早川 克美(教授:学科長)2018年9月卒業時の講評
みなさん、ごきげんよう。卒業研究のレポートの作成、おつかれさまでした。
卒業研究は、みなさんの芸術教養学科で学んだこれまでの学習の成果です。それぞれの方の視点が実に様々で、読み応えのあるレポートばかりでした。
「隅田川震災復興橋梁5橋の色彩計画」について書かれたレポートでは、計画策定のプロセスに着目され、この取り組みがどうやって実現されたのかを探る丁寧な調査とまとめがなされていました。「発酵食大学」についてのレポートでは、地域の活動に着目し、地域の食文化や食育への発展性について調査され、伝統文化の継承についての重要性を言及されていました。子どもの居場所づくりについてのレポートや、波佐見焼のまちづくり、つげ櫛の特質性についての論考もありました。いずれも日常の生活の中で発見された文化資産であり、その発見のまなざしは、芸術教養学科で培われたものです。
レポートの評価が分かれたのはご自身の問題意識と対象への評価軸が明示されているかという点です。せっかく丁寧に調べられたのに、調べたことのまとめで終わってしまっている方も少なからずいらっしゃいました。評価が高かったレポートは、二次情報に頼らず、ご自身が直接現地で調査をされたり、適切な比較対照を試みたり、また評価手法および評価軸を明確に定義されていました。演習の授業でもお話しましたが、まず、調べた多くの情報から、「何を取捨するのか」という「問題定義=切り口」を示すことが肝心です。次に、その切り取られた情報をどのような「構造」で考察するのかを検討し、最後にその構造をどのような「語り口=手法・方法」で伝えるかという点に留意して書くことが重要です。また、ほとんどの方が、選ばれた対象への一定の距離をおいた客観的な考察には成功されていますが、批判的、反省的なまなざしで捉えていなかったことが気になりました。一見、うまくいっているように見える事象に問題はないのか?どのような課題をクリアして今日があるのか、そんな視点も加味されると、一層深い考察になったと思います。
いろいろと書いてしまいましたが、卒業生となられたみなさん、本当におつかれさまでした。みなさんが得られた学びはゆっくりと時間をかけてみなさんの中で熟成されて、様々な場面でみなさんを助けてくれることでしょう。一緒に学んだこの月日はみなさんの勝ち取られた財産です。これからのみなさんのご活躍を祈っております。
卒業研究は、みなさんの芸術教養学科で学んだこれまでの学習の成果です。それぞれの方の視点が実に様々で、読み応えのあるレポートばかりでした。
「隅田川震災復興橋梁5橋の色彩計画」について書かれたレポートでは、計画策定のプロセスに着目され、この取り組みがどうやって実現されたのかを探る丁寧な調査とまとめがなされていました。「発酵食大学」についてのレポートでは、地域の活動に着目し、地域の食文化や食育への発展性について調査され、伝統文化の継承についての重要性を言及されていました。子どもの居場所づくりについてのレポートや、波佐見焼のまちづくり、つげ櫛の特質性についての論考もありました。いずれも日常の生活の中で発見された文化資産であり、その発見のまなざしは、芸術教養学科で培われたものです。
レポートの評価が分かれたのはご自身の問題意識と対象への評価軸が明示されているかという点です。せっかく丁寧に調べられたのに、調べたことのまとめで終わってしまっている方も少なからずいらっしゃいました。評価が高かったレポートは、二次情報に頼らず、ご自身が直接現地で調査をされたり、適切な比較対照を試みたり、また評価手法および評価軸を明確に定義されていました。演習の授業でもお話しましたが、まず、調べた多くの情報から、「何を取捨するのか」という「問題定義=切り口」を示すことが肝心です。次に、その切り取られた情報をどのような「構造」で考察するのかを検討し、最後にその構造をどのような「語り口=手法・方法」で伝えるかという点に留意して書くことが重要です。また、ほとんどの方が、選ばれた対象への一定の距離をおいた客観的な考察には成功されていますが、批判的、反省的なまなざしで捉えていなかったことが気になりました。一見、うまくいっているように見える事象に問題はないのか?どのような課題をクリアして今日があるのか、そんな視点も加味されると、一層深い考察になったと思います。
いろいろと書いてしまいましたが、卒業生となられたみなさん、本当におつかれさまでした。みなさんが得られた学びはゆっくりと時間をかけてみなさんの中で熟成されて、様々な場面でみなさんを助けてくれることでしょう。一緒に学んだこの月日はみなさんの勝ち取られた財産です。これからのみなさんのご活躍を祈っております。