひお伝えしたいと思います。
3つ目は、崎陽軒シウマイを取り上げたレポートです。崎陽軒シウマイの調査のみならず、食文化論や都市論などの知見も参照しつつ、崎陽軒シウマイのデザイン性と地域における文化的象徴性について、正確で鮮やかな論述が展開されていました。特に、節末できちんとそれまでの考察がまとめられ、改めてその評価について明示されていたのは、読み手の理解が一気に深まるような構造になっていて見事でした。ちなみに、私はシウマイ弁当も好きですが、炒飯弁当も好きです。
ここでは上記3つのレポートに言及しましたが、それ以外にも、今回の卒業研究では、素晴らしいレポートがたくさんありました。そこに共通するのは、やはり①分析や考察に必要な文献・資料がきちんと調査されていること、②対象を吟味するとともに、それが独自の問題編成によって展開されていること、③アカデミック・ライティングのルールに則って、説得力のある文章で論述されていること、の3点ではないでしょうか。その点を踏まえ、改めてご自身のレポートを読み返してみてください。
卒業研究は、みなさんがこれまで芸術教養学科で学んでこられたことの集大成です。だからこそ、個別講評では、厳しいことをあれこれと書き連ねてしまいました。とはいえ、それぞれのレポートが卒業に値するクオリティに達していたことは間違いありません。ぜひこれからも、芸術教養学科で学修したことをもとに、よりよい学びを続けていっていただければと思います。
それでは、改めまして、ご卒業、誠におめでとうございます!
