吉岡 久恵(非常勤講師)2025年9月卒業時の講評

卒業研究レポートの執筆おつかれさまでした。
ご卒業おめでとうございます。
通信教育学部で学ばれてる方は、学業に専念できる環境でない方も多いと思います。
みなさまの卒業研究レポートを拝読し、おひとりおひとりが真剣に向き合っていることが伝わってきました。
私が担当したのは、以下のテーマになります(順不同)。
・ 渋谷、下北沢の都市開発
・松山油脂の取り組み
・川崎市アートセンター
・芸術のまち藤野
・さをり織り
・私設図書館「木林文庫」
・川俣町の交流会「ペーニャ」
・伝統野菜「練馬大根」
・町田市民文学館「ことばらんど」
・台湾の交通文化
・飯能市 フィンランド型のまちづくり
・『デス・ストランディング』
・やさしい日本語でつくるアート活動
以上のなかで、特に印象に残っているものが2つありました。
一つ目は「さをり織り」についてです。障害者支援の現場ではなじみの深い「さをり織り」ですが、その歴史や特性を調査し、将来への展望を示していました。特にアフリカン・アメリカン・キルトとの比較から、共同体での芸術との違いを明確にした記述には説得力がありました。「さをり織り」が個人の差異を認め合い、個人のエンパワメントを目指す特性を持つからこそ、災害復興時の心理的なケアにも効果があるという論理展開は一貫性がありました。「さをり織り」に新しい価値を見出した意義深い研究だと評価できます。
二つ目は川俣町の交流会「ペーニャ」についてです。「ペーニャ」は福島原発事故によって避難を余儀なくされた川俣町で継続開催されているイベントです。大風呂敷を広げ、裸足で飲食を楽しむイベントは、被災地に心地よい解放感を生み出したといいます。このイベントのプロセスがよく練られたものであり、その結果として、行政主導のトップダウン型の震災復興では実現しえない交流の深まりがあることを明らかにしていました。
今回、印象に残った二つのレポートは、災害復興時のケアを含む点に共通点がありました。災害からのしなやかな回復を示す「災害レジリエンス」という言葉があります。さまざまな現場での「レジリエンス力」を見出し、学びあうことは、災害が多発する現代において、これまで以上に必要になっています。その意味でも貴重なレポートであるといえるでしょう。
みなさまのレポートで評価が分かれたのは、レポート全体の完成度と読者に伝わる文章表現という点でした。それぞれ、事例に真摯に向き合い、先行研究や他の事例を参考とした検討をされていましたが、説得的とはいえないレポートもみられました。
大量の資料に向き合い、考えを巡らせるうちに時間が過ぎてしまい、思考が絡まったまま提出期限を迎えてしまった方もおられたのではないでしょうか。そういった経験は、私自身にもあるのでよく分かります。共感しつつ、創造活動はここで終わらせて欲しくないこともお伝えしたいと思います。
ご自身の卒業研究の出来栄えに満足な方、ご不満な方、心中はさまざまかと思いますが、ぜひ、卒業研究レポートの作成に真摯に向き合った経験を大切にしてください。
そして、それぞれの地域で創造的に暮らし、ご自身の気づきを人に伝える力を磨いていってください。
ご卒業おめでとうございます。
通信教育学部で学ばれてる方は、学業に専念できる環境でない方も多いと思います。
みなさまの卒業研究レポートを拝読し、おひとりおひとりが真剣に向き合っていることが伝わってきました。
私が担当したのは、以下のテーマになります(順不同)。
・ 渋谷、下北沢の都市開発
・松山油脂の取り組み
・川崎市アートセンター
・芸術のまち藤野
・さをり織り
・私設図書館「木林文庫」
・川俣町の交流会「ペーニャ」
・伝統野菜「練馬大根」
・町田市民文学館「ことばらんど」
・台湾の交通文化
・飯能市 フィンランド型のまちづくり
・『デス・ストランディング』
・やさしい日本語でつくるアート活動
以上のなかで、特に印象に残っているものが2つありました。
一つ目は「さをり織り」についてです。障害者支援の現場ではなじみの深い「さをり織り」ですが、その歴史や特性を調査し、将来への展望を示していました。特にアフリカン・アメリカン・キルトとの比較から、共同体での芸術との違いを明確にした記述には説得力がありました。「さをり織り」が個人の差異を認め合い、個人のエンパワメントを目指す特性を持つからこそ、災害復興時の心理的なケアにも効果があるという論理展開は一貫性がありました。「さをり織り」に新しい価値を見出した意義深い研究だと評価できます。
二つ目は川俣町の交流会「ペーニャ」についてです。「ペーニャ」は福島原発事故によって避難を余儀なくされた川俣町で継続開催されているイベントです。大風呂敷を広げ、裸足で飲食を楽しむイベントは、被災地に心地よい解放感を生み出したといいます。このイベントのプロセスがよく練られたものであり、その結果として、行政主導のトップダウン型の震災復興では実現しえない交流の深まりがあることを明らかにしていました。
今回、印象に残った二つのレポートは、災害復興時のケアを含む点に共通点がありました。災害からのしなやかな回復を示す「災害レジリエンス」という言葉があります。さまざまな現場での「レジリエンス力」を見出し、学びあうことは、災害が多発する現代において、これまで以上に必要になっています。その意味でも貴重なレポートであるといえるでしょう。
みなさまのレポートで評価が分かれたのは、レポート全体の完成度と読者に伝わる文章表現という点でした。それぞれ、事例に真摯に向き合い、先行研究や他の事例を参考とした検討をされていましたが、説得的とはいえないレポートもみられました。
大量の資料に向き合い、考えを巡らせるうちに時間が過ぎてしまい、思考が絡まったまま提出期限を迎えてしまった方もおられたのではないでしょうか。そういった経験は、私自身にもあるのでよく分かります。共感しつつ、創造活動はここで終わらせて欲しくないこともお伝えしたいと思います。
ご自身の卒業研究の出来栄えに満足な方、ご不満な方、心中はさまざまかと思いますが、ぜひ、卒業研究レポートの作成に真摯に向き合った経験を大切にしてください。
そして、それぞれの地域で創造的に暮らし、ご自身の気づきを人に伝える力を磨いていってください。