松本 理沙(専任講師)2025年9月卒業時の講評

卒業研究レポートを提出されたみなさん、本当にお疲れ様でした。大学生活の集大成として、みなさんが真剣にレポート課題に取り組まれたことが伝わってきました。
今回私が担当した卒業研究は、以下のようなテーマを扱ったものでした(順不同)。
サント・マリー・マドレーヌ聖堂の柱頭彫刻
シヌログ・フェスティバル
アボリジナルアート
浅草仲見世通りのシャッターアート
バンクーバー・ミューラル・フェスティバル
特定非営利活動法人コーナス
note
ES CON FIELD HOKKAIDO HOKKAIDO BALLPARK F VILLAGE
徳川美術館
石川県立図書館
アートリトリート
ETHICS LIGHTS 2025 富山城プロジェクションマッピング
企画展「西洋絵画、どこから見るか?-ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館VS国立西洋美術館」
多種多様なテーマで初めて知る事例も多く、いずれも大変興味深く拝読しました。また、今回私が拝読した卒業研究レポートは、どれも大学での学びを活かした、優れたレポートとなっておりました。
今回私が拝読した卒業研究のほとんどは、卒業研究レポートで必ず扱わなければならない5点( 1.基本データと歴史的背景 2.事例のどんな点について積極的に評価しているのか 3.国内外の他の同様の事例と比較して何が特筆されるのか 4.今後の展望について 5.まとめ)をきちんと盛り込んだものになっていました。大学のレポートで最も重要なことは、課題に正確に応答することです。この点をしっかりと理解し、レポートに取り組んでおられた点は素晴らしいと思います。
また、今回私が拝読した卒業研究の多くは、様々な学術書や論文を参照してレポートを執筆しておりました。学術的な文章を読み、それをもとにレポートを作成することもまた、大学での学びの重要な点です。
学問に触れ、それを身につけながら卒業まで辿り着いたことを誇りに、ぜひその力をお仕事や日々の生活を通して発揮してください。
一方で、やや惜しまれる点もございました。例えば、今回提出された多くのレポートは、全体を貫く主張がやや弱く、構成の軸が不明瞭な印象を受けました。卒業研究のテーマを設定する際には、例えば「瀬戸内国際芸術祭」といった対象を決めるだけでなく、その対象のどの側面に着目し、何を明らかにするのかまでを明確にすることが望ましいです。この場合、「瀬戸内国際芸術祭は、住民が地域の歴史や文化を再発見することを促す」ことを明らかにするのだと決めて全体の構成を考えていくと、レポートがうまく展開していくようになります。
このように卒業研究レポートでは、テーマを明確にした上で、その主張に沿った比較事例を選定し、今後の展望を論じていく必要があります。今回提出されたレポートの中には、全体を通しての主張がはっきりと示されていなかったために、各章の内容がそれぞれ独立してしまっており、レポートを通して主張したいことが曖昧になってしまっているものも見受けられました。「このレポートを通して何を明らかにしたいのか」という問いに立ち返りながら、レポートを執筆していただく必要があったと思います。
最後に、今回提出された卒業研究レポートの中から、とりわけ印象に残ったものをここでご紹介します。
ご紹介するのは、アートリトリートという活動について書かれたレポートです。アートリトリートとは、「美術館でのアート鑑賞を入口とした、内観(自分の内面を見つめる)プログラム」です。レポートでは、対話型鑑賞の代表的手法であるVTS(Visual Thinking Strategies)との比較が行われていました。私自身、この活動について、レポートを通して初めて知ったのですが、この比較についての記述を通じて、この活動が何を目指したものなのか、そして従来的な対話型鑑賞とどのように異なるのか、という点を明確に理解することができました。この活動の特異点を伝える、大変素晴らしい比較についての記述になっていたと思います。このレポートは公開されておりますので、ぜひご覧ください。
以上が私からの好評となります。ご自身の成果にも成績にも満足された方、思った成績ではなく悔しい思いをされている方など、卒業研究の末に感じられることは様々だと思います。ですが、先ほど述べたように、みなさんが本学で多くのことを学んだことには変わりありません。美術館や劇場での作品鑑賞、目の前に広がる風景、日々耳にするニュース、友人とのちょっとした会話に対する捉え方が大学入学前と少しでも変わっているならば、それは皆さんがたくさんのことを学び、その成果を日々に活かしている証拠です。これまで学んだことを活かし、今後ますますご活躍されることを心から祈っております。
