上村 博(教授)2020年3月卒業時の講評

年月 2020年3月
今年度冬期の卒業研究を振り返って

このたび卒業研究レポートを提出されたみなさま、お疲れさまでした。
私が担当する卒業研究のテーマは例年文化史系のものが多いのですが、今年はいつにも増して、みなさんの取り上げられた題材のヴァラエティが豊かでした。演劇祭や映画祭、街並みや建造物、和菓子や農産品開発、地域博物館のありかたなど、各地の実に興味深い対象をみなさん良く調べてくださいました。
特に、文献資料にとどまらず、現場に足を運んで実地の調査をされたレポートには、街や施設の特性を通り一遍に記すだけでない、現実味のある観察と分析がなされています。現地で催しの運営や作品の維持管理にあたる人の隠れた努力も、重要な文化・芸術活動です。そこに目を配られたのは、素晴らしいことと思います。
他方で、いくつかのレポートでは、事例の記述、説明に字数を取られてしまい、なぜそれを取り上げたのか、あるいはどこにその事例の特質があるのかがわかりにくいものもあります。比較対照の例も類似しているものを挙げるだけでは比較の意味がありません。共通の尺度で比較対照できるものを取り上げるなら、それぞれどこがなぜ違うのかをしっかり記述し、事例の特異性を際立たせていただく必要があります。
しかし、いずれにせよ、みなさんがご自分の目で何かを発見しようとされている姿勢は大変良かったと思いました。