上村 博(教授)2017年3月卒業時の講評
卒業研究のレポートはいつも大変多様性に富んでいるのですが、今年もニュージーランドの工芸品、八丁味噌、沖縄の住宅建築など、実にいろんなテーマのものがありました。まず、そうした研究対象を発見されたということだけでも、すでに素晴らしいと思います。その上に、自分なりの視点を設定して、ありきたりの評価ではなく、見過ごされている価値を掬い上げるようなものもありました。他方で、どうしても取り上げる対象にかかわる歴史的な経緯の記述が多くなり、他の事例との比較が十分でないものが多かったのは残念です。何かの特徴を語ろうとする際には、必ず他のものとの対比するしかありません。日常的に我々は何につけ漫然と特徴を語っていますが、学問的な文書においては、意識的に比較の基準を定めて、根拠とともに長短をはかるという作業が非常に大事です。何が優れている、というだけでなく、何がどの点において何と比較してどの程度優れているのかという点を考えてください。それがレポートの精確さの出発点になります。