今回私が担当した卒業研究は、以下のようなテーマを扱ったものでした(順不同)。
サント・マリー・マドレーヌ聖堂の柱頭彫刻
シヌログ・フェスティバル
アボリジナルアート
浅草仲見世通りのシャッターアート
バンクーバー・ミューラル・フェスティバル
特定非営利活動法人コーナス
note
ES CON FIELD HOKKAIDO HOKKAIDO BALLPARK F VILLAGE
徳川美術館
石川県立図書館
アートリトリート
ETHICS LIGHTS 2025 富山城プロジェクションマッピング
企画展「西洋絵画、どこから見るか?-ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館VS国立西洋美術館」
多種多様なテーマで初めて知る事例も多く、いずれも大変興味深く拝読しました。また、今回私が拝読した卒業研究レポートは、どれも大学での学びを活かした、優れたレポートとなっておりました。
今回私が拝読した卒業研究のほとんどは、卒業研究レポートで必ず扱わなければならない5点( 1.基本データと歴史的背景 2.事例のどんな点について積極的に評価しているのか 3.国内外の他の同様の事例と比較して何が特筆されるのか 4.今後の展望について 5.まとめ)をきちんと盛り込んだものになっていました。大学のレポートで最も重要なことは、課題に正確に応答することです。この点をしっかりと理解し、レポートに取り組んでおられた点は素晴らしいと思います。
また、今回私が拝読した卒業研究の多くは、様々な学術書や論文を参照してレポートを執筆しておりました。学術的な文章を読み、それをもとにレポートを作成することもまた、大学での学びの重要な点です。
学問に触れ、それを身につけながら卒業まで辿り着いたことを誇りに、ぜひその力をお仕事や日々の生活を通して発揮してください。
一方で、やや惜しまれる点もございました。例えば、今回提出された多くのレポートは、全体を貫く主張がやや弱く、構成の軸が不明瞭な印象を受けました。卒業研究のテーマを設定する際には、例えば「瀬戸内国際芸術祭」といった対象を決めるだけでなく、その対象のどの側面に着目し、何を明らかにするのかまでを明確にすることが望ましいです。この場合、「瀬戸内国際芸術祭は、住民が地域の歴史や文化を再発見することを促す」ことを明らかにするのだと決めて全体の構成を考えていくと、レポートがうまく展開していくようになります。
このように卒業研究レポートでは、テーマを明確にした上で、その主張に沿った比較事例を選定し、今後の展望を論じていく必要があります。今回提出されたレポートの中には、全体を通しての主張がはっきりと示されていなかったために、各章の内容がそれぞれ独立してしまっており、レポートを通して主張したいことが曖昧になってしまっているものも見受けられました。「このレポートを通して何を明らかにしたいのか」という問いに立ち返りながら、レポートを執筆していただく必要があったと思います。
最後に、今回提出された卒業研究レポートの中から、とりわけ印象に残ったものをここでご紹介します。
ご紹介するのは、アートリトリートという活動について書かれたレポートです。アートリトリートとは、「美術館でのアート鑑賞を入口とした、内観(自分の内面を見つめる)プログラム」です。レポートでは、対話型鑑賞の代表的手法であるVTS(Visual Thinking Strategies)との比較が行われていました。私自身、この活動について、レポートを通して初めて知ったのですが、この比較についての記述を通じて、この活動が何を目指したものなのか、そして従来的な対話型鑑賞とどのように異なるのか、という点を明確に理解することができました。この活動の特異点を伝える、大変素晴らしい比較についての記述になっていたと思います。このレポートは公開されておりますので、ぜひご覧ください。
以上が私からの好評となります。ご自身の成果にも成績にも満足された方、思った成績ではなく悔しい思いをされている方など、卒業研究の末に感じられることは様々だと思います。ですが、先ほど述べたように、みなさんが本学で多くのことを学んだことには変わりありません。美術館や劇場での作品鑑賞、目の前に広がる風景、日々耳にするニュース、友人とのちょっとした会話に対する捉え方が大学入学前と少しでも変わっているならば、それは皆さんがたくさんのことを学び、その成果を日々に活かしている証拠です。これまで学んだことを活かし、今後ますますご活躍されることを心から祈っております。